麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第8回 感想あらすじ視聴率「同盟のゆくえ」

天文17年(1548年)、尾張の海――。

漁船に乗った若者が上機嫌そうな表情でやって来ます。

菊丸が告げました。

「あれが織田信長様です」

漁船から上機嫌そうに登場した織田信長。

視聴者困惑の声が聞こえてきそうですが、私は最高だと思います。

魚が釣れたぞ! 大漁だ! わぁい! 大きな一匹を担いでとっても楽しそうだぞ!

民を従え、わくわく魚釣り! いいね、信長くん、トモダチは魔法だね!

 


奇妙な男との出会い

明智光秀は戸惑っております。

「織田信長……」

はい、ここでうつけチェックタイム。信秀の気分でどうぞ。

信長うつけチェック

「危険だろうが!」

信長……そなたは身分ある立場ぞ。かどわかし、謀殺をされたらいかがする! そなた一人の問題だと思うか? 護衛、何よりも平手政秀が腹を切るぞ。そういう空気を読めぬのか、このうつけがぁ!

→信長くんは、きっと自分の行動が周囲にどんな影響をあたえるのか、あまり考えずに行動しちゃうんですね。

先回りして対処するか。遠巻きに護衛でもするしかないですね。

彼自身を変えるのは難しいので、周囲が対処を覚えた方が早そうです。

そして、信長くん。魚を自分で捌きます。楽しそうだな!

当時、中学生くらいですので、そこは見守りましょう。

※編集部注 ドラマの舞台は1548年で史実の信長は天文3年(1534年)5月28日生誕説

織田信長
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「一切れ一文(=150円)じゃ! 市に持って行けば、高く売れるぞ、はっはっは!」

「いつもありがとね!」

現代のアメリカでは、子どもが自作レモネードやクッキーを売る風習がありますね。

幼くして、そうやって経済の仕組みを学びます。信長くんは、お小遣いがたまってうれしそうです。

いい子だな……いや、これ、戦国時代の尾張だから!

「お前はいらぬのか?」

信長くんは、見慣れぬ顔の光秀に興味を抱いたようです。光秀が唖然として瞬きをしていると、露骨につまらなそうな顔になっています。ノリ悪いな〜。そういう顔です。

信長うつけチェック

「露骨に顔に出すなあ!」

信長……しょうもない不機嫌さを顔に出すな! 感じが悪いぞ、周囲が不安になるだろ! まぁ、相手もなんだか割と露骨に顔に何か出ちゃってるけどな。

→信長くんは、きっと自分の言動が周囲にどんな影響をあたえるのか、深く考えずに行動しちゃうんですね。光秀くんにも、ちょっとそういうところがあるかな? 仲良くなれるといいですね。トモダチは魔法だよ!

信長は片付けをして、刀を持って帰るようです。一応、武器は持参して、対処は考えている様子。

魚を売る信長も、豪快を通り越してうつけでして。脚をガバッと開いて無頓着に座っていて、リラックスしていると思えます。毎朝来ているらしく、爽やかなスケジュールに組み込まれているのでしょう。

「信長すごーい。民の心を学んでる……」

いや、そんなに情に篤いかどうかわかりません。純粋に魚でお小遣いを稼いで、なんか楽しいだけかもしれない。

朝一番で魚を撮って、それでお小遣いを稼いで、市場でなんか美味しいものを食べる! そうしないと一日が始まらないもん! そういう気持ちかな?

確かにこれは誰も見たことがない信長です。

視聴者の9割が最低5回は絶望する信長像になりそうですが、応援して見守りたい。

「織田信長……奇妙な男じゃ……」

光秀のつぶやきに、視聴者も納得しかないと思います。

初登場が凛々しい、鳥肌ものだのなんだの、そういうニュースがありましたが。

凛々しい? それは先入観ではありませんか? こんなレモネードスタンドに立つアメリカ人少年じみた信長くんを、本気でそう思えますか?

まだまだこの信長の人生は、始まったばかりだ!

で、かわいいとか言われているこの信長ですが。似たような奴を見つけてきたんですよ。ね、かわいいんでしょ?

※かわいい!

