麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第21回 感想あらすじ視聴率「決戦!桶狭間」

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兵法の基礎である兵数算定

さて、ここで名前が出てくる斎藤道三ですが。

この展開の伏線はありました。

光秀と義龍とのやりとりであった、数珠の数あて問答です。兵法の基礎である兵数算定の話でした。

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義龍、義元、信秀らは、素直なタイプ。

相手が大軍であると知れば、それだけで困惑し、戦意を喪失します。逆に自分の兵数が多いと、油断してしまうこともある。

道三、信長、元康は疑ってかかるタイプ。

ですので、数字がこうだと言われても、疑念を抱き実数の洗い出しに取り掛かる。

三国志』の【赤壁の戦い】がこの手の好例です。

曹操が大幅にふかした軍勢数を知っただけで、降伏すべきだと言い切る家臣たちの中、周瑜は大袈裟だと見抜き抗戦を訴えたのです。

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兵数や人口、犠牲者数とは、実際には正確なものはわかりにくいのです。

比率、発掘されたものの状態、そして年表を作っていくと明らかに変化が見えてくるとか。そういう諸要素を組み合わせないと、見えてこないことがあります。

「大幅に人口が減ったって? 多数の犠牲者がいた? 統計が雑なだけじゃないの? 嘘でしょ?」というようなことを言う人はいます。

歴史にせよ、兵法にせよ、数字なり統計は大事です。ただ、それだけでは見えてこないこともあります。

 


人間は、本質以外のものを飾ろうとする

【兵数を盛る】というテクニックは、現代人でもできます。

一例として学歴詐称。

頑張っている人が過去にそんなことしようと、どうでもいいって?

その見方は危うい気がします。

これだけ学歴が幅をきかせている社会ですと、やはり有害になりえます。それに、そういう人は何らかの弱点や欠陥があったりするのです。不誠実であるとか、己を騙しているとか。

だいたい、なぜそんなに学歴を書くんですかね?

学歴以外に誇れる現在があるなら、そんなもん、ただの「お守り札」ではありませんか?

人間は、本質以外のものを飾ろうとする。華麗な経歴を誇ることもそのひとつ。義元は兵力を盛り、足利一門の特権である輿での移動を選びました。

斎藤道三は、土岐頼芸を「お守り札」と追い出した。そして己の血を飾る義龍を罵倒した。

織田信長は、神に頼る者を馬鹿にする。将軍だろうと不満を抱く。

外面を飾らず、自分の力で突き進み、切り開くこと。これだけで、十分革新的だと本作は突きつけてきます。

今週の信長のしていることは、実は兵法の基礎をふまえたことなのです。

それでも斬新なのは、自らをさらけだし、突き進むからこそ。

で、この脚本を書いているのが、ベテランの池端俊策氏というところです。そしてこれは大河ドラマです。

伝統がある。それだけでネームバリューはある。時代劇最高峰だと認識されている。

どうやら大河は、今までのことを「お守り札」だと割り切って、捨て去るように見えてきます。

これぞ原点回帰。斬新で、映画に負けない時代劇を作ること。それが大河の原点でした。そこまで本作は戻ってきた!

 


子の無い正室に子を任せることの意味は

ここで信長は、帰蝶に会わせたい者がいると案内していきます。

幼い男児でした。

名は奇妙丸。のちの信忠です。

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「わしの子じゃ」とあっさり説明する信長。吉乃という女が産んでくれて、今日何があるかわからぬから、呼び寄せておいたと言うのです。

そのうえで、申し訳なさそうにあとじさります。

「すまぬ。黙っていたことは謝る。ただ、わしたちには子がおらぬ。織田家を継ぐ者がおらぬ。それを皆が案じておった。わしが死んだら、あの子を育ててくれ。そなたに預ける。わしはこの十年、そなたをたよりに思うてきた。今もそうじゃ。尾張の行く末をそなたに任せる」

帰蝶は呆然として、「殿……」と言います。

「許せ!」

「殿!」

むしろ、帰蝶は感動しているようにすら思えるのです。ここまで、大河も到達したか!

近年の大河って、側室がいない主人公が多い。

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これがわけわかりません。直江兼続は婿のうえに、相手は格上の家柄です。そうホイホイ側室を持てない立場だということは考えられます。

同性愛傾向があるとか、性愛に興味関心が薄いとか、めんどくさいだけとか。いろいろそこには理由があるのでしょうけれども。

どうにも、愛だとか、妻が嫉妬深いからとか、そういうワイドショー的なところに落ち着きますよね。

戦国ものでは側室を避けるくせに、モテモテで愛人作りに定評のある長州藩士の育て方をぶちかましたり、西郷隆盛の現地妻をクローズアップしたり。

最近の幕末大河は何がしたいのかサッパリわからないものがあった。それがきっちり修正されてきた感はあります。

帰蝶だろうが、実子がいればまた違うのでしょうけれども。

別の女性が産んだ子を、正室に養育させることは妻への最大限の敬愛。

源氏物語』の紫の上がそうです。

それをかわいそうだと思ってしまうのは、無責任であり、人の上に立つものの立場でもない。

実はそれを破るのが豊臣秀吉なんですね。

産んだのが淀の方だろうが、北政所に預けてしまえばよいものです。

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それを生母である淀が授乳するような、いわば普通の育児させてしまった。

