麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第21回 感想あらすじ視聴率「決戦!桶狭間」

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麒麟がくる第21回
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「毛利新介、今川義元討ち取ったり!」

義元の身に、危険が迫ります。

せめて屈強な護衛がいればまだしも、どうなることか。

結果はわかっていても、そう思えるのだからすごいものがあります。

槍と刀のリーチの差を考慮しているし、動きがなまなましいのです。

見た目の美麗さとリアリズム、どちらを取るか? そこが殺陣の直面する悩ましさですが、ここも元康のように「両方!」が最も恐ろしく見えるのでしょう。

ここでの義元は、弱々しさどころか、片岡愛之助さんの怪力が結晶したような迫力がありました。

熱気にあふれ、勝てるのではないかと思ってしまうほど!

「あああ〜ッ!」

ここで毛利新介、怒涛のワイヤーアクションで吹っ飛んで来ます。

義元の瞳に、その相手が映る。

槍に甲冑であんな飛べるのかとか。いろいろ突っ込みどころはあるようで、人間が最期の瞬間に目にするなまなましい恐怖と思えば納得できる。そんな場面でした。

「毛利新介、今川義元討ち取ったり! 毛利新介、今川義元討ち取ったり!」

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そう叫ぶ中、ジャイアントキリングに織田方は湧き上がります。

そうか、わかりきっているようで、桶狭間とはこうも劇的だったのか! そう新鮮に感動できる激闘でした。

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相手の本音を引き出す光秀の魔法

日が暮れてゆく中、家康はあの丸薬を握っています。

結局、大高城を動かず、桶狭間に向かうことはなかったのです。

義元が討ち果たされて、何を思うのでしょうか?

わざとそうしたのか、それとも巨大な運命に飲まれてしまっただけなのか?

両方? そうかもしれない。

自分の意思とは関係ないところで、気がつけば、天下をかき回してしまう。元康の悲運とは、一体何なのでしょう。

光秀は、勝利をおさめ帰ってくる信長を待ち受けていました。

馬をとめ、信長はこう言います。

「水を所望したい」

光秀が差し出す水を飲む信長です。

「ああ……勝ったぞ!」

「おめでとうございます。お見事でございました」

「褒めてくれるか?」

「誰もが褒めそやしましょう。海道一の弓取り・今川義元を討ち果たされたのです」

予想はできてきた。光秀は何もしていない、水を飲ませただけ。そうでしょうか?

ここの短い場面には、信長の本質が詰まっています。信長は、相手の本音を引き出す光秀の魔法にかかり、秘めていた気持ちを語るのです。

「昔、父上を裏切った男(松平広忠)の首を取って帰ったことがある。父上はわしを褒められなかった。余計なことをするなと叱り付けられた。わしは何をしても褒められぬ。子どもの頃から、誰もわしを褒めぬ。母上も、兄弟も……」

寂しい。

圧倒的に寂しい、そんな信長がそこにはいます。ピュアなんだな、褒められたいんだな。

 


そうだよ、目の前の信長だよ!

帰蝶様は、お褒めになりましょう」

光秀はそう言います。

わかっているねえ。本質的にあの夫婦は相性がよくて、褒めてくれるとわかっているんだねえ。

でもさ、光秀。ストーカーを見つけちゃったって、気づいたかな?

義龍よりもある意味おそろしいストーカーが、自分を理解してくれるとわかってドキドキしちゃってるよ。

そうだよ、目の前の信長だよ!

……なんか本作、光秀が影が薄いだのなんだの言われていますが。戦国武将を虜にする、魔性の存在みたいになってるんじゃないかと思いますよ。

斎藤道三「光秀と話していると、なんかこう、考えがまとまる気がするんだよな」

松永久秀「光秀、今度お茶しない?」

細川藤孝「光秀に近寄らないでもらえますか!」

斎藤義龍「光秀といると、心が洗われるよね……」

織田信長「光秀〜こっち来いよ〜」

で、そういう光秀を演じ切る長谷川博己さんは、涼やかで爽やか。この光秀の写真を印刷してどこかに貼り付けたら、夏場は室温下がりそうじゃないですか。

信長は心を開き、恥ずかしそうにこう言います。

「帰蝶は何をしても褒める。いつも褒める。あれは母親じゃ。また会おう!」

はい、マザコンの指摘はもういいです。母親というよりも、承認が欲しかったんですね。母親は我が子を認めるはずだという認識があるがゆえに、こう言ってしまうと。

光秀は考えつつ、こう聞きます。

「今川を倒し、次は何をなされます?」

「美濃の国を取る。美濃は帰蝶の里じゃ。美濃を取って、帰蝶を喜ばせてやる」

「そのあとは?」

信長は答えず、去ってゆきます。

 

