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【麒麟がくる第23回感想あらすじ】
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東庵のケガ
駒は、都の東庵の家の前で悩んでいます。
あの喧嘩のことを思い出すと、帰りたくなくなってしまう。
そこへ茶の振売が、「一服一銭いかがかな」と通りかかります。
彼は駒を見つけ、家に入ればよいではないかと言ってきます。
ここしばらく顔を見ていないと不思議がる相手に、駒は東庵先生と喧嘩をしたと説明します。それで東庵が怪我をして大騒ぎしたときいなかったのかと、相手は納得しております。
なんでもおとといの明け方、盗賊に入られたとか。腕を折られ、金目のものを取られたそうです。
駒は慌てて中へ。
東庵はむすっと「湯をこれに入れてくれ」と碗を差し出します。
何もかも持っていかれた!
そう語り出す東庵。金も、服も、硯や墨まで全部――腕も痛くて、療治ができぬと嘆きます。双六で百貫負けて以来の大惨事だってさ。駒が生まれる前のことだそうです。
駒の丸薬まずは700袋
伊呂波太夫もやってきました。
腕がどうしたのかと聞かれると、こうきました。
「人間長生きすると、いろんなことがあるのだ」
堺正章さんはやっぱり絶品だな。
こういう間抜けでおもしろいことを、さらりと言える。ここで伊呂波太夫は、こう言います。
「駒ちゃんの作った丸薬がお坊様の間で評判になるなんて、思いもよりませんでした」
駒が戸惑っているのに、商談は動き出します。駒はあれだけ東庵にダメだしされたわけで、そりゃ複雑な気持ちでしょう。
しかし、営業部の伊呂波太夫は、これまたノリノリです。永久寺だけじゃない。近所の神社でも腹痛が治った。氏子に分けたいって。
駒は困惑し、困っている人にこそ配りたい、それに東庵先生はあの薬が嫌いだと言います。
しかし、伊呂波太夫は商売上手なのです。
◆駒ちゃんの丸薬販売計画
永久寺:5粒入り500袋
神社:200袋
合計:700袋
販売価格:10文
利益は?:7000文、7貫(約105万円)以上
販売手数料:2割
伊呂波太夫は、すでに手付金も受け取ってきていて、それを東庵の前にぶらさげる。
駒は困り切っていますが、伊呂波太夫は有無を言わせないところがあるし、東庵にしても「米がいる、味噌がいる」と乗り気で断れないんだな。
とりあえず700袋を作ることになりました。
「とりあえずじゃ」
そう念押しするものの、どうなのでしょう。
駒の人生も一歩進みました。換金できる商品作りを覚えたのです。
こういう目線、勉強になりますよね。
かつては『信長の野望』だけでなく『太閤立志伝』もあったっけ。今はもう『タイムスクープハンター』もないことだし、こういう庶民目線の歴史を見る目も鍛えなくては。
主演のハセヒロさんの苦労はもういうまでもありません。重圧、アンチの声、革新的な像を描く。そういう意味において、駒は煕子や帰蝶以上に大変だと思います。
門脇麦さんには、がんばって欲しい。これほど「応援している」ことを伝えたくなる人も、そうそういません。
駒は、十年後に大河枠が生き延びられるか、左右するような。そんな重要なヒロインだと思うのです。
サイドストーリーだって大事だし、このドラマは東洋医術を重視視している。根幹としてじっくり見るべきパートではないでしょうか。
そして駒は、本作で最も過小評価されているとも感じます。駒さん、がんばれ!
