鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第29回「ままならぬ玉」

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「信じていないけど信じたい」

頼家が、生まれたばかりの善哉をあやしています。

そんな頼家のことが寂しいと、比奈に訴えるせつ。

善哉が生まれたばかりだから仕方ないと比奈がいうと、ずいぶん他人行儀だとムッとしています。もう比企のものでないからか?と問われ、にっこりと微笑む比奈。

一人の女性として夫に愛されている証拠でしょう。

そんな態度に刺激されたのか、せつは本心をこぼします。

比企だの北条だのって、皆、家のことばかり。私は誰が後継ぎかなんてどうでもいい。鎌倉殿に自分の方を向いて欲しい。

そう訴え、どうすればわかってもらえるのかと嘆いています。

「私によい考えがあります」

かくして、北条と比企を結ぶ比奈の働きかけにより、せつは姑である北条政子と話すことになりました。

政子も開口一番、アナタと話してみたかったと言います。

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政子は自分の考えを言います。

源頼朝は幼い頃から苦労してきて、生涯、人を信じることがなかった。おそらく頼家もそうだろう。

そんな鎌倉殿にどうすべきか?

政子はいっそ思っていることをぶつけてはどうか?と言います。

信じていない人にぶつける?

せつが疑問を呈すると、政子がこう答えます。

「信じていないけど信じたい。私にはそう思えます」

「私にできるでしょうか?」

「あなたにしかできないこと」

政子はそうせつを励ます。彼女なりに我が子のことを理解しているのでしょう。

信じられるものがいないから荒んでいるのだと。

 

証文ビリビリの徳政令

伊豆では、北条頼時が民と向き合っています。

どうやら借りた米を返すことができない民と、返して欲しい民で、大いに揉めている。

米を返さないのはよくない。

頼時はそう言いますが、困窮した民は返したくても返す米がないと嘆きます。迫真の演技です。

証文はある。一体どうすればいいのか。

困惑する頼期は真面目な性格ゆえ、何があろうと約束は守るべきと思うけれど、返しようが無いことも痛いほどわかる。

鶴丸に相談しながら、耐えきれなくなったのか、最終的に「うわぁああああああ!」とパンクしたかのように、証文を破り捨ててしまいます。

もう米の貸し借りは忘れていい! ただ、他の土地には逃げないでくれ。

そう念押ししつ、貸した側には鎌倉から米を届けさせ、さらには、一人につき米一斗を与えるとのことです。

「ありがとうごぜぇます!」

民は大喜び。

頼時はやってのけました、見事です。

こういう貸し借りの帳消しが後の「徳政令」につながってゆくのでしょう。

民は、耕作による定期的な収入を確保しておくのがよいですが、こういう緊急時には援助が効果的です。そのことを彼は学びつつある。

しかし、徳政令だけでは足りませんね。

経済そのものの底上げをして、銭を流通させることが飢饉での犠牲者を減らすのに役立つ。

このさき泰時がそのことをどう考えていくのかも見守りたいですね。

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伊豆から戻った頼時は「大層な評判だ」として頼家に褒められます。

ただ、それは本意ではありません。証文を破ったせいでこの先百姓がないがしろにすると嫌味を言う。

義時が「幸い今の所はそうなっていない」と返すと、頼家が褒美を取らせると続けます。

こんなギスギスした雰囲気で褒美とは何だろう?

と思いきや、これを機に改名を迫ってきました。

「頼時」ではなく、これからは天下泰平から一文字とって「“泰”時にせよ」とのことです。

義時が如才なく「ありがたき幸せ」と頭を下げる一方、泰時は、頼朝につけてもらった名だとムッとしています。

頼家はそれはもうよいから、父の元で励めと言います。頼家は頼朝唯一の子になりたい。だからこそ余計に孤独になるのでしょう。

ちなみに泰時の“泰”はどこからきたのか。

八重の兄には、曽我兄弟の父である河津祐泰がいます。この伯父からだと仮定すれば、彼の母が八重であることを補強します。

本作時代考証である坂本孝一先生の見解ですね。

 

