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『光る君へ』感想あらすじレビュー第24回「忘れえぬ人」

2024/06/17

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第24回「忘れえぬ人」
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入り込めなかった彼女の心

ここで松原客館から宋の医師がきます。

周明ではなく、その師匠でした。

まひろが朱仁聡に「周明はどうしたのか?」と尋ねると、生まれ故郷を見るために出ていったそうです。

いやちょっと待って、宋人の行き来をもっとちゃんと管理しないとリスクがありますってば。

朱仁聡は、交易が成立しなければ博多に向かわないと言い出します。

二度と船はつかないと脅しながら、日本との交易拡大を狙う。為時が無理だと言うと、今度は、宋の品が入ってこなくなると告げます。

「それは脅しか?」

為時はそう返しますが、さりとて彼の一存では交易を認めることなどできず、両者の距離は縮まらない。

為時との交渉を終えた朱仁聡は、松原客館で周明に「出て行ったと言っておいた」と告げます。

そして本当にそれでよかったのかと念押ししています。

「入り込めませんでした、あの女の心に」

「周明、お前の心の中からは消え去るといいな」

朱仁聡はそう語りかけると、空を飛ぶ鴎の姿が、一羽だけ一瞬流れます。周明は夫婦になれなかった鴎なのでしょうか。

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宋との交易を拒むのは朝廷なのだろうか?

為時は朝廷に文を送ったのでしょう。

内裏では、帝が「宋の脅しには屈しない! 越前の荷は朝廷で買えば諦めて帰るだろう」と告げています。

しかし、そこまで買うゆとりがないと返す道長。

帝は不満げな口調で、太宰府での旨みは藤原が独占しているならば、朝廷が越前と商いをすればよいではないかと言います。

越前と都は近く危険だ、都に攻め上られたらひとたまりもないと道長は返し、宋と商いをするとなれば属国として扱われるからこれを許してはならぬとも付け加えます。

帝はそう言われ、「左大臣の好きなようにしろ」と投げ出すかのように任せてしまいます。

政務にやる気をなくした帝と、外交無能の道長による、しょうもないコンボ状態です。

道長の言っていることは無茶苦茶です。

まず、宋は日本に外征する気はありません。

道長の「属国として扱われる」ことを避けろというのは、朝貢貿易による華夷秩序に入ることを拒んでいるように思えます。

そのマイナス面といえばただのプライドの話でしかない。

それに朝貢貿易は回数の制限があるので、むしろ民間で商いをしたい朱仁聡らにとってはメリットがありません。

朱仁聡の背後に宋の朝廷がいるのかどうか、冷静な確認が必要な場面なのです。

朝貢貿易は往復のうち、復路が儲かるお得な制度でした。朱仁聡の積荷を買い取れないほど逼迫した朝廷ならば、むしろ積極的にやるべき。

では、なぜこうも強硬なのか?

帝の言葉にヒントはあります。

太宰府における交易の旨みを藤原が独占している――これです。道長はこの権益を守ろうとして、帝に出鱈目を吹き込んでいるようにも思えます。

聡明だった帝は頭の中にもう定子のことしかない。

宋の白粉と扇があれば中宮に求めたい、それだけ差し出させよと告げ、道長に任せてしまいます。

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それにしても道長はどうしてこんなにマヌケで、わけわからんことを言うのか。

太宰府の誰かに嘘を吹き込まれていて、相手の思惑に乗っかってしまっているのか。

それとも帝を騙そうとしてあえてしているのか。

というと、どうにも前者のような気がします。

この道長は、本人は善意の人なのに、周囲に騙され吹き込まれて悪の道へ転がり落ちてゆきかねない危うさがある。

しかし本人は、悪に染まらずピュアなままという、なかなかおもしろい人物像に思えます。

ある意味、周明の読みは正しかった。

こんなにボンクラな道長なら、まひろからアプローチすればうまく落とせたかもしれません。

繰り返しますと、私は道長を有能とは思いませんが、嫌いでもありません。

この外交については道長はマヌケだと繰り返す意義があります。

道長の語る日宋関係は間違っているので、頭から焼き消してきちんと学び直して欲しいのです。

ついでに言えば、こんなわけわからんゆるい宋認識だったから、藤原摂関家は宋との交易に目をつけた平清盛にしてやられてしまうのです。

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結果、為時にはまたもや「様子を見て時間稼ぎをしろ」との指令が届きます。

