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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第44回「望月の夜」】
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威子の入内を強引に押し通す頼通
さて、そんな頼通の摂政就任を土御門の面々が祝っております。夫の隣で微笑む愛妻の隆姫は本当に愛くるしいですね。
謙遜して皆の力を貸して欲しいというと、藤原教通はそんなことでは父上にいいようにされてしまうと言います。
倫子が父上あってのあなた方だと控えるようにと諌める。
と、威子が兄上のお役に立ちたいというと続きます。
頼通がすかさずこう答えます。
「そうか。では早速だか威子、入内してくれぬか?」
思わず驚いてしまう威子。
帝は十歳、彼女は十九歳。年齢差もあり困惑していると、倫子が「帝も数年すれば大人になられる」と微笑みます。
倫子も彰子の入内を拒んでいたころから変わったのです。
帝が大人になるころには、私は三十近くになると威子が拒否するように言うと、妹の嬉子が「私が入内する」と言い出しました。彼女は帝と一歳差なのです。
しかし頼通は、嬉子には嬉子の役目があると即座に否定。
威子は嫌がりますが、倫子は帝が一人前になるのを待ち、最初の女子となり、帝のお心をしかとつかむようにと言い、それが使命だとまで言い切りました。
威子は抵抗するも、結局、翌年の春には入内するのでした。
それにしても頼通は、自分が嫌な結婚をさせられそうになったら全力で拒んでおいて、妹はそうするわけですか。隆姫と微笑みあったあとでこれですか。
つくづく「宇治十帖」を連想させる展開です。
老いた光源氏は陰険でどうしたものかと思わされてしまいますが、それでも「宇治十帖」の薫と比較すれば相対的によかったのだと痛感させられます。
道長と頼通は、光源氏と薫のように思えてくる。
要するに、代を経るごとに人品が下り坂なのです。まひろの願いとは逆になるわけです。
闇を共に歩いてきた二人
三条院は危篤となり、病床にいました。
「闇だ……」
娍子と敦明親王が枕元にいます。
「闇でない時はあったかのう……娍子、闇を共に歩んでくれてうれしかったぞ」
「お上、お上はいつまでも、私のお上でございます」
そう返す娍子。三条院の目から涙が一筋伝うのでした。
なんと悲しい生涯でしょうか。
時勢に翻弄された三条院は42歳で世を去りました。敦明親王は父という後ろ盾を失ったことから、自ら東宮の座を降りるしかありません。
かくして道長の孫である敦良親王が東宮となるのです。
一家三后
それから一年――。
彰子は太皇太后。
妍子は皇太后。
威子は中宮。
三つの后の地位を、道長の娘三人が占めるという事態になりました。
この夜、威子が中宮となったことを祝う宴が土御門にて開催されております。
三人の后に礼を言う道長に対し、彰子をのぞく二人は冷たい目を向けている。
妍子は「父上と兄上以外、めでたいと思っておる者はいない」とまで言い切りました。
道長はこれをとりあわず、「頼通ものびのびと政ができる」と続け、感謝の言葉を告げます。
応じるのは彰子だけです。
このあとの宴では、頼通と教通の兄弟が舞っています。
直衣布袴という大変気合を入れて再現した衣装を見に纏う道長は、宋磁で酒を飲んでいます。
ここも各人が細やかで、道綱は何も考えていない。
実資は居づらさがありそう。
倫子と彰子は穏やか。
妍子は飲酒のピッチが早い。
宴の主役であるはずの威子は険しい顔。
斉信は軽薄感がやや滲むものの、公任は何か複雑なものがありそうな顔。
俊賢は道長に全てを賭けて勝負に勝った誇らしさがある一方、慈悲深く理想主義者の行成はどこか複雑な顔です。
そこへまひろもやってきて、座ります。
道長は実資に、摂政に盃を勧めるように頼みます。
かくして太閤となった道長から勧められた酒が座を回ってゆきます。
ここで回されてゆく磁器は博物館では見られるものの、実際に誰かが飲んでいる様は目にすることがまずできません。それを叶える大河ドラマの意義を感じます。
道長は裾を引きつつ実資に声をかけます。
「今宵はまことによい夜だ。歌を詠みたくなった。そなたに返の歌をもらいたい」
「私のような者にはとてもとても」
そう謙遜する実資ですが、道長は「頼む」と言います。
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