夫が人形を作っている……

頼時改め泰時は、帰宅後、父に納得できないと食ってかかります。

「もう忘れろ」

あっさりそう返す義時。そこにはキノコがどっさりと置いてありました。なんでも初に突き返された泰時の土産だとか。

「えっ!」

驚いている義時。八重とのことを忘れていたんですか……。泰時は踏んだり蹴ったりだと嘆いています。

初は八重より容赦がありませんね。

いくら相手がどんなに苦労して採取しようと、自分の気持ちに沿わないものは即座に返します。

「よいか、おなごはティファニーのオープンハートに弱いのだ」

そう父に言われ、子が買う。そして相手に贈ったものがメルカリに出品される――現代に置き換えると、切ないものがあります。初は今なら気に入らないプレゼントを平然と売りそうです。

合理的なんですね。どんなものでも自分の趣味に合わないなら不要、すなわち無価値。欲しいものぐらい事前にスマートに調べておけ、ということでしょう。

彼女には、なまじ義村という父がいます。

彼はゲーム感覚で娘の欲しいものを推理し、欲しいと言われる前にあげてその反応を見て、ニヤリとするような性格です。

初はかなりきつい性格だ。これは重要です。

それに、たとえ性格がどうであれ、三浦と北条の家の格が釣り合えばこそ、こんな対等な恋愛になることも忘れてはいけませんね。

両者に大きな差があったら、本音でぶつかり合えません。相手の愛情に依存して、機嫌を損ねてはいけないと忖度ばかりするとなると、そこに生きた愛情はない。

そのことを体現しているのが頼家でしょう。

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阿野全成が呪詛の人形を作っています。

そこへ実衣が入ってきて覗いてしまい、即座に追い出されてしまいます。

そのことを義時に話す実衣。

小娘じゃないんだから、人形を作られても喜ばないと愚痴をこぼしています。

それに実衣は、本気で鎌倉殿になって欲しいなんて思っていないとも言い出す。源氏の血を引いているんだから、少しは気概を持ったらどうかと思っただけだと。

「しかし、その気にならかったから今があるんじゃないか?」

「そうなんですけどね」

義時は理解しています。

仮に、少しでも鎌倉殿へ手を伸ばす素振りが見えたら、即座に粛清されていたでしょう。本意でなかったにせよ、義経と範頼がそうだったように……。

実衣の気まぐれな野心は消えてしまったようです。

姉の政子に対して燃やした敵愾心は、琵琶で消化できてしまったようにも思えます。

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しかし義時は妹から聞いた呪詛の話を、そのまま放置はできません。

すぐさま時政とりくに迫りました。

朝夕に呪文を唱え、人形を作る――そんなもの呪詛ではないか。

そう問われ、時政はシラをきります。

「誰に? バカを言え、鎌倉殿はわしの孫だぞ」

思わず本音を吐露してしまう時政の袖をりくが握ります。うっかりターゲットを漏らしてんじゃないぞ!と。

むろん義時にはバレバレ。

「余計なことはもうやめていただきたい!!」

強い口調で釘を刺します。

比企と争う時は終わった!と義時が続けると、そんなことは比企に言えと怒って立ち去るのでした。

 

時連とせつの言葉に動かされる頼家

鎌倉で3名の僧侶が捕獲されました。

西国から流れてきて、「念仏さえ唱えれば助かる」と民に説いている不埒者だとか。

即座に斬り捨てるよう命じる頼家。

すると北条時連が前に出て、民が念仏僧をありがたがるのは生活苦ゆえだと庇います。

「お前までわしを邪魔立てするのか。お前は所詮、北条の手先だ!」

不信感をあらわにする頼家に、時連は鎌倉殿を案じていると返します。

頼家はこの「鎌倉殿のため」という言い方がただの弁解にしか思えない。この言葉を錦の御旗にして、好き勝手、自分に有利な方向へ持っていこうとしている、そんな不信感にしかならないようです。

それでも時連は引きません。

僧を斬れば災いがある、自分の子供がどうなってもよいのか?となおも食い下がります。

「その忌まわしい衣をむしりとり、鎌倉から放りだせ!」

かくして死罪を減じる頼家です。時連は諌めるだけでなく理解を示すことで、主君を正しい道に誘導できました。

そこへ、せつがやってきます。

善哉のところに行くのだろうけど、たまにはきて欲しいと訴えるせつ。しかし頼家は彼女をぞんざいに扱い、せつの背後にいる比企が煩わしいと吐き捨てます。

せつは食い下がり、嫡男は善哉でいいから、私はあなたの側にいたい、一幡と共に側に置いて欲しいと訴えます。比企は関係ないのだと。

疑う頼家に、人を信じねば一人になると訴え、鎌倉殿を支えたいと訴えるせつ。

この言葉に頼家は何かを感じ取ったようです。

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