でも……かわいいと思っていると殺されかねないわけです。やはり、そこはだいたい信長と同じですね。

 


帰蝶に【乙女心】はあるのか?

ここで、明智荘での帰蝶と駒に移りまして。

はい、この二人。いろいろ言われてはおります。

・帰蝶は硬くて色気不足

・駒は要らない……

さて、どうでしょうか。ここで二人が並んで話すことにより、対比の意味がハッキリとして来ます。

身分だけの話ではない。心を見てみましょう。

駒:普通の女の子

帰蝶:普通じゃない女の子

帰蝶については、

「凛とした女心だね!」
「乙女だわ〜」

とは言われます。ゲームやフィクションでの彼女は、セクシーな造型が多い。けれども、ここで先入観を捨てましょう。

かつて、男は火星人(マーズ、戦争の神)、女は金星人(ビーナス、美の女神)だなんてベストセラーがありました。21世紀現在、否定されております。その意は後述するとして、帰蝶の幼い頃の話が始まります。

帰蝶の思い出「私が泣いたこと」

私も幼い頃はよう泣いた。
泣かぬと思うであろう?

あれは6つか、7つのこと……。

母上に、蜜漬け栗をもろうた。一つは母上。もう一つはお気に入りのものにやれと仰せられて、なかよしであった十兵衛にやろうと思うて、大事に自分の手文庫に入れておいた。それを兄上が見つけて、ぺろりと食べてしもうた。

口惜しうて、口惜しうて、声を上げて泣いた。

次の日、十兵衛が城に来たゆえ、十兵衛が来るのが遅いと泣きながら叱りつけた。その時の十兵衛の困った顔を、今でも覚えておる。昔の話じゃ……。

駒はそれを聞いて、今でも十兵衛様がお好きなのかと感極まった顔ではあります。おそらく視聴者もそうでしょう。ここで駒は「そなたはどうじゃ」と聞かれて「困りました」と答えます。

帰蝶は即答します。困ることはないと。

ここから帰蝶の超展開だ。

「十兵衛は今、尾張じゃ。尾張に行き、この帰蝶が嫁に行くかもしれない相手を調べておる。相手の良し悪しなどわかるわけがない。そうは思わぬか? 嫁に行かせたくないのなら、調べには行かぬ。そう思わぬか? それゆえ、そなたが困ることは何もない」

どういうふっきり方だ、おい!

駒としては、女子トークをしたいとは思います。お互い十兵衛様が好きな女同士、何かいろいろ語りたい。

本作のハッシュタグつき投稿も花盛りでしょう。艶、演技、色気、おいで砲。毎週毎週花盛りだ。

ところが、帰蝶はそういうトークを全然必要としていない。

そもそも、その泣いた話だって、誤誘導されてませんか?

帰蝶の思い出「私が泣いたこと」(ツッコミ入り)

私も幼い頃はよう泣いた。
(でも、泣き虫十兵衛ほどではない?)

泣かぬと思うであろう?
(自分の強さを理解してる!)

あれは6つか、7つのこと……。母上に、蜜漬け栗をもろうた。一つは母上。もう一つはお気に入りのものにやれと仰せられて、なかよしであった十兵衛にやろうと思うて、大事に自分の手文庫に入れておいた。それを兄上が見つけて、ぺろりと食べてしもうた。

口惜しうて、口惜しうて、声を上げて泣いた。
(十兵衛への恋心ゆえだという見方が一般的でしょうし実際それもあるけど、予定変更に動揺していた可能性もあるのでは?)

次の日、十兵衛が城に来たゆえ、十兵衛が来るのが遅いと泣きながら叱りつけた。
(十兵衛は何も悪くないんだよ! 責任転嫁するなよ!)

その時の十兵衛の困った顔を、今でも覚えておる。昔の話じゃ……。
(実際、十兵衛は困っているんだよ!)

めんどくせえ。帰蝶、めんどくさいぞ!

