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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第20回「帰ってきた義経」】
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善児と共に平泉へ
義時が出発しようとすると、善児がひょいとお供として現れました。なんでも梶原景時がつけてくれたのだとか。
「何かと役に立ちますよ。さあ参りましょう」
そうして出立となりますが、義時が高い完成度で仕上がりつつあることがわかります。
義時の耳には、畠山重忠が告げたことが入っています。
善児は兄・宗時の遺品を持っていた。彼が殺したことは断定できないけれど、兄の死に関与したことはわかる。
義時が仇討ちをしたいのであれば、善児を簀巻きにして川にでも放り込めばいい。
しかし、そうはならない。
仇討ちよりも善児を使うことを選んだのかもしれません。
不要になったら兄の仇ということで殺す大義名分はある。
実にうまい使い方のできる人材じゃないか……そう計算が働いたのだとしたら、なんとも悪どい人物になりました。
そして義時が平泉に入ることで、早くも動揺が広がりつつあります。
義経は鎌倉殿に楯突いた大罪人であり、匿えば同罪になる――と義時がそう告げただけで、奥州藤原氏の兄弟にヒビが入るのです。
動揺する泰衡に、力づくで奪えと意気軒昂な国衡。
「兄上は黙っていていただきたい」
「わしはもう兄ではない! 父であるぞ」
「父などとと思ったことはない!」
まさに一触即発。義時という来客がいる前でもお構いなし。さほどに兄弟仲は悪化しているのでしょう。
しかし当主の泰衡にしても、もう義経は歯向かう気持ちなどないと言っており、義時も困ります。義経は危険人物のままでいてもらわねば、奥州藤原氏の兄弟仲を裂き難くなる。
敵は平家ではなくコオロギ
義経は農作業をしていました。
北条義時が声をかけると、懐かしそうに「おお、小四郎」と出迎える。
義経は屈託なく、コオロギのことを話します。
よい声で鳴くけれども、畑を食い荒らす。本来なら夏の終わりに虫送りと言って、松明を持って皆で練り歩くのだとか。
しかし義経は神頼みは嫌い。
コオロギは煙が嫌いだから、燻り出すと笑い飛ばします。
「平家を滅ぼした私が、今はコオロギ相手に戦っている! はははは!」
笑い飛ばす義経が、どこか自虐的なようで、さて実際はどうでしょうか。
義経は殺戮だけでなく農作業にも向いていると示しました。アイデアのある面白い人物として、生きていくことはできるのです。
そこへ義経の幼い娘と、妻の里が来ます。
義時の顔に苦いものが走ります。確かに義経を殺す方がよいけれど、その横には子供がいる。幼い子を持つ父を殺すことに、心が軋んでしまうのでしょう。小栗旬さんの表情が光ります。
義時は暗い声で義経に迫る。
「あれほど奥州には行くなと申したではないですか!」
義経を責めるようで、相手を殺す大義名分を探しているようにも思える。
俺は悪くない……止めただろ……なのに奥州なんかに向かった相手が悪いんだ。そうだ、俺は悪くない。そう悲鳴をあげているようにも思えるのです。
義経は飄々と返答します。
「私はもう戦をするつもりはない。案ずるな。ただし……平泉に手を出してみろ。決して許さない。そのときは鎌倉が灰になるまで戦ってみせる。帰って兄上にそう伝えろ」
はい、義経の覚悟です。そして義時にとっては言質です。
義経はやはり、鎌倉を灰にしかねない危険人物だと判明すれば、己の罪悪感も少しは和らぐ。よい言葉をもらえましたね。
静御前はどうなったか?
義時はこのあと、善児にこう聞いています。
「もとは百姓だったな」
「へえ」
そして義経が仕事をしたふりをしているのではないかと探りを入れるのですが……善児は爪の間に泥がへばりついていると返す。百姓の手だと。
そしてこう続けます。
「やっちまいましょうか。寝首をかくのは造作もないことだ」
「余計なことはするな!」
とっさに声を荒げる義時。下手に暗殺なんてしたら、かえってうまく動かなくなる。
どうせ死んでもらうからには、義経の流す血を、天下草創のために味わい尽くさねばなりません。
義時は何気なく、義経に語りかけます。
「静さんのことは残念でした」
「静がどうした」
「ご存知ないのですか? ならば忘れてください」
「いいから話せ」
義経に促され、静のことを語る義時。
彼女は吉野から鎌倉に向かおうとしているところ、北条時政の手勢に捕まった。そして三善康信が彼女の正体を見破った。
京でも指折りの白拍子が私のはずはない――そうシラを切ろうとするものの、康信は清水寺での舞の奉納を見ているのです。
それでも静は否定し、義経は雲の上の人だといいます。
しかし、観察眼の鋭いりく(牧の方)が静の妊娠を見抜いていて、義時にそう伝えました。
お腹が張るから座り方でわかる。どうしても後ろに傾くのだとか。父が義経ならば、名乗らない。
かくして理由が繋がったのです。
このドラマは三谷さんが丁寧にわかりやすく、推理の仕方を説明しています。
三谷さんは脚本の仕上がりが遅れるとご自身も認めておりますが、こういう細かいところまでピースをはめようとして、試行錯誤をギリギリまで繰り返し、完璧に完璧を重ねたいから、遅れるのではないでしょうか。
実際、今週もよい仕上がりですよね。
「私は静です!」
静かの懐妊を聞いた頼朝は、しばらく鎌倉に置くことにします。
もしも生まれてきた子が男ならば由比ヶ浜に沈める。生かしておくわけにはいかんと断言するのです。
これを受け、政子は静に訴えかけます。
お腹の子のためにも、鎌倉を出ていけ。ここにいると災いが降りかかると妹の実衣も続きます。
それでも静は、自分は静ではないと頑固に言い張る。
「こんな女を守ってやることはありません」
憎々しげなのは道。
義経には奥方がいる。里といい我が比企の一族である。静は、側女だ、捨てられたのだと貶めています。
里は正確には河越重頼が父という出自ですが、ドラマでは比企尼の外孫であることが強調されています。
頼朝を救い育てた乳母・比企尼~なぜ比企一族が悲惨な最期を迎えねばならんのか
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あまりの物言いに政子が抗議すると、今度は静がキッパリ。
「私は静です! お腹にいるのは間違いない、九郎義経の子! うちは静御前でございます。信じていただけないのなら、証をご覧に入れましょう」
そして生まれた子が殺されたら私も死ぬと静が言い放つと、義時はそれで義経が喜ぶのかと反論します。
大姫もこう訴えます。
「なんとかしてあげて……もう人が死ぬのは見たくない」
こうなったら、わざと下手に舞い、静御前を騙った偽物だったとするしかないと義時がフォロー。
同時に、武芸だけでなく音曲を嗜んでいる坂東武者を集めました。
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