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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第9回「守るべきもの」】
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どうするハラスメント対策
こんな記事がありました。
◆「どうする家康」の脱ぎ担当は山田裕貴で決定か?(→link)
男性の性的な被害は、女性と比べて軽視されがちです。
しかし、こんな「脱ぎ担当」なんて呼び方はさすがにどうでしょうか。
確かに昨年の『鎌倉殿の13人』では、よく脱ぐ役者がいました。
それを受けてのことだとは思いますが、昨年と今年では作り手の意識も異なります。
ナイーブな場面では事前に仲介者を入れ、作り手と役者のコンセンサスを得てから撮影を進める。『鎌倉殿の13人』ではそんな気遣いがありました。
◆「鎌倉殿の13人」ハラスメント防止講習会「リスペクト・トレーニング」大河初導入「居心地いい現場に」(→link)
実は『大奥』にも導入されているシステムです。
◆ 「大奥」にインティマシー・コーディネーター NHKで初導入(→link)
どんな大胆な場面があっても、こういう気遣いがあれば安心できます。
『どうする家康』でも同様のシステムが取り入れられているという話は聞きません。
「役者がOKだと言ってりゃいいんだろ」というツッコミもあるかもしれませんが、それを本心で言いづらい状況があるのではないか?と気遣うからこそ導入されたシステムなのです。
本作の現場ではどうなっているんでしょうね。対応していたら、何らかの報道がある気もするのですが、一向に見当たりません。
流水の清濁はその源にあり
SNSトレンドでは「どうする反省会」が、いよいよ活況になってきました。
第9回という序盤の段階で、なぜ、そんなことになってしまったのか?
流水の清濁はその源にあり。『貞観政要』
流れる水が澄んでいるか、濁っているか? その要因は源にある。
『光る君へ』で一条天皇も愛読の『貞観政要』は泰時も家康も参考にした政治指南書
続きを見る
答えは、作品そのものがおかしいからでしょう。
いやいや、本レビューや一部のSNSが騒いでいるだけで、本当は多くの人が楽しんでいる、とお考えの方もいるかもしれません。
試しに『どうする家康』でニュースを検索すると、何でも褒めるポリアンナ記事とアンチ記事の両方が出てきます。
その中で最もポピュラーなのがヤフーニュースに掲載されるものでしょう。
そこでのコメント数やSNSでの拡散具合を見ていくと、ドラマに対する熱気はある程度浮かんできます。
◆NHK大河「どうする家康」がさえない最大の理由 TV業界と視聴者の“感覚のズレ”あらわ(→link)
こちらの記事ですが、大河ドラマの関連ニュースでコメントが2000を超えるというのは、なかなか見ない現象です。
しかもそのコメントの多くが叩き論調に同意。
コメント欄は、3月6日夜の時点で2,900を超えていました。
むろん「叩き記事」を主戦力とする日刊ゲンダイの記事ですので当たり前といえばそうですが、ゲンダイさんのドラマ系記事でここまで数字が伸びることもそうそうありません。
こうなるとアンチ論調に仕向けた方がPV(アクセス数)を稼げる!
ってことで、ポリアンナから掌を返すメディアも増える可能性があるでしょう。
一方、褒め記事はどうか?
比較として、以下のコメント欄の数にご注目ください。
◆ 『どうする家康』“半蔵”山田孝之、只者ではない感が漂う眼力 裏切った“正信”松山ケンイチは不敵な表情(→link)
3月6日夜の時点で21とは……大河ファンとして悲痛の叫びを上げたくなります。
制作サイドも、叩き記事でネットが埋まると困るから、今後は、イベント開催や参加といった、盛り上げ策を打ち出すでしょう。
ちなみに、日刊ゲンダイが必ず持ち出す「TV業界と視聴者の“感覚のズレ」だけは、思い当たることがあります。
かつてのトレンディドラマは、今の若い世代には受けません。
そこを読み取れないで失速するドラマもある。
◆『101回目のプロポーズ』はストーカードラマ!? '90年代の“粘着系恋愛ドラマ”にZ世代が悲鳴!(→link)
そんなズレを修正するように行かない。
今週は『貞観政要』を取り上げました。
徳川家康を尊敬しているのであれば、目を通しておくべき中国古典ですが、ドラマの家康はとても読みそうにありません。
『貞観政要』は、家臣からの厳しい諫言でも主君が聞き入れることで名君となれると説く。諫言の大事さがわかる書物です。
甘ったるいポリアンナ記事で褒められてばかりいても、ドラマは上向きにならず、どんどんズレが深まってゆく。
その好例がこちらの記事にあります。
◆お茶の間で流すのか?厳しすぎる描写に悲鳴【どうする家康】(→link)
タイトルの頭にある「お茶の間」という言葉からして時代錯誤でしょう。
テレビが一家に一台しかなく、家族が揃って見ていた時代は、性的あるいは残酷な場面で困惑しました。
そういう時代の感覚があると、ちょっと尖ったドラマを楽しめると「ワタシはドラマ通!」と思えるようになります。
しかし今は令和です。
スマホやタブレットで、個人が勝手に見たいものを見れますし、そもそも海外ドラマなんてもっともっと表現がえげつない。
果たして上記のライターさんはどんな読者を想定していたのでしょう?