帰蝶は、自分の中で「十兵衛はもうどうせ結婚できないし、踏ん切りつけばいっか!」とバッサリ納得して、切り替えに突入しております。実はそこまでダメージを受けてもいないとみた。

そんな乙女心いやだ!
という気持ちもわかりますが、結局、蝮(斎藤道三)の娘なんですよ。

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利政と帰蝶に似たタイプの父娘として『キック・アス』のビッグダディとヒットガールがおります。

娘のプレゼント希望を父が聞いて、娘がかわいい子犬と答えると、父は動揺する。娘は笑って、バタフライナイフだと言い切る。そこで父はやっと納得します。

※やったぁ、お父さん大好き!

そういうぶっとんだ性格だと理解した上で、尋ねてみたいことがある。

あなたは、帰蝶と結婚したいですか?

あなたは、帰蝶とお友達になれますか?

帰蝶は、金星からやって来た、ビーナスの女の子ではない。ですから帰蝶がサバサバして見えるのであれば、役の理解として正解ではないでしょうか。川口春奈さんは正解を演じている。

駒が無意味に見えるって?
彼女は金星の女の子です。帰蝶と比べると、両者の個性がわかりやすくなるのです。

 


牧が説く【婦徳】

木助は、牧に光秀の帰宅を告げます。しかし、いつもと様子が違い、光秀は外で考え込んでいるのです。そこへ牧が見に来ます。

「十兵衛、何を迷うておるのじゃ」

「帰蝶様のお相手を見て来ました。浜辺で獲って来た魚を切って、一切れ一文で売っていました。あの男に嫁ぎなされては……しかし、この国のことを思うと……」

光秀は誠実かつ素直なので、あんなよくわからないビーチエンジョイ信長でよいのかと悩んでおります。

ここで注意したいこと!
光秀は帰蝶の恋心に気づいていないし、信長に嫉妬心なんてちっともない。

この光秀は、鈍感だの、女心に鈍いだの言われております。しかし、その何が悪いのか。これは朝ドラレビューでも突っ込みましたが、なぜ誰も彼もが“モテモテ前提”で生きていると思うのだろうか。ここは指摘したい。

好きだと思いを寄せられても、困惑するタイプの人間もおりますよね。漫画やゲームで学んだのか。そうではない人にまで押し付け「隠キャ」とか「普通じゃない」といった類のディスりを入れるのは余計なお世話というものでしょう。

話を牧に戻します。彼女は、ここで儒教道徳的な【婦徳】を語ります。

「そなたの父上が亡くなられたとき、人はよい人でも、いくら添い遂げたくとも、一緒に消えてしまうのはできぬことじゃとつくづく思った。生き残り、子を育て、見守っていかねばならぬと。人は消えても、あの山や畑は変わらずそこにある。そのことが大事なことじゃと。変わらずあるものを守っていくのが、残された者の力かもしれぬと。十兵衛、大事なのはこの国ぞ」

これは儒教という東洋的なもののようで、普遍的なものだとは思います。当時のどこの貴婦人だろうと、そういう気持ちはあるはずなのです。

出来の悪い大河ドラマでは、政略結婚を敵視したものです。歴史的に見ると、領主階級でありながら恋愛結婚をするとひどい目に遭うものです。

一例として、時代的に近いイングランドのエドワード4世とエリザベス・ウッドヴィル。

政略結婚を無視して結婚した結果、ヨーク朝が滅びる一因となったとされています。

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シェイクスピア、菅野文氏『薔薇王の葬列』でもどうぞ。

※BBC『ホロウ・クラウン』

『ゲーム・オブ・スローンズ』のロブ・スタークの破滅も、この結婚がモデルとされております。

※あまりに苦いその結末……(閲覧注意)

日本独自かどうかだけではなく、もっと広い目で捉えてみることが大切ではないでしょうか。

地球儀を回すような気分で、人間が普遍的に持つ観念がどう変貌していったか? そこを意識すると、このドラマはもっと楽しくなるはずです!

