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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第40回「君を置きて」】
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左大臣の仰せのままに
陣定が開かれ、道長は「譲位の備えを始める」と宣言しました。
まだ若いのに何事か!と正面切って反対するのは実資。
顕光も困惑しながら「帝が譲位を望んでいるのか?」と道長に確認しています。
そうではない、25年という在位期間は長い。
道長が曖昧に解説をすると、先ほどと同様に「考えられぬ!」と実資が激怒しています。ただ単に東宮との距離を起きたい道綱は嬉しそうだ。
道長は、実資の意見を受け止めながら、他の公卿にも意見を求めます。すると……。
「左大臣の仰せのまま」
源俊賢、藤原斉信、藤原公任がさっそく靡いていきます。行成は痛みを堪えているような、辛い顔をしている。
一体どうなることか。
そのころ中関白家では、藤原隆家のもとへ敦康親王がやってきて、父である帝の具合を聞いています。
これから先どうなるのか……。
不安そうな敦康親王に、第一皇子にして皇后定子様のお忘れがたみこそ次の東宮だと断言するききょう。
「先走るでない」
苦い口調で彼女を嗜める隆家は、己の無力を悟っているようにも思えます。
一方、藤壺では――敦康親王と東宮の座を競う敦成親王が、宰相の君と毱で遊んでいました。
まひろは道長とのやりとりを思い出しています。
中宮と“東宮となる敦成親王”をまひろに託していた道長。
その真意が漏れたようなあの言葉はいったい……まひろは、そこへやってきた宮の宣旨に次の東宮は敦康親王なのか?とこっそり聞きます。
「控えよ」
威厳をこめてそう嗜められ、謝るしかないまひろ。
我々が考えるのは畏れ多いとしながら「第一の皇子であろう」と声を潜めつつ答え、「そんなことよりも帝の平癒を祈れ」と付け加えるのでした。
宮の宣旨が、いささか迷いながらも敦康親王だと思っているのですから、他の女房や貴族たちも多かれ少なかれ同じように感じているのでしょう。
いったい敦成親王を次の東宮にすることは可能なのか?
四納言の俊賢・公任・斉信・行成が道長の前に並んで座っています。
敦成の東宮計画のために集められたのだと三人は察知。行成だけが辛そうに、第一の皇子であるべきだと訴えます。
しかし、敦康の後見は藤原隆家であり、
「罪を得た家の子だ」
と反論されてしまいます。
それを指摘するのが源俊賢というのが何ともムズムズしますね。彼の父・源高明は藤原家によって罪を着せられ失脚させられたのです。
行成はそれでも「強引なことをして恨みを買うのはよろしくない」と弱々しく反論します。
斉信は敦成を推すと宣言し、公任は「実資と隆家の説得をする」と言い出す。俊賢も賛同しました。
その上で「行成は何もせずともよい」とまで言われるのです。
会議を終え、4人で廊下に出ると公任がおもむろに爆弾を投下してきました。
「崩御の卦は出ているのだろう」
道長は憚って言わなかったのだ――行成が自分を納得させるようにそう言いますが、なんだか道長の中に残る良心を無理に拾い集めたいように見えてしまいます。
「道長は憚ったのに口にしてしまった……」
公任が慌てていると、崩御ならば一気に話が進むからそれもやむなしだと俊賢は淡々としている。
思い悩む帝の顔は、確かに死相があらわれているかのように見えています。
妍子は銅鏡しか求めていない
帝が道長を呼び出し、譲位するから東宮(居貞親王)に話したいと告げます。
さっそく道長が伝えにゆくと「帝の具合はそれほど悪いのか」と表面上は心配しながら、喜びを隠せない東宮。
道長も具合の悪いことを認めると、今度は「いつ会うのか」と急かすように聞き返します。
陰陽寮に調べさせてからと説明すると、「明日でもよい」と相変わらずグイグイ来る東宮。それは無理でも近々だと道長は答えます。
東宮は、道長に対し、娘の妍子の顔でも見ていけと告げるのでした。
そのころ妍子は銅鏡を手にしていました。
どうやら宋あたり高級品を見ているようで、他にも次から次へと買い漁ってゆく。
「お目が高い」とおだてられ、全て買い上げるとウキウキしている様子の妍子。
一瞬のことではありますが、色々と奥深い場面ですね。
まず、手にしているのが銅鏡です。
姉である彰子が「三鏡の教え」を理解していることと比較してしまいます。彰子は知性を磨き、政治を理解する鏡になりました。
しかし妍子は、銅鏡に映る見た目しか気にしていない。
そして、宋の商人は朱仁聡の後も続々やってきて、こうした高級品を売りつけていることがわかる。
この状況を平安貴族はどうしたのか?
