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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第24回「忘れえぬ人」】
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まひろは周明にだまされない
まひろは宋語で、子ども時代は嘘つきで物語ばかり語っていたと言います。そして、今でもとんでもない大人かもしれないと付け加える。
ここでまひろが使った「大人」という言葉を聞いて周明が笑い出します。
発音が「打人」になっていました。「人を殴る」という意味のようで面白がっているのです。
「早くまひろと宋に行きたい」
そう抱きしめて、このままではいつまで経っても宋に行けない、左大臣に文を描いて欲しいと訴える周明。
二人で宋に行くためだと言い、唇を重ねようとすると、まひろがその口を覆い、止めます。
「あなたは嘘をついている。私を好いてなぞいない」
「好いている」
周明が強引に再び抱きしめると、あなたは違うことを考えている、私を利用するためだと見抜きました。
「そうでしょう?」
そう言われると周明はおもむろに立ち上がり、壺を叩き割って破片を手にすると、まひろにノドに突きつけました。
そして左大臣に文を書けと脅します。左大臣が許せば公の交易が叶う――。
「書きませぬ」
「書かねば切る」
どれだけ脅しても書かないと言い張るまひろ。
自分の文ごときで左大臣の考えを変えられない、とも説明しますが、実際、まひろの文は道長を動かしたことがあります。父・藤原為時が越前守に任じられたのも、そのおかげです。
けれども朱仁聡が殺人事件の容疑者になった際は、全くあてになっていませんでした。
まひろ自身が、政治家としての道長にはもうあまり期待していないのかもしれません。
「書かねば、お前を殺して俺も死ぬ」
「死という言葉をみだりに使わないで!」
周明の脅しに対し、怒りで対応するまひろ。
目の前で母が虫けらのように殺されるのを見たと語り、周明だって海に捨てられ命の瀬戸際を生き延びたでしょ、それなのに気安く死ぬなど言わないで欲しいと毅然と言い放ちます。
嘘を見抜かれ、もはやこれまでと悟ったのか。
周明は、宋のことをまひろが夢見ているような国ではないと明かします。
宋は日本を見下している。日本人など歯牙にもかけておらぬ。
そして民に等しく機会を与える国など、この世のどこにもないのだと言い放つのです。
「つまらぬ夢など持つな」
そう言い捨てるしかない周明は、まるで自分もその夢の一部だったと告げるかのようです。
服を右前にして、中華の文化風俗を学べば秩序に入ることができる
周明の言葉はどこまで本気なのか。
気をつけておきたいのは、こういう場合の国の認定は、血統ではなく文化が重視されるということです。
確かに中国には中華思想があります。
ただし、これはどんなルーツであろうと、中華の風習に従えば見下されなくなります。
中国の歴代王朝を見ていくと、むしろ漢族が始祖でない方が目立ちます。平安貴族が愛着している唐にしたって、漢族が始祖ではなく北方騎馬民族の文化が濃いのです。
名前を中国風にして、衣服を右前にするなど適応させれば中華の仲間入り。
それをしなかったのが元や清となるわけです。
そもそも昔は血統を調べるにせよ、限界があります。ましてやアジア人同士では見た目もそこまで変わりません。
江戸時代までの日本人は、中国人と自分たちの区別をそこまで明確にしておりません。
来年の『べらぼう』でも重要な要素になりそうですが、中国の英雄だろうと勝手に自分たちのモノ扱いをしがちでした。
たとえばコロナ禍ではアマビエがブームになりましたけど、江戸後期の江戸っ子なら首を捻ってこう言いそうなところです。
「こんなもんよりヨォ、鍾馗様の方がビジュアル的にイケてると思うぜェ」
鍾馗というのは伝説上は中国唐代の人物なのですが、病魔を追い払うとされていて、浮世絵師がビジュアル系病魔避けとして作品に描いております。

歌川国芳の『鍾馗図』/wikipediaより引用
アマビエと鍾馗像を比較すれば、どちらがよりイケてる病魔対策だったか、ご理解いただけるでしょう。
中国側もよほど悪質でなければ「またか、お前ら、ええんやで」と見逃されます。なにせ、コーエーテクモゲームスさんは大人気ですからね。
『光る君へ』については、既に国境を超えて大歓迎された人物が実在しています。
朱仁聡役の浩歌さんです。
彼こそ中国でブレイクした現代の代表です。中国語で話し、中国の作品に出て、中国のSNSに投稿して、すっかり歓迎されている。
そしてこの国による区別は、明治以降の歴史と比較すると興味深いことがみえてきます。
昨今話題の夫婦同姓につきまして。
これを日本の伝統だとして北条政子の名前が挙げられます。昔は夫婦別姓こそむしろ伝統だったのではないか?と、その一例というわけです。
日本が夫婦同姓にしたのは明治以降です。
明治政府は、不平等条約を改正し、西洋と肩を並べるためには、制度を西洋式にすればいいと思いました。
その中に夫婦同姓も含まれていた。
しかし、条約改正を成し遂げようが、日清日露戦争に勝利しようが、結局のところ日本は西洋列強の中に入れません。
日本の皇室と通婚関係を結ぶヨーロッパの王族なんているわけもない。
アメリカは日本人移民を制限する。
戦争になればドイツ系やイタリア系はそう出来なくても、日系人は強制収容所に送り込める。
日系人兵士はためらうことなく激戦地に投入できる。
原爆だって、日本になら落とせる。
人種が違うとどうしようもないのではないか。結局、受け入れられないじゃないか。
そう気づくまで時間がかかったものでした。
周りにいた人の心も見えていなかった
まひろの前から去ってしまった周明。
彼女は宋語の学習帳を燃やそうとして、手を止めます。
するとそこへ乙丸がやってきました。夕餉を召し上がっていないと知り、具合が悪いのか心配しているのです。
そんな乙丸に、なぜ妻を持たないのか?と尋ねるまひろ。
戸惑う乙丸にただ聞いてみたかったとまひろがいうと、結婚しようにもこの身一つしかないと戸惑う乙丸です。
「あのとき、私は何もできませんでしたので」
彼は後悔の念を背負っていました。ちやはが殺されたとき、乙丸は確かに無力でした。そこで、せめて姫様は守ると近い、乙丸はずっと仕えていたのです。
乙丸がそんなことを考えていたのか……と、納得するまひろ。
余計なことを申したと返す乙丸。
まひろはこんなにずっと近くにいる相手なのにわからないことばかり、私もまだ何もわかっていないのかもしれないと結論づけます。
「周明と何かあったのですか?」
乙丸がそう聞くと、まひろは、周明も精一杯なのだという考えに至りました。
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