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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第2回「佐殿の腹」】
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千鶴丸は出家させた……だとぉ?
伊東祐親は、八重に対して「頼朝は北条が預かる」と説得。二度と会ってはならんと釘を刺しています。
「父上におまかせします」
あっさり繰り返す八重ですが、千鶴丸には会いたいと願う。会わせてくれないなら川に身投げするとまで言います。
「好きにせい」と言い放つ祐親ですが、直後に千鶴丸は出家させたと言い切ります。
場所は伊豆山大権現。まことかどうか念押しする娘に、嘘はつかんと返す。すでに殺害済みなのは視聴者にはわかっていますね。
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そのころ宗時は、八重が別の男と結婚することを義時に伝えていました。
嫁ぎ先は見張りにつけていた家人だと知り、義時は「身分が違いすぎる!」と嘆いています。八重の兄・祐清は、それだけ父が怒っているのだと説明します。
しかし、妹思いの祐清の願いもあってか、嫁ぐ前にもう一度、八重と頼朝を会わせる計画が持ち上がってきます。
「やめておきましょう!」
義時は即座にそう否定するものの、宗時と祐清は弓を射ながら盛り上がっちゃう。
これも義時の特徴で、義村ほど人の感情を無視しないけれども、宗時ほど感情に流されすぎないんですね。
かくして義時の意向は無視され、比企の家で二日後に会う手筈が整えられました。
祐清が八重を連れ出し、義時が場のセッティングをすることになってしまいます。
ここで、その頼朝の様子になるわけですが……。
政子が運んできた膳にアジがあることに気づき、嫌いじゃ、と一言。政子は、小骨は抜いておいたと言いながら、味が嫌いなわけではないですよね、とニッコリ微笑む。脂が乗っていて美味しいはずだと。
政子は賢いなあ。
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そういう味や下品さではなく、小骨のせいだと原因を把握している。だから機転を利かせてきた。
ちょっと古い作風なら「女にしておくにはもったいない」と言われそうではある。
しかし、女でも機転は大事ですから、当時はそういう価値観があると踏まえてこのドラマは作られていると思います。
そこまでしておいて、政子はお膳を運んだだけだと義時にはごまかして、去っていきます。
政子が化粧をするということは
政子と入れ替わりで頼朝と対面した義時は、八重と出会う計画を伝えます。しかし……。
「それは、行かねばならぬのか」
頼朝は、いまさら会ってどうなるのかとウダウダ。しかも脚の爪を切らせながらという対応っぷりです。貴人情けを知らずというか。
「わしは行かぬ」
「お待ちください、それではあんまりです!」
義時は抗議します。
八重は、嫁ぐ前に頼朝の顔が見たい、今の顔を見せたい。
そんな気持ちを説明すると、頼朝は気持ちくらい会わなくてもわかるとそっけない。しかも、このあと兄の宗時にも伝えて欲しいととんでもないことを言い出します。
世話を焼いてくれるのはありがたいが、兵は挙げぬって。
「戦は苦手じゃ」
いやいや、待ってよ、本人の口から伝えようよ!
義時はそう抵抗しますが、
「あとは任せた」と去って行く頼朝です。
義時は、ため息をつくしかありません。気の毒にもほどがある。
そこへ妹の実衣(みい)がやってきて「姉上が……」と言い出します。義時の心労は止まりません。
政子は化粧をしています。頼朝と三島明神デートだそうです。
ほんとうに今年の大河は、いやらしくてけしからんのぅ!
女性が化粧をする場面をじっくりと描くのって、古典の春本や美人画の定番。相手のためにウキウキるんるんと化粧する姿は、それだけでいやらしいわけです。
化粧をしながらセリフをすっと読む演技も大変ですよね。あーっ、いやらしい!
艶っぽい姉に、頼朝はろくな奴ではないと義時が言い出します。悪口は言いたくないけれど……と、言いかけると政子はこうだ。
「では言うな」
ヒエッ!
それでも義時はめげません。もう一度会いたいという八重のことを断ったと言います。
それは相手を思ってのことだと言う政子。あれれ、内心は八重に勝利宣言しておりません?
しかも、義時が思いが冷めたようにしか見えないと伝えると……
「もっと好きな人が現れたんじゃないの?」
おぅおぅ、政子ぉ……もう自信満々か。花ざかりよ!
そんな風格たっぷりに言いますが、この言葉を激怒しながら自問自答する日も来るでしょう。
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義時はなおも、頼朝が八重の話をしたのか?と姉に問う。本当に慕っているならそこは明かすべき。頼朝のせいで八重がどうなったかくらい、言うべきだろうと。
「あなたは昔からそう」
私に好きな人が現れたら悪口を言う。私がとられるのが嫌だから? そう姉に言われ、気持ち悪いことを言わないで欲しいと義時は返しますが、ここまで傲慢になるくらい、政子は自分に自信があるのでしょう。
そりゃそうなるわ。政子には、顔かたちを超えた輝きのようなものがあります。美しいとか、美しくないとか。そういう次元を超えている。こんな人がいたら、もうどうしたらいいんですか!
