8月5日に放送される大河ドラマ『どうする家康』の第30回放送は、なかなか印象的なシーンが予告編で流されています。
お市の南蛮装束です。
美麗なる北川景子さんの姿に、思わず見とれてしまう方は少なくないでしょうが、同時に「ウケ狙いもいい加減にしろ!」と怒りたくもなってくる。
なぜあんな格好をさせるのか。
これは本当に大河ドラマなのか。
そもそも彼女は、乳幼児を連れて家康へ会いに行ったり、フラッと堺へ出てきたり、あまりにも自身の立場から逸脱した行為が多く、過去大河の悪いところをかきあつめて凝縮したような印象があります。
一体どういうことなのか、説明して参りましょう。
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大河ドラマで出しゃばるヒロイン
2023年8月6日に『どうする家康』の第30回が放送されます。
その予告編にあわせて、信長の南蛮装束で出ているお市役の北川景子さんはSNSにこんな書き込みをされていました。
来週の第30話「新たなる覇者」の予告でました。
来週のお市は大好きな信長兄さんの衣装です。最期まで兄と一緒⭐︎
兄への愛が相当重めです。
圧倒的な美しさだけでなく演技力もある――北川景子さんが素晴らしい女優であることに全く異論はありませんが、だからこそ、お市にこんなことをさせる制作陣には怒りを覚えます。
ハッキリいって今回のお市は、大河ドラマで害悪になりがちな“でしゃばるヒロイン”でしょう。
性差別のように聞こえたかもしれませんが、そう申し上げるには理由があります。
時代考証として無茶苦茶なうえに、大して面白みが感じられず、物語の興が著しく削がれます。
そもそもお市が「信長の南蛮装束」を着ている時点で、意味不明でしょう。
フィクションで信長お約束の南蛮装束を他の人物が着ることはあります。『麒麟がくる』では、信長が光秀に贈るという違和感のない設定でした。
しかし、お市となると厳しい。
現時点では、どういう経緯で彼女に渡されたか不明ですが、例えば兄が男物の服を妹に贈ったりするのか? 無理にサイズを合わせようとしても、男女では体型が異なり、そう簡単にフィットさせられないのでは?
そんな単純な疑念も払拭できません。
さらには当時のお市が「秀吉の天下を止める」というのも妙ですし、もっと言えば「家康に恋している」なんて不自然極まりない。
お市が夫と息子を死なせた兄を、そこまで慕っているのも納得できません。
疑問点が少し浮かぶだけならまだしも、本作のお市はとにかく“違和感の塊”です。
幼女が本能寺にいたり伊賀越えにいたり
第30回放送の予告編を見た時点で、お市に対してため息をついてしまった大河ファンもいることでしょう。
駄作大河のお約束として
・ヒロインのワープ
という現象があります。
どこからともかくヒロインが現れたかと思ったら、何やらわけのわからない行為をして目立つ。
都合よく画面に出したかっただけなのでしょう。
しかし、そんなものは制作サイドの思惑でしかなく、物語上は極めて不自然な描写となり、視聴者は困惑するだけ。
他にも大河ヒロインの興ざめ行動はいくつかありますので、多くの視聴者のトラウマになった定番作品から例を挙げてみましょう。
◆2009年『天地人』
史実の直江兼続は【御館の乱】で名をあげ、名門直江家に婿入りする形で家格も備えることとなりました。
妻のお船とは、その過程まで顔を合わせなかったと考えるのが妥当です。
しかし、大河でそれはつまらない。
制作陣にそんな思いでもあったのでしょう。第3回で「暴れ馬を手懐けるお船」と兼続の出会いが描かれます。
大河ドラマにおける安直な表現を揶揄する言い回しとして
・結婚相手が暴れ馬を止める女
というものがあり、まさしくそれ!
さらに本作では、オリジナルの女忍者・初音が織田信長を討った明智光秀の首を絞めたり、千利休の娘が柔術を披露するなど、とにかくでしゃばるヒロインたちがノイズとなっていました。
◆2011年『江〜姫たちの戦国〜』
浅井三姉妹の一人である「江」が主人公の本作。
彼女を幼いときから様々な場面に登場させようとしたため、とにかく無理やりすぎる場面が目立ちました。
特に本能寺の変からの一連の光景は異様そのものです。
・まだ幼い江が本能寺にいた
・伊賀越えにもついてきた
一体なんのこっちゃ?と思われるかもしれません。
歴史上の重要なイベントに、幼女が割り込むとは、いくらフィクションでもあり得ない。
子役を使わず主演の上野樹里さんがそのまま演じたこともインパクトを強めています。
浅井三姉妹さえ除けば、他の描写はそこそこ良心的ともされたこのドラマ。
肝心のヒロインのせいでどうにもならなくなりました。
◆2015年『花燃ゆ』
吉田松陰の妹が主人公という時点で、大河ファンが当惑した本作。
その嫌な予感は当たります。
吉田松陰の妹でも、長姉・千代は烈女として有名ですが、制作過程で消えていました。
代わりに主役となったのが、兄とは年齢差があり、存在感の薄い文。
しかも、その文の「功績」が、
・松下村塾生におにぎりを握ること♪
でした。いったい誰の趣味なのでしょう。しかも松下村塾のテロ行為を描いたため、「テロサー(テロリストサークル)の姫」と呼ばれる羽目に。
さらには、おにぎりを握っているだけでなく、藩の上層部にいる椋梨藤太の屋敷に押しかけて怒鳴ったりするなど、不要な見せ場まで作られたり。
移動距離が考慮されていないから、数百キロを瞬間移動する場面もしばしば。
そうせい侯のためにお野菜作りに励んだり。
群馬でセレブ妻をめざしたり。
ヒロインの活躍ってこれかよ、なんだそれ……と、多くの視聴者のトラウマになったのでした。
「スイーツ大河」とか「女大河」などの蔑称が根付いたのも、このような迷走作品があったからこそです。
『三姉妹』や『おんな太閤記』をはじめとして、かつて女性を描く大河は定番でしたが、それが忌避されるようになったのは、駄作珍品が数多く登場してしまったからでしょう。
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