人間は、感情よりも秩序が大事なこともたくさんあるものです。

 

乙女ゲーと少女漫画は忘れてください

覚悟を決めて十兵衛は明智荘に戻ります。そして帰蝶の前に来ます。

「十兵衛でございます」

「入れ」

光秀は入り、丁寧に頭を下げます。

「尾張に行って参りました」

「尾張はよい所か?」

「……海が美しい所でございました」

「海か。美濃には海がない。行って見てみるか。十兵衛の口から聞きたい。行ってみるべしと」

「行かれるがよろしいかと」

「申したな……この帰蝶に……」

「尾張へお行きなされませ!」

「十兵衛が申すのじゃ。是非もなかろう」

馬に乗り、城へ帰る帰蝶です。ここで十兵衛は書物を片付ける。見送りすらしない。

はい、ツッコミどころ満載ですよね。

最大のものは……「信長のチェックをするんじゃなかったの?」でありましょう。

けれども、帰蝶本人も断言していた。

よい人かどうかなんで、判別できないってさ。

思い出しましたよ。『アナと雪の女王』のエルサです。妹のアナが、ハンス王子と結婚したいと言い出すと、そんなもん会ってすぐわかるわけがないと突き放しました。

※エルサが正しかった

最近のディズニーは、かつての自作に突っ込んできている。

王子様とお姫様が出会って一目惚れ?
ないない、わかるわけない。

そういうリアリズムに本作も突っ込んできた。

じゃあなんで帰蝶は見に行かせたのか? 混乱しますよね?

彼女なりに踏ん切りをつけたかった。行ったことで、もう縁は終わった。利政同様、理詰めで説得しろと言いたかったのでしょう。

素直に行くのであれば、こういう流れでよいでしょうね。

光秀、信長を見る「すごいオーラ! 意気投合! プッシュしなくちゃ!

帰蝶「はぁ……光秀好きぃ……」

光秀「信長を確かめました! 嫁がれるとよいです(ドヤァ……)

帰蝶「寂しいけれど、そういうなら嫁ぐ。だからハグとキスして!』

視聴者「きゃ〜胸ドキドキキュンキュン!」

そういうのは乙女ゲーか少女漫画だけでいい。それに、本気でそれをやると、2015年のアレになる。それでいいんですか……!

もう一度確認しますが、むしろ本作の光秀は、色気から程遠い人物ですよね。

それの何が悪いのか?そこが光秀の素敵なところであり、魅力であり、不幸の源泉なのです。

 


蝮のハイテンションタイム

はい、ここでハイテンションになっているのが斎藤利政(斎藤道三)です。

「でかした十兵衛ぇ!」

ほんとうに本木雅弘さんてば、素晴らしいですね。別の番組で見た時、むしろ穏やかでゆったりと喋っていて、驚きましたよ。

でも蝮だと、腹の底からハイテンションな声も出せる。

蝮は元気いっぱいです。ちゅーるを見つけた猫のようにキラキラしてる。

「十兵衛、帰蝶が嫁に行くと申したか! あの帰蝶が! でかした、ようやった!」

斎藤利政は、感情をセーブする。

それだけにいったん溢れてしまうとテンションがハイパーになって、叫んだり場合によってはスキップしそうなくらいはしゃいでしまうのでしょう。

真田丸』の真田昌幸は、むっつり黙っていたのにいきなり立ち上がって「チクショー!」と叫んでいました。いきなりハイテンションになるんです、こいつらは。

※シャウト昌幸

そしてここで、ちょっとしたポイントですけれども。

叔父上こと明智光安

彼は普通の反応です。

「帰蝶様がわしの所へ参り、伯父上、帰蝶は嫁に参りますと頬を染めて申したのです」

光安は嘘をついているのでしょう。あの帰蝶が頬を染めつつ、そんなかわいいことを言う性格じゃない。もし、実際にやっていたとしたら演技でしょう。あるいは光安の脳内補正か。先入観か。

若い女の子が結婚の話ともなれば、頬を赤くするというバイアスがある。

このバイアスは、光安ではなく視聴者もあることは踏まえたほうがよさそうです。

『真田丸』といえば、長澤まさみさが演じた“きり”のことを覚えていらっしゃいますか。

「現代人のよう」

「ガサツでうざい」

さんざんそう叩かれました。
あえてそうするよう脚本演出がそうなっておりましたが、現代人目線を持たせるためにそうしたのか? ここも大事で……。
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