光る君へ感想あらすじレビュー

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第40回「君を置きて」一条天皇の辞世の真意は?

まひろが綴ってきた『源氏物語』もいよいよクライマックスへ。

藤壺と光源氏が密通してできた子が即位する展開は実に衝撃的でした。

あかねは絶賛し、帝も華やかで恐ろしいと語ります。

作者の藤式部に意図を聞こうとするも、中宮は教えてくれないのだと言います。

つまり作者は、読み手に見解を委ねているんですね。

作家と物語の向き合い方も色々あり、まひろは立場もあってか自由に議論をさせたいようで。

道長は真剣な顔をして、道長は藤壺の意を得ても光る君は幸せではないと断言します。不実の罪は必ず己に返ってくるのだ、と。

「左大臣がそんなことを言うのは初めてだ」

帝が意外そうに反応すると、あかねが嫣然と微笑みながら言い放ちます。

「罪なき恋などつまらないわ」

しかも赤染衛門までがこれに同意するのですから、彰子は驚いています。

人は道険しき恋こそ、燃えるのでございます――そう不敵に笑う赤染衛門。

実際の彼女は堅実ですので、妄想の中で危険な恋をするタイプでしょうか。

 

命は燃え尽きるが、罪は消えない

まひろが筆をもち、物語を続けています。

誰もが千年生える松になれない。命は燃え尽きる。ならば相手に偲んでもらえそうなうちに死んで、かりそめの情けをかけてくれただけでも、一途な思いが燃え尽きた証にしたい――。

ここは『源氏物語』の中心となる思想のようにも思えます。

長生きすることそのものが見苦しいと言いたげな、短命至上主義を感じさせる。

もしかしたらこれは日本文学の宿命かもしれません。今も昔も、ヒロインが早死にしすぎではないでしょうか?

『源氏物語』は言うまでもない。

今週末に映画が公開される『南総里見八犬伝』にしても、冒頭で伏姫が自害します。

『舞姫』だってモデルは健康に生きていたのに、作中では精神を病んで実質的に死ぬせる……海外文学にも夭折ヒロインは確かにありますが、日本文学はあまりに死なせすぎと感じさせます。

原典では死が描かれなくなった『三国志』ものの貂蝉も、董卓退場のタイミングで死なせることが日本独自の要素として定着しました。

他国のヒロインまで勝手に死なせているわけです。

NHK BSで放送中の『三国志 皇帝の秘密』では、本来の生存ルートアレンジ版の貂蝉が登場します。

そしてもうひとつ、まひろは道長の言葉を考えています。

罪を犯した者は――。

これも日本文学的かもしれません。来年大河に出てくる曲亭馬琴は『金瓶梅』の結末に納得できていませんでした。

いろいろな意味で文字通りやりたい放題の主人公・西門慶の最期が甘い!

もっと酷い最期にしなきゃスッキリせんだろ!

そう苛立っていたとか。

二年連続で文化に焦点を当てた大河になります。文学史に想いを馳せることも楽しいものですよ。来年の予習に映画の『八犬伝』もオススメできます。

 

優しき帝は民の気持ちを思う

中宮は、閨で帝を心配しています。

どんなに寒くても薄着なのだとか。

冷えは万病のもとですから気になりますが、聞けば帝は「民の思いを味わいたい」のだとか。民の苦しみを思いやることが大事だと語ります。

まるで唐太宗のような名君だと中宮が感動すると、帝も「百練鏡」か?と反応し、中宮が新楽府(しんがふ)を読んでいることに喜んでいます。

まだ途中だと微笑む中宮。

帝は中宮の想いを褒め称えますが、咳き込んでしまいます。どうやら普段から体調がよろしくないようです。

そして申し訳ありません、先週のレビューにて『貞観政要』だと書いてしまいました。

新楽府も『貞観政要』も「貞観の治」と称される唐太宗の政治を礼賛していますので、混同してしまい大変失礼しました。

咳き込む帝に、中宮が薬湯を飲ませます。

越前編の周明が見たら「帝でもこの程度の治療しか受けられないのか?」と驚きそうなところ。

以前も指摘しましたが、この頃の貴族にとっては現在のお屠蘇が最高級の薬です。

現代の感覚からすればハーブドリンク程度のものですね。それでも当時からすれば神秘の妙薬です。

周明は宋に戻ったのか、それとも太宰府あたりにいるのか。気になるところ。

東洋医学は、とにかく“冷え”を警戒しますので、まず帝が薄着という時点で注意が必要でしょう。きっと健康マニアの実資は厚着をしていることでしょうね。

天下を担う帝ですから、まずは自身の体を労らねばなりません。

中宮はまひろに相談しています。

帝の命を案じ、失うことを恐れているのです。顔色が悪く、息遣いが苦しそうだと不安げに語ります。

中宮は大事ないと言われるから薬師に相談していない、自分のせいだと責めています。

まひろはそのようなことをお考えになってはいけないと嗜め、今日は顔色もよいしきっと回復なさると声をかけています。

 

帝は崩御の“卦”が出る

道長も帝の具合を心配していました。

では薬師を呼ぶのか?

というと、そうではなく、なんと赤染衛門の夫である大江匡衡から占いの結果を聞いています。

結果は「世が替わる」とのこと。

25年にも及ぶ在位のため、道長譲位はあってもよいと考えていたとか。それがまさか崩御とは……淡々と語っています。

匡衡によると、今回の占い結果は醍醐帝と村上帝が崩御した時と同じようで、さらに今年は三合の厄年だと念押ししています。

結論、もう快癒の見込みなしとのことです。

この場面が極悪非道だと言える点は、帝の聞こえる位置でやりとりしていることでしょう。

医術もろくにない時代、こんな不吉な結果を聞かされたらたまったもんじゃありません。ショックのあまり確実に寿命は縮みます。

もしかして道長はわざとやったのか?とすら思えてくる。

そもそも、臣下が勝手に「そろそろ御譲位もありか?」などと言ってしまうのがおかしい。

『源氏物語』でも、精神的打撃から頓死する人物は多いものです。

当時のそうした事情は、Amazonオーディブルで NHKエンタープライズが配信している

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の最新エピソードにて、本郷和人先生の解説がおすすめです。

本作の道長はヒール度が低すぎるという意見もありますが、十分いやらしい政治家になったのではないでしょうか。

人間的にも妻を裏切りまひろを思い続け、罪がある男だとは思っておりましたが、彼みたいなタイプの悪党が一番厄介だとも思います。

人間的には愛嬌がある。

周囲の誰もが皆「実際会ってみれば、悪い人じゃないよね」と取り込まれてしまう。

実際は狡猾で、しかもそのことに本人は無自覚で、なんのかんの言い訳を用意しながら自分の責任を認めない。流されやすい。身内贔屓が強くて大義を軽んじる。

そんな道長と比べたら、藤原実資のほうがはるかに清廉潔白で立派、気骨がある政治家でしょう。

科挙のある宋ならば、実資のような秀才タイプこそが大政治家になっていたはずです。

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