大きな国を作るのじゃ

駿府では、駒と東庵がぼんやりとしていました。

「ここの療治もこれまでか……」

京都に戻ることを話しています。

今川義元討死で潮時を迎えたと。元康様とは戦が終わったら将棋をさす約束だけれど、もうよかろうと言います。

ここも堺正章さんが素晴らしい。

食べながら演技をする場面が本作にはありますが、口の中身を見せずに、滑舌もきれいに、きっちりできているのがよいのです。

駒は、元康から来た文のことを語ります。

戦が終わり、母上にお会いになったとか。母子は泣いてばかりで、ろくに話もできなかったそうです。

東庵は16年ぶりに再会した母子のことを思いやります。

元康は冷酷でなくて、母への愛はちゃんとある。目的と情愛の切断ができるだけです。

信長は考えがあって、他の今川家臣とは別の扱いにしたとか。岡崎に戻れるようになったというのです。源応尼も大喜びであろうと東庵は確認し、京都へ戻ると告げるのでした。

出立前に、駒は芳仁という人物が会いたがっていると言います。

駒は京へ戻ることと、別のお灸がうまい人が来るようにしたと告げると、芳仁はあの丸薬の処方を伝えてきます。

世話になった駒にこそ渡したいという、あの薬のこと。誰にも教えたことはない、駒さんだけに教えると言います。

安く手に入る処方で、元手はかからない。しかし、何にでも効く薬である。いつか作ってみれば、皆が喜ぶと芳仁は言います。

これは先週から気になっていたのですが……徳川家康は医術マニアで、自ら薬を調合できたほど。

この丸薬の処方が、今後家康にまで伝わるのではないかと、ちょっと期待してしまうところではあります。ただの丸薬ではないようです。

光秀が、馬を走らせています。

脳裏には、道三の言葉が浮かぶのです。

「大きな国を作るのじゃ。だれも手出しのできぬ大きな国を」

タイトルにもなったこのテーマがあるのでしょう。

自己承認を求めた小さな信長の願いが、大きな国と、悲劇へと突き進む――。

そんな再開を待ち望みつつ、本作は一時休止となるのでした。

 


MVP:今川義元

一人を選ぶのがとにかく難しい。

織田信長もいいし、毛利新介も見事でした。

ただ、彼の死、流した血が信長を決定づけること。そのことを受け止め演じ切った片岡愛之助さんのことを思うと、やはり、ここは義元で。

人間は、知勇兼備、優しく、正義感が強く、誠実で、素直で、力強いリーダー像に憧れるもの。

今川義元は、その条件を満たしていたと思えるのです。

輿はあくまで権威であって、身体壮健、最期まで戦いぬく。そんな戦う姿がひたすら神々しかった。死んで欲しくないと思えました。

斎藤道三は討死でも、身を挺して一太刀返した何かがあったけれども、義元はそうでもない。

強かった。高潔だった。賢かった。勇猛果敢だった。

そういう義元の姿が、ずっと胸に焼き付いてはなれません。

 

総評

さて、今週で休止ですね。ロスだの、本作が愛される理由だの、そんなもん考えている暇があるのかって思ってしまいます。

正直、私が歴史好きを名乗っていいのかわからんし、名乗るつもりもないし、他の誰かが好きな理由を推察されると言われたら断る。自分の心情が一番大事じゃないですか?

はい、いきなり煽りましたが、特に意味はありません。

戦国時代の新説をいかに追っているのか、それが本作の重要な点ではあるのですが。

でも、それって、味噌汁にいい味噌を使っているくらい当然ではないでしょうか。それをしない残念大河もあったけれども。

個々では味噌汁の味噌じゃない話でもしながら、考えていきたいと思います。

公式ガイドで興味深い点はいくつもありますが、吉田鋼太郎さんのページに注目です。

シェイクスピア俳優として知られている吉田さんが、本作のヒロインとシェイクスピア作品のヒロイン像を比較するのです。

今回の桶狭間ですが、シェイクスピア作品で似たプロットのものがあると思えました。

『ヘンリー四世 第1部』です。

ハル王子は、父王を嘆かせるうつけで、遊び呆けてばかりいる。

ライバルの跡取りである“ホットスパー”ことヘンリー・パーシーは理想的で、父王はどうして我が息子はこうなんだと嘆くのです。

ハル王子はそんなホットスパーを打ち倒し、何かに目覚めます。

そして第2部では、戦上手な王・ヘンリー五世として即位するのです。

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義元がホットスパーで、信長がハル王子のような。そんな構図が本作からは感じられました。

義元がホットスパーのような、人格高潔で熱気にあふれ、ともかく強いのも、構図的に納得ができます。

そういう存在を倒さなければ、英雄像を形成する通過儀礼は描けないのでしょう。

どうしてそんな地球儀をぐるっと回した英雄像と近づけないといけないかって?