さて、勝手に頼朝と八重のデート会場にされた武蔵国・比企では――。
頼朝を後見する比企家でデート
比企尼は頼朝の乳母です。
乳を飲ませるだけでなく、生涯を後見する役目があります。流罪となったとき、関東へくだって以来15年間、頼朝の援助を続けていました。
これが日本史のおもしろいところです。
こういった女性、女系のサポート役がこうも目立つというのは、なかなか珍しい。そのほうが人間の生存率はあがるから、大変優れたシステムとは言えます。
ただし、こういう「女性を介在した社会構築」を時代遅れだとして、否定した歴史も日本にはあります。それは明治政府が中途半端に西洋列強を見習った結果のこと。
明治以降、上書きされていない女性の権力こそ、これから来る歴史のトレンドではないでしょうか。
世界史規模でもこれは最先端の注目点かと思われます。
大河のオープニングで、尼将軍が堂々と立っていることには大きな意義があります。ですので、比企尼にもご注目を。
比企家では、比企尼はさておき、比企能員と妻の道が、デート会場に選定されたことに戸惑いがあります。
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道が「もっと近いところがあるでしょうに!」と怒る気持ちもわかります。平家に知られたらどうなるのか?と慎重になる方が自然でしょう。
本作はジェンダー観もまっとうにしたいのだとは思います。
道が女性ゆえの感情由来で反対しているとは思えない。彼女の反対はごもっとも。
それに、道以上に気まぐれで、ありのままの姿を見せて、テキトーに振る舞う坂東武者どもが大勢いる。そこには男女差がありません。
しかし、比企尼はキッパリと、「源氏を支えるのが比企の役目だ!」と言い切ります。
彼女の言い方は、北条時政より威厳があるように思えます。道は不満そうな顔をしておりますが。
驕る平家
義時が馬で武蔵を移動していると、堤信遠と出くわします。
いい服を着て、義時に対しては下馬して頭を下げろと言い出す。
ムッとして、そこまでする道理はないと義時が断ると、捕まえられて土下座させられた上に、顔を泥まみれにされてしまいます。
源氏なんぞありがたがって何になる?
そう挑発され、身の程を知れとまで言われる義時。他の坂東武者ならば血の雨が降りそうなところですが、義時は我慢ができるのでなんとかなります。
しかし平家方も迂闊ですよね。威張り散らしてはいけないルールでも決めておけば、別の結果があったかもしれない。
驕る平家は久しからず――とはまさにこのことでしょう。
頼朝と政子が歩いています。14歳で伊豆へ流されてきたことを語ります。まだ幼いのに甲冑をつけ、倒れ込んでいた少年頼朝の姿。
「ご苦労なされたのですね」
政子がそう促すと、頼朝はスラスラと語り出す。
兄弟たちの中には、父と共に命を落としたものもいれば、平家に囚われ死罪になったものもいる。
頼朝は自分自身の運の良さを語り、信心深くなったのはそれからだと語る。
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これは説得力があります。大泉洋さんの読経が実によろしい。気品があって、確かに信じているのだと思える声音です。
そしてここから、伊東の八重のことも語り始める。
かけがえのない存在で、支えであった。しかしそのせいで、八重を苦しめることになったのだと。
「……聞いています」
「同じ過ちを繰り返したくはない。政子殿に、八重のような思いはさせたくないのだ」
そう言われ、政子は頼朝の手を執ります。
「彼の方の代わりはできません。でも私なりに、佐殿をお支えしとうございます」
「政子殿」
手を重ね返す頼朝。
「生きていたからこそ、今、私はここにいる。政子殿と知り合うこともできた。生き永らえてよかったと、これほど深く感じたことはないぞ」
政子はこう言われ、感極まった目で相手を見返しています。私も気持ちは同じです。生きていたからこそ、この場面が見られた……って、ものすごい光景が、目の前で展開されている!
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「やっと現れたのよ……私が一生を捧げたいと思った殿方が」
政子は妹の実衣にそう確信を込めて語っています。
何もかもが違う。荒々しい坂東武者は苦手だった。粗野で乱暴。でも、あの人は声を荒げない。乱暴をしない!
実衣はしらけきった顔で、はっきりしない方にしか見えないと返す。
そんなことは微塵も気にせず、政子はうっとりと、悩んでいる頼朝が、正しい道を選ぶお手伝いをしたいと言います。
「あなたも早くいい人がみつかるといいわね」
そう妹に言い切る政子。すごいことになってきました。この二人はなんなのか? 頼朝は政子を罠にかけたようで、政子はようやく自分の野心ごと受け入れる相手を見つけたようで。
お互いが、お互いを、搦めとるような……でもそこに嘘はないし、互いを思う気持ちはあると思える。
この二人を見ているだけで、頭がいっぱいになってしまって、まったくどうしたものやらですよ!
泥まみれになった義時は、頼朝は八重に会いたくないと報告しつつ、比企の館につきました。
それで一人ででのこのこやって来たのかと突っ込まれ、こう返す義時。
「私だって来たくなんかなかった!」
うん……まあ、彼はろくな目にあっていないんですよね。
ドラマのディテールは創作にしても、史実でも義時は頼朝挙兵以来ろくな目に合わないから困ったものだ。
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そして祐清はこうですよ。
「妹にどう話せばいいのだ?」
宗時は「しょうがない、ここは切り替えて先に進もう! 佐殿の心を見誤った!」と言い出す。こんなポジティブはかえって迷惑だ。
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納得できない比企能員は、母上に謝れと言ってくるわ。そして宗時は投げてくる。
「小四郎、頼む!」
「ここは兄上でしょう!」
しかし宗時は相談があるとかなんとか、その場を立ち去るのでした。
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