それは北政所のプライドを破壊する侮辱でもあるのです。北政所と淀の方の対立は、後世、誇張されてはいます。ただ、その動機として納得できるだけの不均衡があったということです。

一方で、家康は怖いほどそこを踏まえていると言いますか。

秀吉は、美貌の女性を集めたがる好色さが強調されます。実際に美人であったかどうかというよりも、身分の高い女性への憧れのようなものを感じるところではあります。

【美女・身分が高い=妊娠しやすい】わけでもないのに、性欲というより、高貴な女を屈服させる征服欲を感じるといえばそう。

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その反面、家康は出産経験のある女性を側に置くことが多い。これは野生動物でも見られる話なのですが、ピチピチの若い相手よりも、出産経験があり、確実に子孫を残せる相手を選ぶ。

サラリと当時の価値観をぶまえ、三英傑の閨房周辺もにおわせるから、本作はすごいものがあります。気が抜けない!

 

帰蝶と面会する光秀 すでに信長はおらず

午前8時――。

丸根砦と鷲津砦陥落。今川勢の勝利でした。元康がこう叫んでいます。

「エイエイオー! エイエイオー!」

腹の底から声が出ていて、よいですね。

この元康のどこが青臭いのか? そう突っ込みたくなるほど、どっしりしている。本作の出演者は発声がクリアです。太い声は、太く出すからたまらない。

午前9時――。

信長は、丸根砦と岩出砦が敗れたことを睨みながら、善照寺砦へ。それにしてもタフですね。砦二つの陥落を見ても挫けません。

同じ頃、義元は沓掛城を脱出し、大高城を目指していました。

そして午前9時半――清須城に光秀が到着し、帰蝶の元へ来ました。

出迎えるのは奇妙丸を抱いた帰蝶。

「帰蝶様、おひさしゅうございます。左馬助よりこちらのご様子を聞き、いてもたってもおられぬゆえ駆けつけました。ご無礼の段、お許しくだされ」

「十兵衛、よう参った。だが来るのが遅い。会うていろいろ知恵を借りようと思うていたが、殿はもはや出陣された……もはや打つ手はない」

光秀は呆然とします。

はい、光秀はそういうもの。そして奇妙丸を気にしています。

帰蝶は、「天から降ってきた大事な預かり物じゃ」と説明するのです。

そして光秀が信長の動向を問いかけると、善照寺砦だと言うのです。そこで信長を討つと。

兵数は不明。光秀はいてもたってもいられぬ様子で出立します。

「どこへ行く!」

「お役に立てるかどうかわかりませぬが、善照寺砦へ!」

帰蝶は口を尖らせてしまいます。せめてもの話相手にもならない、そんな光秀ですもんね。やはりこの二人の恋愛感情を本作は薄めに描いていると思えます。義龍の光秀執着の方が強烈だった……。

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光秀は信長が気になって仕方ありません。

脳裏には斎藤道三の言葉が響きます。

「あの男から目を離すな。信長なら、そなたはやれるやもしれぬ」

こうして二騎は駆け抜けてゆきます。

それにしても、光秀は道三を尊敬していますね。義龍のことは全く思い出さないのに。悲しい義龍の片思いだったんだな……。

 


今川の本軍をもう少し減らす手は?

午前10時――。

信長は善照寺砦の兵数を確認しています。

ざっと2,500。熱田と丹下で400から500集めて、3,000にはなる。それでも敵は倍以上いると。

そのころ、今川義元は桶狭間の山の上にいると報告されます。そこから一気に、清須城へ攻め込むのだと。

「その前に決着をつけねば。今川の本軍をもう少し減らす手はないか? 大高城の元康の動きも気になる。我らが義元の本陣を攻める時、背後をついてくるとすれば元康であろう」

信長はそう気を揉んでいます。

やはり、隙がなくて本作はいいな。

元康は当初の手筈通り、裏切ってはこない。じゃあ、先週のあの作戦は失敗だったのか? 無意味だったのか?

そうではありません。

戦うということは、いきなり倒すことだけがやり方ではない。弱くすること。ネジを抜いていき、そこを思い切り叩けば、倒れることは出てくるものです。

本作の桶狭間は、信長がネジを抜いていく過程を見せていくことが面白い。

天才だから。革命児だから。ともかくすごいから。ガーッと突撃して、パーッと勝っちゃった♪ やろうと思えばそういうこともできる。信長だもの、桶狭間だもの。

しかし、本作はネジを外す過程を面白く見せる。惚れ惚れするほどの超絶技巧です。

それに、武将だけでなく作り手も兵法マニアにならないとなかなかこうはいきませんね。

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