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『光る君へ』感想あらすじレビュー第44回「望月の夜」かけたることなき妻と娘たち

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第44回「望月の夜」
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道長の思いは果たして引き継がれるのか?

まひろが「手習」まで執筆に励んでいると、道長が暮れの挨拶と称してやってきます。

そしてそのうえで、摂政と左大臣を辞めると言い出します。摂政になってからまだ一年にもなっていないのではとまひろが驚くように言うと……。

「摂政まで上っても俺がやっておっては世の中は何も変わらぬ」

愕然とし、頼通に摂政を譲るのかと問いかけるまひろ。認める道長。

まひろは「頼通様にあなたの思いは伝わっているのか」と問いかけます。

「俺の思い?」

「民を思いやるお心にございます」

鈍感さを発揮する道長と、やや苛立つまひろ。

「ああ……どうだろう」

そこを引き継いでいないのですか!

まひろも諦めたようにこう言います。

「たった一つの物語さえ、書き手の思うことは伝わりにくいのですからしかたございませんけれど……」

「俺の思いを伝えたところで何の意味があろう。お前の物語も人の一生はむなしいという物語ではなかったか? 俺はそう思って読んだが」

まひろが絶望しているようにも思えてくる。

為時との会話と比べてみましょう。

為時は不器用ながら、越前の民の暮らしをよくしようと、贈収賄がはびこる構造を変えようとしていたものです。

為時は民を思う心と聞かれれば、漢籍を引用して答えられます。だからこそまひろは、それを彰子に教えることもできました。

道長には、そういうものが何もないうえに、フィクションを怠惰の言い訳として持ち出しました。

まひろは困惑しつつ、まるで自らに言い聞かせるよう、こう言います。

「されど道長様がこの物語を私にお書かせになったことで、皇太后様はご自分を見つけられたのだと存じます。道長様のお気持ちがすぐに頼通様に伝わらなくても、いずれ気付かれるやもしれませぬ。そして次の代、その次の代と一人でなせなかったことも時を経ればなせるやもしれません。私はそれを念じております」

「そうか……ならばお前だけは念じていてくれ」

「はい」

バイオリンの響きが美しく奏でられ、まひろと道長の表情が映し出されます。

これがなかなか怖い。

源氏物語』は、黙って当惑していてその様すら可愛らしいと評される女君が、本心は激しい嫌悪感や憎悪すら目の前にいる相手に抱いていることも往々にしてあります。

この美しい映像と音楽に酔わされてしまうけれども、まひろの内心はどうなっているのやら。

 


倫子の依頼

するとそこへ倫子がやってきます。

「お二人で何を話されていますの?」

「政の話だ」

そう道長が返すと、倫子は「政の話を藤式部にはなさるのね」と返しています。

前の会話をある程度は聞いていたのでしょう。流石に気まずいのか、まひろは目が泳いでいる。道長は皇太后の考えを知っておかねば政はできぬと言い訳をします。

しかし倫子は笑っていない目でこう言います。

「そうでございますわね。藤式部が男であればあなたの片腕になりましたでしょうに。残念でしたわ」

道長も認め、まひろも畏れ多いことだと言うのでした。

それにしても、倫子もなかなかおそろしいことを言い出しました。

このドラマでの彼女は、若い頃のまひろを知っています。父譲りの漢籍教養を掲げ、倫子たちにはわからぬ道理を説いていたまひろのことを。

若い頃のまひろには政治参加を願う気持ちがあった。その原点に戻るよう、促したようにも思えなくもありません。

道長が去ると、倫子は頼みがあると言います。

清少納言が『枕草子』を残したように、道長の華やかな生涯を書物にして残したいと言い出します。

しかしまひろは答えられず、倫子は今すぐに答えなくてよろしいと微笑みます。

「考えてみて」

そう言われ頭を下げるまひろ。

ききょうに「光だけでなく影も書くべきだ」と言いながら、道長大絶賛物語なんて書けるわけもなさそうに思えます。

『栄花物語』が該当するのでしょうが、これは作者が諸説あり、教養ある貴族女性であるとまでしか判明していないとか。

さあ、どうなるのか。

最終盤にきて、また面白くなってきました。

 


摂政頼通の時代が始まる

かくして藤原頼通が後一条天皇の摂政となりました。

さて、ここでちょっと考えたいことでも。

道長の「民を思う心」は口先だけだと考えることにしまして、業務の引き継ぎはどうだったのか?彼の日記『御堂関白記』からうかがうことができる。

しかし、この日記が雑でいい加減なものです。藤原実資藤原行成の日記と比べると劣ります。

とにかく細かい実資は、道長に対しては批判的なところもあったとはいえ、頼通はかなり好意的に見ています。頼通も実資の知性を大いに頼りにしていたのでした。

儀式次第といった細やかな面では、実資こそ頼通にとって頼りになる先人であったことでしょう。

さて、そんな実資と頼通は、平安ブロマンスに関与していないわけでもありません。

ともかく細かい実資の日記には、頼通と烏帽子も被らず抱き合って、性的に興奮していたと解釈できそうな夢の話が出てきます。

さしもの実資も、目覚めたあとは困惑してしまい、恥ずかしかったとか。

実資と頼通は一体どういう関係なのか。

男色の歴史を踏まえる上で気になる夢の話とされてきました。

ただ、そうしたニュアンスは抜きにして、有力者と抱き合うほど親しいということは瑞兆であるとして書き記したのではないかと解釈されることもあるとか。

実資と頼通を見ていると、どうしてもその日記を思い出してしまいます。

僭越ながら皆さんもそうなるよう、ここで記しておきました。

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