まひろは、宣孝からの都に戻れという言葉を思い出しているのでした。

 

MVP:藤原宣孝

NHKの看板といえる朝ドラ『虎に翼』と、大河ドラマ『光る君へ』には共通点がいくつもあります。

そのひとつが、ヒロインが愛ではなく、欲得を踏まえて結婚するということです。

『虎に翼』の寅子は、弁護士になっても未婚というだけで一人前に見られない。それを打開するために、特に恋愛感情はない優三という男性と結婚します。

優三は寅子の家に下宿しており、昔から知っていて、ときめきも何も今更なかったのです。

それが結婚後、恋に落ちるという流れでした。

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そしてこの宣孝も「まひろは打算で結婚する」とキッパリ言い切りました。

優三も、宣孝も、相手に惚れています。

その相手の魅力を自分との結婚で削りたくないから、ありのまま受け入れるという点でも一致しています。

優三はその姿が純粋で透き通っていました。一方で宣孝はどこか濁っているというか、色気がムンムンと漂っています。

為時が気に止むほどまだまだ色香のある宣孝。

忘れえぬ人ごとまひろを受け入れるという言葉にせよ、過去の恋すら相手を彩るスパイス扱いをしている余裕を感じます。

宣孝とまひろの結婚は、無茶ぶり条件が揃っています。

史実においてすでに年齢差が親子ほどもあり、おまけに紫式部の和歌は塩対応に思える。これはある意味仕方ないし、情熱的な歌がいいなら和泉式部あたりにしておけということでしょうが。

おまけにドラマの設定で藤原道長が「忘れえぬ人」になったうえに、まひろは聡明すぎて、性格がどこか不気味です。

そういう結婚をこんなふうに盛り上げるなんて、すごいドラマだと思います。

佐々木蔵之介さんだからできた。その要素も大きいのでしょう。

 

連環の計――繋がって、燃える

Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)のMV『コロンブス』が炎上しました。

さんざん分析されているので今さら付け加えることはありませんが、今後のために考えねばならないのは、「どうすれば防げたか?」ということでしょう。

答えは簡単。

・グローバルヒストリー目線で学んでいること。

曲やMVを制作する段階で少しでもコロンブスについて調べておけば、その評価が割れていることには気づけたのではないでしょうか。

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この炎上を受けて「NG英雄リストを作って欲しい」という意見も見かけましたが、グローバルヒストリー目線を身につけたうえで、フィルタリングする能力は自ら磨いたほうが確実でしょう。

制作者たちが、歴史総合を学んでいれば防げたかもしれません。

そもそも歴史総合は、こういうやらかしをもはや放置できないから導入されたのでは?とも思えてきます。

Eテレの高校講座を見ておくだけでも、こうした事故は防ぎやすくなるはずで、逆に学ばなければ恥ずかしいやらかしが今後も続きます。

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一例として、榎本武揚を振り返ってみたいと思います。

土方歳三を扱う作品で、彼を箱館戦争を戦う戦友として出すのであれば問題ありません。

しかし福沢諭吉目線なのに榎本武揚を褒めたら、福沢本人が「ふざけるな」と怒りかねない。

明治以降の政治家としても難しい。北海道開拓において、アイヌに大打撃を与えた黒田清隆の右腕です。

かといって「榎本武揚」をNGリストに入れればよいわけでもない。

歴史はそう単純でもないでしょう。

NGリストを言い出す時点で、歴史を学ぶ意義から目を背けているように感じてしまいます。

安全と言いますか、既に人物評価を仕上げてきているのが中国史です。

本国でさんざん語られている評価を踏襲すればさほど燃えません。

むしろ『キングダム』は、中国史視点で見ると不思議なのだそうで。

始皇帝は昔から賛否両論ですので、中国で始皇帝を扱う作品は、彼が主役だろうと苛政要素も入ります。『キングダム』はその点がむしろ甘めであるとされます。

始皇帝はまだしも、諸葛亮ですら賛美一辺倒にはなりません。

彼の天下三分の計は結果的に乱世を長引かせた一面があります。

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重ねて申し上げますが「NGリストを作ってよ!」という発想は、あまりに子どもじみていませんか。

