越前へ突然やってきて、そしてその去り際に、突如、まひろへ結婚を申し込む藤原宣孝。
戯れではない。と、いつになく真面目な表情です。
宣孝は見抜いています。
宋人と海を渡ったところで、忘れられぬ人からは逃れられない。そう顔に出ている。
まひろはいい加減なことを言うなと言葉では否定しますが、宣孝は構わず続けます。
都の人は顔に本音を出さない。けれどもまひろは出る――。
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顔は心が映る鏡
顔に出てしまうということは愚かということか?
まひろがムッとすると、宣孝はそれが心を和ませるようです。
すかさずまひろが、自分は誰かを安心させたり和ませることはないとキッパリと言い切りますが、宣孝もすかさず返す。
「自分は、自分が思っている自分だけではないぞ」
そして、ありのままのお前ごと引き受ける、それができるのは俺だけだし、楽になれると悟りきったように口説きます。
忘れえぬ人がいてもよろしいのか?
宣孝の巧みな誘導に、まひろも導かれるようにして、そう言ってしまう。
しかし、そうしたそれもまひろの一部だと断言する宣孝。まったく揺らぎませんね。
丸ごと引き受けるとはそういうことだと言い切り、京都で待っていると告げるのです。
そして、道中楽しみにしていると言いながら、越前から去ってゆきました。
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周明はまひろに心を打ち明ける
まひろが呆然として考え込んでいると、周明がやってきます。
どうしたのかと問いかけるまひろに対し、周明は寂しそうに答えます。
「俺は宋人でもなければ、日本人でもない……」
居場所がないのかとまひろが心配そうに尋ねると、宋人は他国の者を信用しようとしないと周明が力なく続けます。
「わかってくれるのはまひろだけだ……」
そう寂しそうに言いながら、急に含みのあるような話へと飛んでゆく。
「朝廷が交易を許せば皆の心が穏やかになる」
朝廷は許さない、どうして交易を許さないのか、と悩ましい表情のまひろ。彼女は猜疑心旺盛で、よりにもよってそれを朝廷に向けています。
本作でこの手の猜疑心は当たっているもの。まひろは女諸葛です。
まひろがもっと宋のことを知りたいというと、周明は、望みを果たして帰る時が来たら、一緒に宋の国へ行こうと語りかけます。
「そのためにはもっと宋の言葉を学ばねばならない」
優しく諭す周明には一体どんな狙いがあるのでしょうか。
まひろは宋語の勉強を続けます。それでも、ついつい考えてしまうのは、忘れえぬ人である道長に「自分がどう見えていたかどうか?」ということでした。
伊周・隆家兄弟復活の道
道長は月を見ていました。
そこへ源倫子がやってきて「女院様(詮子)が呼んでいる」と告げています。
詮子は寝ていました。
病気のようですが……聞けば、伊周が眼の前に立ち、恐ろしい形相で睨んでいるとのことです。
こうしているときの詮子は、本当に父の兼家にそっくりですね。
藤原兼家の権力に妄執した生涯62年を史実から振り返る『光る君へ』段田安則
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道長は晴明に邪気祓いをさせると言い、安心させようとしますが、やはり詮子は伊周に殺されると息を乱している。
かくして安倍晴明が祭文を恭しく読み、儀式を終えました。
道長は帝の前に出ていきます。
蔵人頭の藤原行成もおります。
母である女院の病を治すために、大赦をすべきであると決まりましたが、いつもの免赦ではないため、伊周と隆家を都へ呼び戻すかどうかが焦点です。
道長は陣定(じんのさだめ)を行い、論議を行います。
公卿の意見は分かれました。
罪を赦すところまではよいにせよ、召喚すべきなのかどうか。論拠もバラバラで、戻すかどうかも一致しない。
各人の個性も出ており、膨大な量の日記がある藤原実資は「前例がない」と言い出します。実資は前例に照らし合わせるパターンばかりとはいえ、論拠があるから立派ですね。
道長が帝に伝えると、帝は伊周と隆家を許し速やかに召喚すると決めました。
「朕が愚かであった……冷静さを欠き、伊周に隆家、中宮を追い詰めた。今は悔いておる」
と、それだけでなく道長に「止めて欲しかった」と不満を露わにします。
後に聞いたところによれば呪詛は噂で、矢も御車を狙ったものだったと知り、そのことを道長は知っていたのかと突き詰められます。
焦りつつ、何者かに射かけられたと返すしかない道長。
帝は大赦を速やかに行うように告げました。
政治的な判断でなく、帝の母の体調不良で動く政治とはあまりにいい加減に思えます。
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