きれいな器に、澄みきった水が注がれたような
越前に戻った光秀は、家の門に触れています。
「夏は終わった、わしの夏は……」
そう将軍の言葉を思い出す中、牧の透き通った歌声が聞こえて来ます。
長女の岸が、花に水をあげています。煕子はたまの髪を梳いている。
侍女の常がきづきました。
「殿がおかえりでございます!」
光秀は岸に向かってこう言います。
「ただいま帰りました。長らく留守をいたしました」
なんというハセヒロさん。その魅力が、今、頂点に到達した。そういう境地を見た気がする……。
まだ幼い娘に、こういうことを丁寧に言えてしまう。本心なのか、ふざけているのか? どちらにも見える。
ただただ端正で、丁寧で、光秀には、彼の価値観と世界がある。
理解できない人にはわからない世界。スケールが小さく、自分とその周辺の利害しか考えないことを「現実的」だのなんだの言い繕う、小賢しい意見にはうんざりだ。
天下や仁政のことを考えもしない。考えている光秀のような人物を「お花畑」とか「かっこつけ」と呼び、見下してはいい気になる。
そういう人物は、要するに「小人」と書いて“しょうじん”と呼ぶべきなのです。光秀は「小人」には理解しにくい人物です。
ハセヒロさんは、こういう演技をしてこそ。ある朝ドラのやけっぱちのゲス脚本は、罪深いほど不釣り合いだった。
今では、きれいな器に、澄みきった水が注がれたような、そんな爽快感がある。
ここで岸は父の帰りに安堵して泣き出し、光秀は、驚かせたのかと戸惑っています。
光秀の母も、妻も、彼を出迎えます。驚きを見せる煕子に、光秀はこう来ました。
「長く留守をした、ゆるせ」
光秀よ……本作の光秀って、ほんとうに生真面目で、誠実そのもの。
これをあてがきとして渡されて、ハセヒロさんはどう反応するのだろう?
自分の一番きれいなところを引き出してもらえて、満足感があるのか?
生真面目さゆえに、考え込んでしまうのか?
でも本作の、今週を書いている池端さんって不思議ですね。
女性の人物は、魅力的だけれど、むしろ地に足がついた理想像とは別のものを出してくる。
一方で、全員ではないけれど男性の人物は、人間離れした境地すら引き出してくるというか。男性のほうが「美しい」と言われることは多いと思います。出番が多いからでもあるのでしょうが。
野心を持たずじっとしておれ
ここで明智家は、朝倉家臣から金子(きんす)をもらっていたと明かされます。
御家老の山崎様から光秀も話を聞いているとか。
山崎様は榎木孝明さんだ。早く見たい。光秀は朝倉の殿とも話し、京のことを伝えてきたそうです。
山崎吉家は信玄との交渉も務めた朝倉家の勇将だった~しかし最期は信長に滅ぼされ
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義輝様は、京都のことは全て思い通りだと、仰せられた。光秀は己に言い聞かせるように語ります。
国の外に振り回されるな。野心を持たず、この国にじっとしておれ。妻や子のこと、自分の家が一番よいのだと。
光秀は、庭に立ったとき、そうかもしれぬと思っていました。煕子も、そう思うていただいてうれしいと告げます。
そのうえで、尾張と美濃の激しい戦いについて語ります。今こうしていても、誰かが戦で命を落としている。そう考えると、辛うございます――そう語るのです。
「どの国からも、戦がなくなればよい。お岸やたまが大きくなったとき、穏やかな世であればよい。そう思うのです」
煕子はそう語ります。
大河にありがちなおちょくりとして「戦は嫌でございます!」というものがありました。
ヒロインがお約束。平和主義者アピールのように「戦は嫌でございます!」と言うというものです。
ふざけきった話です。
戦国時代の女性ならば、しみじみと、人が死ぬのは嫌だと思ったところで、実感のこもった話でしょう。
それをこうも軽薄な受け止め方をされるようになったのは、作り手の問題でもあるし、受け手の問題でもある。戦争や落命の実感が遠かったということでしょう。
そういう状況に、池端さんは怒りを感じられていたのかとも思う。自己批判、大河堕落への怒りの波動のようなものを感じる。
戦国大名になったら楽しそうだの。維新志士と恋愛するだの。歴史を向き合えば、そんなものはただの悪夢でしかないとわかりそうなものです。
そういう意識が薄れて、歴史も楽しいコンテンツになっていった。そこをひっくり返して、生々しい血の臭いや、苦痛を取り戻そうとしている。そういう気合を感じる。
だって池端さん、お父様の戦争体験を本作についてのインタビューで語っていましたから。戦争は美化したらいけないものなのだという意識を強く感じました。
そして永禄8年(1565年)5月――京で一大事件が起こります。
三好義継率いる軍勢が、二条御所を襲撃したのです。
永禄の変で敵に囲まれた13代将軍・義輝が自らの刀で応戦したってマジすか?
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