次の記事もまたズレを感じてなりません。
◆ 古川琴音“歩き巫女”の流し目、松本まりか“女大鼠”の変装…「どうする家康」を彩る強烈な女性たち(→link)
◆NHK「どうする家康」今川義元(野村萬斎)が3度目の登場 「否~っ!!」にSNS大盛り上がり「LINEスタンプ欲しい」(→link)
◆松本まりかが大河ドラマに帰ってきた! 『どうする家康』でも山田孝之と抜群の相性(→link)
「LINEスタンプ」が若さアピールのキーワードですかね。
共演者同士が「相性抜群」と言われてもピンと来ないもので、記事を読んで驚きました。
20年以上前のドラマを持ち出されても困惑するばかりです。
そして以下の記事では「改めて学ぶ」と言われて、
ラインナップが支離滅裂な本が紹介されてしまう。
◆太田牛一/中川太古『信長公記』
◆横山光輝『織田信長』
◆加藤廣『信長の棺』
◆明智憲三郎『織田信長 435年目の真実』
『信長公記』は確かに戦国ファン必読の一冊ですが、信長関連の参考本は他にいくらでも読みやすい良書があります。それがなぜかマンガや小説ばかり……。
一体どんな気持ちでこういう記事が書かれるのか?
本作の周辺に漂う空気を推察してみたところ、「ナウなヤングにバカうけ」感覚なんだろうか?と思うに至りました。
サラッと上辺の情報だけ手に入れて、ワタシらドラマ通でマジヤバい!とでも言いたげな……。
SNSですら敵に回してしまいそう
ちょっと古い昭和レトロ、平成レトロ感覚にあわせたドラマが話題になることはあります。
NHK看板番組でもあります。
『いだてん』はSNSでは盛り上がっていたし、『青天を衝け』も昭和平成の青春ドラマのような作りでした。
朝ドラの『カムカムエヴリバディ』も、そんな雰囲気はあった。
とはいえ、それにしたって限界はあり、今回の『どうする家康』はその戦略にも失敗したと感じます。
本作は、むしろ叩くことで盛り上がる作品になってしまったのです。
大河ファンとしては、またもや危機的な状況を迎えてしまったと言わざるを得ない。
SNSの機能は、人間の性質が悪用されがちです。
自分のコメントが共感されると、それだけでドーパミンが出る。そんな中毒になるばかりか、熱中している間は気が付きません。
褒めることで中毒作用になればよいものの、このドラマは貶すことで楽しめるコンテンツになってしまった。
そこに大きな危険性を感じるのです。
思い返せば、大河ドラマは『平清盛』で誤った手法を学んでしまいました。
たとえ視聴率や評価が低迷しようが、ハッシュタグで盛り上がった投稿を集めて大きく喧伝すれば、一定の成功を得た作品となるのだ、と。
しかし、あれから十年以上が経過しました。その戦略はもはや手遅れです。それどころか、アンチにスイッチが入った状態になれば、むしろ逆に作用して危険です。
本作が濁っているのは、源に原因があるから同情はできません。
『貞観政要』の魏徴(ぎちょう)のように、何が悪いのか考え、伝え続けたい。
家康の愛読書から学んでそうしたいと思います。
夏目広次(吉信)三方ヶ原で惨敗した家康の身代わりとなった壮絶な死
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【参考】
どうする家康/公式サイト