これって、シェイクスピアの知名度ゆえだけとも思えません。

というのも、時代的には近接しているのです。

日本独自の信長像ではなくて、16世紀という時代にふさわしい、人類が通過した時期の英雄像だと思えばどうでしょう?

本作はこういうふうに、地球儀をぐるっと回すとおもしろい人間像を描いてきます。

信長が自己承認を求めている、怖いのか、幼いのか、ピュアなのか、よくわからないセリフもありましたが。

地球儀をぐるっと回すと、時代はかなり遡って『三国志』の曹操がいます。

彼も若い頃はうつけで、わけのわからんクソガキ扱いをされていたものです。

それが名士である橋玄から才能を認められて、何かに目覚めたような変貌を遂げるのです。

あの「墓泥棒するクズ」と敵陣営から罵倒されたこともある曹操が、橋玄の墓にはきっちり手厚くお供えをしたというのですから、何かものすごい感銘を受けたのでしょう。

褒められたい人は、古今東西いる。

通過儀礼を求め、ウズウズしている人はいる。

「褒めてくれるか?」

信長がこう口にしたとき、いろいろと何かがストンと落ちて、わけのわからないほどの感動を覚えてしまいました。

帰蝶は信長との間に子はできない。

でも、特別な人だとつながった。それは彼の才能を褒めるからだと。そこも理解できた。

信長みたいな人は、きっと今だっている。

才能がないわけではないのに、周囲から理解されず、スポイルされて、悲しい気持ちに沈んでいってしまい……そういう人のこと。

休憩時間にアイスクリームを食べていただけで、頭の硬い新人指導係から「非常識だよね」みたいなことを言われる新入社員、そこのきみだよ!

しみじみ、つくづく、思いました。

人間って本質ってもんを見てるようで見ませんよね?

義元は輿に乗る、兵力を水増しする。愚かだからじゃない、むしろ生きる知恵なんです。

そういう権威を見たら、ほとんどの人間がなんとなく平伏するんですよ。ほへーっ! 戦う前から平伏してくれるなら、それが賢いってことになりませんかね。

でも、世の中にはそれが通じない人もいる。

ワクワクと立ち向かってくる信長もそう。

そして、疑念を漂わせ、ステルス裏切りをして、とんでもないカタストロフを善人顔でやらかす元康も。

褒められたい。そんな信長は純粋で悲しいと思えました。

でも、そんな信長すらかわいらしく見えるのは、元康のせいです。

元康は、褒めればよいわけじゃない。

元康が納得する理由を添えてください。ただなんとなく褒めたところで、元康はむしろイライラし始めかねないので、ひたすらめんどくさいのです。

理由を添えたところで、元康側の意図と一致しないと、特に喜びません。

ありきたりな理由で褒めたところで、喜ぶどころか塩対応します。

元康は信長以上に猜疑心の男です。

チーム三河守の4番扱いに喜ぶどころか、心底ムカついている。プレイヤーでなくてチーム三河の監督になりたいわけです。

元康は褒められると「褒めておだてて、何かコキ使うつもりなんでしょう?」とやらかしかねないので、本作最強にして最凶なのだと思えます。

先週、義元の抱いていた猫は、演出として元康の象徴なのだとか。

元康は「チーム三河の犬ソリを引っ張ってがんばろうな!」と義元に言われても、即座に逃げ出します。ネコ科だからさ。従順なわんちゃんだと思っていたら、ネコ科の猛獣でした。

桶狭間を描くようで、三英傑のこと、今後の伏線までみっちり入れてきて、圧倒的な回でした。

このくらいやらねば、今後の歴史ドラマとしては通じない。

そういう意識を感じます。

本作について不安は一切ありません。

休止されても、特に嘆くわけでもない。

休止期間でじっくり考えると、見えてくるものもあるでしょう。放送は休止されようが、こっちが休止することはないのです。それだけのことです。

ロスだのなんだの言う前に『孫子』でも読み返します。

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◆麒麟がくる全視聴率

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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