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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第9回「守るべきもの」】
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どうする望月千代
望月千代だなんてびっくり!
そう驚かせたかったのかもしれませんが、戦国ファンの視聴者からはバレバレでしたね。あまりにわかりやすいので、流石にもう少し捻ると思い立ったんですがド直球でした。
その望月千代ですが、もうちょっとどうにかして欲しいです。
あんな全力で四六時中「私は怪しい女ですぅ!」とアピールしますかね。
口角をあげてにっこり白い歯を見せて笑っていましたが、昔の女性は、あまりそういうことはしません。
東西で扇を女性が使う局面が多いのも、歯を隠す役割があります。
今ほど歯科治療ができない時代は虫歯にもなりやすい。
笑うときにそっと口元を隠す仕草がよいものでして、唇からチラッと白い歯が見えることがセクシーさとなります。
ドラマのような笑い方は全くもって色気がない。とはいえ、役者さんを責めても仕方のないことです。全ては演技指導の問題でしょう。
武田信玄ですら、あまり風格を感じさせない飲酒で、なんだかバーベキューでビールを楽しむおじさんみたいでした。
どうする覚醒と成長
ピヨピヨ泣いてばかりで、他人のせいにしてばかり。
そんな徳川家康があまりに無能に見えるため、嫌気がさす視聴者も増えているようです。
◆『どうする家康』松本潤演じる家康は、なぜ“無能キャラ”なのか?(→link)
ただ、こんな見方もあるでしょう。
家康の成長を表現するため、今は幼いところも隠すところ無く見せている――。
そこで、ふと考えてしまいました。
もしかして『鬼滅の刃』の我妻善逸あたりでも意識しているのか?と。
とにかく戦いが嫌いで、戦闘シーンになると最終的に気を失ってしまう善逸。
家康も戦場から逃げ出していました。
人間は確かに成長するので、かつて弱かったところがあるのも当然のことでしょう。
それにしたって、何らかの片鱗は幼少期からあるもので、『鬼滅の刃』の場合も善逸に才能があることだけはずっと示されています。
我妻善逸が義勇をも上回る人気の秘密は「強さと成長」がカギ~鬼滅の刃徹底考察
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本作の家康には、その片鱗すら無い。
「今は二十歳くらいで頼りないけど、そのうちきっと覚醒するんだろうな」
って、期待を込めている人もいるかもしれませんが、その要素が全く感じられないのです。
ですので、今後化けることがあっても、まるでガチャで大当たりを引いて転生したような、無茶苦茶な主人公補正で誤魔化されるのでしょう。
家康という偉人を真っ当に考えていたら、こんな酷い人物像で9話も続けられません。
おそらくシナリオは十数話あたりまでは進んでいるでしょうから、今後しばらくはドラマの改善も期待できないでしょう。
テレビに気を使う大手スポーツ紙では、盛り上がっている“フリ”を続けるとは思いますが。
どうする色彩感覚
なぜ本作は、見ているだけで気分が暗くなってしまうのか。
その答えは画面の色彩にあると思います。
大河ドラマ館やイベント会場には、出演者の等身大パネルが飾られます。
私も『鎌倉殿の13人』の時は何度も見ました。
伊豆の青年らしい北条義時。貴人らしいオーラをまとった源頼朝。どこか狡猾さが垣間見える三浦義村。豪胆な和田義盛。思い出すだけでグッときます。
そして今年の三英傑が並んだパネルを見た瞬間、よぎった思いは「小学生男子向けナップザック手作りキットみたいなセンス」でした。
信長くんはダークオーシャン。
秀吉くんはシャイニングサンダー。
家康くんはゴールデンタイガーだな!
女性の衣装も「小学生女子向けナップザック手作りキット」ですね。
お市チャンはクールブラック。
瀬名チャンはかわいいキャンディピンクよ。
日本の伝統色彩感覚とも異なる上に、昭和平成の小学生家庭科授業レベルなのです。
『鎌倉殿の13人』の場合、北条氏はトーンが異なる緑色。源頼朝の嫡流は白にワンポイントで紫。そういうテーマカラーがありました。
衣装の色合いがさんざん叩かれた『麒麟がくる』は、むしろ当時を再現した結果、視聴者の認識とずれてしまった結果です。
派手なだけでなく、五行説まで取り入れたものでした。
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五行説から、小学生ナップザック手作りキットまで、何がどうすればそうなってしまうのか……わけがわかりません。
どうするロケハン
本作は、CGやらVFXを使って若者受けを狙っていると言われます。
しかし、むしろ逆効果で「なんか嘘くさい」と拒絶反応が出る人も多いようです。
CGは、見た瞬間に「おっ、CGだな」と思われたら負け。
「最近の若者はゲームでCGを見ているから大河でも見たいだろう」なんて理屈は通用しません。
それに本作は、ロケの手間を惜しんでいるようにすら思えます。
『大奥』の第8回放送では、見応えがあるロケ地がありました。
樹齢が一千年を超えているような巨木が登場したのですが、いかにも日本らしい景色といえます。
日本列島は大規模な森林火災が発生しにくい気象条件です。
また伐採から免れた樹木も多い。
諸外国と比較するとわかりやすいですが、たとえばイギリスあたりは天然林が少ない。
海防力が重要なため、木材を伐採し、大型帆船を作ってきた歴史の表れです。
日本の森林は、映像の世界やインバウンドにとっても、非常に大切な資源。
外国人観光客が、自然を求めて地方へ足を運ぶという報告もあるほどで、神秘的な巨木は何かとプラスになるものです。
『鎌倉殿の13人』では、源頼朝が巨木のある森を馬で進みながら落馬しました。
頼朝が落馬した場所は史実では確定していません。橋の落成を見にいく途中であったことから、フィクションで描くときは、橋の上が多い。
それをあえて巨木を映し込むことにより、どこか神秘的で不穏な絵になっていた。
一方で本作は、そういうセンスがないがゆえの雑CGになっている。
どうしたものでしょうか。シナハンもいいですけれども、ロケハンもしてください。
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