歴史を舞台にコンテンツを作る以上、一定の下調べは必要であるはずなのに、あたかも歴史をテスト対策としか見られなかったような勘違いは、来年の大河を前に既に炸裂しています。

『鬼滅の刃』「遊郭編」や「大吉原展」が燃えたことから、『べらぼう』までもはや炎上確定だと煽るメディアがあるのです。

遊郭については、搾取面をどう描くかどうかの是非であり、前者は女性キャラクターの露出度が高いとはいえそこまで燃えず、後者は吉原を軽薄に扱う単純さが問題視されました。

『べらぼう』ではインティマシーコーディネーターがついていますし、男女逆転版『大奥』も素晴らしかった森下佳子さんが脚本を担当しています。対策はちゃんとしているでしょう。

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フィルタリングをして作品を再検討していくと、大河ドラマからも煙が見えます。

『コロンブス』の件もBBCが早々と報じました。

『電波少年的懸賞生活』の異常性も報じています。この番組は2023年の段階で映画となっていたものを、後追いでBBCが報じ始めたのです。

思えばジャニーズ問題もBBCが口火を切りました。日本の芸能界には汚泥があるとBBCは見抜いたのでしょう。悪事の鉱脈であると。

『コロンブス』で日本人の歴史観にも黄信号が点りました。

私の予想では、早晩、NHK大河ドラマや朝の連続テレビ小説にも到達する可能性があります。

火のないところに煙は立たぬ――燃えそうな作品を挙げておきまますと……。

2015年『花燃ゆ』
2015年『あさが来た』
2017年『わろてんか』
2018年『西郷どん』
2018年『まんぷく』
2019年『いだてん』
2021年『青天を衝け』
2023年『どうする家康』

私の嫌いな作品ばかりですね。そういう焦げ臭さがあることも、私が嫌った一因のひとつです。

このうち『コロンブス』からの流れで一番燃えやすいのが、『青天を衝け』でしょうか。

渋沢栄一を一年間顕彰することと比較すれば、3分程度のMVなぞボヤに過ぎない――そんな意見も見かけました。

まさしくその通りでしょう。

『青天を衝け』はレオポルド2世の礼賛までやらかした、どこまでも恥ずかしいドラマでした。

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このドラマのファンは、慶喜役の演技について褒めるばかりで、歴史的な問題点についてあげても「気にしすぎw」「私は楽しめたしw」「彼の演技が」とばかりしか言わず、話が噛み合いません。

極端に議論が噛み合わぬ論争とは、そもそも成立しません。自分が好きだと言ったから。ファンダムの空気を荒らしたくないから。本音はそんなところではないでしょうか。

『コロンブス』が燃えたあと、渋沢栄一が新札の顔になるというのは、日本人にとってもはや国辱的といえる。

日本人は植民地主義の悪どさをまるで理解していない連中だと、国際的にアピールする危険性があります。

それを日本のBBCたるNHKが、大河ドラマで褒めてたって? 大丈夫かよ……そう呆れられる日が到達しても、今さら驚くことでもありません。

渋沢栄一を顕彰することが、下の世代にとってどれだけ大迷惑なのか。なぜ、誰もその危険性を考慮しなかったのでしょうか。

思えばあの大河は本当にマヌケでした。

本当は怖い渋沢栄一 テロに傾倒し 友を見捨て 労働者に厳しく 論語解釈も怪しい

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最終回で渋沢栄一は、これから明るい未来になるとヘラヘラ語っていましたが、昭和初期に何を言っているのか、という話です。

『虎に翼』の寅子や優三たちが地獄へ向かってゆく。

そんな破滅への道筋を投げっぱなしにして、自分は悠々と冥土へ旅立ったのが渋沢栄一です。

彼を顕彰していることそのものの危険性にいい加減気づいて、今後、起きることに警戒しておいた方がよいかもしれません。

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【参考】
光る君へ/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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