というと、結局、何も対策しないまま有耶無耶になってゆき、この先、平清盛が日宋貿易で力を蓄えてしまうのですね。
誰を東宮にするか、ネチネチ考えているより、他にもっとやりようはある。
そんな娘のもとへ道長がやってきて、東宮の蓄えとて潤沢ではないと嗜めますが、妍子は口を尖らせ反論してきます。
「母上が土御門で引き受けるから好きにして良いと言った」
花びらを重ねたのような口元がなんとも愛くるしい妍子ですが。
道長はそれでも辛抱強く、彼女を諌めます。
「東宮が帝になるのだから、帝の后としてふさわしいあり方がある」
「父上のために我慢して年寄りの后になったのだから、これ以上我慢できない」
しかも、どうせなら敦明様がよかったとまで言い出すのですから、道長も愕然としている。
『源氏物語』にも「歳をとった夫より若い男がいい」と身も蓋もないことを考える女君はおりますし、密通も出てきます。
そしてこの場面には、実資なら「ありえん!」と怒髪衝天しそうな要素も潜んでいます。
宋の商人は薬を持ち込んでいないのでしょうか?
高値で売れる商材ですから、用意されていてもおかしくはありません。もしも道長が帝の体調を気遣っているのであれば、そこを聞き出そうとしてもよいはず。
健康マニアの実資なら、自分自身のためにも薬の在庫を尋ねていたことでしょう。
道長の言動の端々に、帝への冷たい思いが滲んでいて、見ていてなかなか辛いものがあります。
帝は敦康親王を東宮にしたかった
譲位を決めた帝は、行成を呼び出し、ただひとつやり残したことがあると告げます。
そう、敦康親王を東宮にすることです。
そのためには、道長と親しい行成に、どうか告げて欲しいと頼み込むわけですが……。
行成も、帝の敦康親王を思う心をごもっともだとして、ひたすら感じ取っていたと答えます。
「ならば……」
そう安堵する帝に対し、行成は話を打ち切るように過去の事例を持ち出します。
何かといい加減なところのある道長に対し、実資や行成は過去の実例を持ち出すことができる。
それを踏まえ、敦康親王より敦成親王の方が外戚として強力だと説明するのです。
「朕は敦康を望んでいる……」
それでも諦めきれない帝に対し、行成は「天の定めは人知の及ばざるところがある」と告げるのみ。さらに「左大臣は敦康親王を東宮にすることに賛同しない」と言い切りました。
「わかった……下がれ」
言葉を絞り出すように答え、行成が下がったあと、涙を落とす帝でした。
ここの場面は帝も、行成も、これ以上はないかと思えるほど美しく撮影されていました。
どの角度で映せばよいか、どう照明を当てるか、考え抜かれた美しさがあります。
そして演じる側も、人知を超えたような雰囲気すらある。
帝は萎れてゆく花のように生気が消えてゆく。行成は帝と道長の間で引き裂かれ、心が砕け軋む様が見えるようでした。
行成が心優しく、帝を愛していることは他の人たちも知っています。だからこそ、公任や俊賢は無理しなくていいと言っていた。
しかし行成はあまりに責任感が強いのです。
しかも『権記』という日記があるため、彼の場面はドラマでも再現しやすい。
行成は道長の元へ向かい、お上が敦成様を東宮にと仰せになったと報告します。
道長は安堵し切った顔になります。
「なんと! またしてもお前に救われたぞ。行成あっての私である!」
人たらしぶりを発揮する道長。
浮かれた様子で「中宮に御譲位と敦成様が東宮になることを報告してくる」と行成に告げています。
道長は帝の病気を喜びながら、敦康を排除するように動く。
やり口は異なれど、あの父や兄そっくりになってきています。これはもう怨まれても仕方がないところです。
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