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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第38回「唐入り」】
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どうする兵站
文禄・慶長の役は兵站がお粗末すぎて、話にならないほどでした。
しかし本作は、兵法における兵站なんて考えたこともないのでしょう。その道でプロ中のプロである石田三成が「殿下は間違ったことないもん!」って言ってますからね。何を寝言ぬかしてんのか。
秀吉の強みは、武功ではなく、インフラ整備等に強い人物を登用したところにあらわれています。
それが文禄・慶長の役のように、あまりにも杜撰で無計画な出兵をしたことが、後世、謎とされるところです。
本作に限っては、謎でもなんでもない。制作陣が「兵站」のことを考慮してないようで、その軽視っぷりは絶望的です。
「マザーセナの教え」にも、それは現れていましたね。
徳川武田間で数年間に渡って続いたとされる「鉄砲の空撃ち=戦をしたフリ」が話にならない。
当時の火薬は、海外から原料を調達せねばならない。空砲で無駄にするだけでとてつもない金がかかります。
それこそ金をドブに捨てているようなものであり、数年間も続けるって冗談にもほどがある。
そんな大事な現実すら、本作の制作陣は無視してしまう。そりゃ兵糧の計算なんてできるわけありませんよね。
『パリピ孔明』のスタッフに兵法を教わったらいいと思いますよ。
どうする衣装
淀殿や秀吉の衣装は、センスが変わりましたね。
突拍子も無い衣装デザインがどこかで批判されたのか、それとも現場責任者の考え方が変わったのか、徐々に変化していってます。
個性は消えました。でも、はなから、こちらでよかったんですよ。
今後は最後までストック衣装でいいです。もう、ピント外れの個性は発揮しないようお願いします。
どうする理論破綻
秀吉の唐入りが支離滅裂なのは、史実通りなので仕方ありません。
しかし本作は、それに輪をかけて意味がわかりません。
動機①日本の民のために戦う
→まあ、わからなくもない
動機②朝鮮の民のために戦う
→は? えっ?
動機③明の民のために戦う
→はああああああああ!?
「お前(明)のためにお前を殴る!(=唐入り)」by秀吉
秀吉はさほどに狂っている――小うるさいピアノのメロディを背景に、それを表現しているんですかね?
ここまで支離滅裂で頭の中がおかしいと、宇宙から妙な電波でも受信しているんじゃないのか?と思えてきました。
ならばいっそSF時代劇にしたらどうでしょう?
中国では今そのジャンルが隆盛しています。
ただし、SFを描くとなると、逆に時代考証をシッカリしないと、とんでもない世界観になってしまいます。本作のスタッフなら……。
中国の傑作SF『三体』は素晴らしいそうですよ。WOWOWで放送予定のようですね(→link)。
どうする所作の汚さ
『鎌倉殿の13人』では、義経が政子に膝枕する場面で、何度も指導が入ったそうです。何気ないシーンのようで、かなり大変だったとか。
それに引き換え、今年は指導をしているのでしょうか。
淀殿の膝枕であおぐ場面のぎこちなさときたら、全然リラックスしているように見えないのです。
所作指導は『大奥』にでも取られましたかね。
先日、2025年大河ドラマ『べらぼう』に多くの『大奥』スタッフが参加していると発表され、安堵しました。
同時に、なかなか残酷な宣言にも思えました。
「再来年の大河には、今年の大河スタッフも大勢参加します!」
そんな風に張り切って言われたら、絶望しますもんね。
つまり、今年は時代劇制作陣の一軍が『大奥』に投入され、大河では人材が不足しているのでは? なんてことも考えてしまいます。
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どうする時間稼ぎと素材の破壊
重要場面での説明は駆け足で、気がついたら多くの人が退場している。
ペース配分が無茶苦茶。
そうかと思ったら、どうでもいい話が引っ張られたりするのが本作の特徴ですが、今回の放送でその最たるシーンとなったのが大政所の場面でしょう。
秀吉の母・大政所と、妻・ねねの会話。
要するにこれは、彼女らの卓越した演技力に頼りたいからなのでしょう。
誰がどう見ても「お上手」としか言いようがないですが、せっかくの演技も陳腐な脚本と演出、BGM、安っぽいセットで、ドラマの完成度としてはどうにもなりません。
つくづく最高の素材を台無しにする作品です。
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