麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第41回 感想あらすじ視聴率「月にのぼる者」

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口の軽い弟は屍に……

「平かな世」とは何か?

光秀は秀吉に聞いてみます。

秀吉はここで目をぎらつかせ、こう返します。

「昔のわしのような貧乏人がおらぬ世ですな……」

これはなかなか危険な予兆がある。

光秀は扇を突き付けながら「貸し」にしておくと言い、口の軽い弟は叱っておけとも釘を刺しておきます。

ここは重要でしょう。光秀は、秀吉の残酷さを過小評価している。この先、辰吾郎がどうなるかわかっていたら、違った反応だったかもしれません。

秀吉は、辰吾郎はおっ母がどこぞの男との間にもうけた子であって、躾も何もあったものでないと言う。

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金をせびってばかり。叱っておくと語ります。弟を謙遜するというよりも、蔑む見方を感じさせますね。

卑しい母が、どこの誰とも知れぬ男と作った、どうしようもない弟。値踏みするような、自分にそう言い聞かせるような……。

光秀に対して、秀吉も反撃に出ます。

庭で東庵のもとに出入りする菊丸を見たことを告げるのです。おっ母の元にも出入りし、煎じ薬を持ってきたりする。何者か?とカマをかけてきました。

ただの薬売りと承知していると返す光秀。

「ほう、わしにはそうは見えませぬが……」

そう答える秀吉はどこまで狡猾なのでしょう。

彼には人の情を操る才能がある。自分だったら簡単に殺せる駒でも光秀はそうではない。光秀に反撃するためにも、菊丸を始末するくらい何ともない。そもそも自分の母に接近しているだけでも許せない!

そう脅迫する物言いをして、去ってゆくのですが……場面変わって、秀吉の弟・辰吾郎が仲間と博打を楽しんでいます。

すると、秀吉の家臣たちが呼び出しに来ました。

短刀を抜く誰かが見える。辰吾郎の命は軽い。ここで死んだとしても、博打で揉めて喧嘩で死んだ、で終わるのみでしょう。

秀吉は、そんな弟の死を見届けたいのか、往来で顔を隠し潜んでいます。

そこに物乞いをする子どもたちの声が響く。

「みよ、昔のわしじゃ。皆、昔のわしじゃ。今のわしはもう違う……」

そう目をぎらつかせる秀吉。その近くで辰吾郎は物言わぬ屍となっているのでした。

 


秀吉の無謀な征明まで浮かんでくる

演じる佐々木蔵之介さんは『マクベス』のこんなセリフを思い出したそうです。

「血の川へここまで踏み込んだからには、先に行くしかない」

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毎回、秀吉がおそろしくて、涙ぐんでしまう。ものすごく深くて見逃せなかった。あの子どもを昔の自分だと思う姿は、全くもって微笑ましくない。

つまり、あんな子どもだろうが、いずれ自分を脅かすかもしれないのならば、殺す理由が成立するということになる。

豊臣秀次の幼い子を殺し尽くしたような、不穏な筋道が見えてきます。

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もう、この秀吉には、これから行う何もかもが筋道として見えてはいる。

こうした秀吉像は、きっちりと最新研究や知見を反映し、かつ過去を振り返る秀逸な像ではないでしょうか。

秀吉の評価は難しいのです。

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徳川政権となった江戸時代は低いのが当然としまして、問題は明治以降。日本が海外へ領土を拡大するとなると、秀吉はその先例として称揚されたのです。

第二次世界大戦でそうした流れも終わるかと思ったら、そうでもない。サクセスストーリーぶりは、経済成長ともシンクロし、もてはやされました。

その一方で、晩年は例外的な狂気として処理されてしまう。

秀吉にある本質的な危うさは、突発的なエラーか、北政所や淀、石田三成らが唆したことともされてきた。

朝鮮出兵に関連することは「隣国がうるさいから映像化できない」という言い訳もありますが、これも隣国を逃げ道にして、本質と向き合うことを避けていたのではないかと思えるところでして。

要は秀吉の見直しとなると、近現代史も絡んできて面倒だということですね。

本作はそこから逃げないどころか、現代の社会情勢をからめて一段上に登ってゆく感がある。

どうして秀吉が、無謀な征明まで妄想したのか?

その動機付けとして、このセリフがあります。

「昔のわしのような貧乏人がおらぬ世ですな……」

攻めて、攻めて、明まで支配すれば、日本人は金持ちしかいなくなる! この戦は日本のためだ――とは、あまりに無茶苦茶ですが、この理屈は明治以降の日本の歩みと重なります。

現にそういう重ね方をした先例があるからには、そこまで想像してしまいます。

そして現代にあてはまることでもある。

「絶滅に向かっているのに、経済成長のおとぎ話ばかり」

グレタ・トゥーンベリさんはそう突きつけました。

経済成長をし続ければ、貧困もなくせるはずだ。これは未来を生きる子どもたちのためだ。そう言い訳しながら、環境を破壊しているじゃないか!と、彼女は突きつけたのです。

終わらない成長、貧困をなくす。そんなことはそもそも可能なの?

秀吉を反面教師として考えると、見えてくるものはあるはず。SDGsを意識し、マイストローを持ち歩く若い世代からすれば、本作で描く秀吉は、もう魅力的なロールモデルにはなり得ないのでしょう。

 


公家の事情にも詳しい菊丸

光秀は東庵の元へ向かいます。目当ては菊丸です。

たまと駒が出かけていったと告げる菊丸。

肩のこりが酷いので、鍼治療に来たと語る光秀に対し、丹波攻略を担当していたならば肩も凝ると理解を示します。

光秀は、戦だけでなく、京における信長の評判が悪いと切り出しました。御公家はともかく、町衆の評判は悪い。

公家にしたって、二条様と春宮ばかりを贔屓していると菊丸は答えます。

その情報収集能力に光秀が感心していると、公家の館へも薬を売りに行くから詳しくなったと語りつつ、二条晴良が春宮に譲位を迫っている話まで言い始めます。

「しかしそういうこともすべて、三河の殿に知らせるのだな」

思わず薬研を使う手が止まる菊丸。

たしかに三河の徳川家康織田信長と同盟関係にある。しかし、その相手が頼りになるか知りたいのだろう?とかまをかける光秀です。

急な指摘をされて慌てる菊丸に対し、光秀も今さら隠すなと語りかける。そのうえで、羽柴秀吉が狙っている、そろそろ潮時だと告げるのです。何度も助けてくれたことに礼を言い、逃げて欲しいと話す。

というのも秀吉の家来は行動を起こせば素早いため、今すぐにでも京を離れろと光秀は告げるのです。

これに対し、思わず苦しい胸の内を話し始める菊丸。このままの暮らしがよい。駒と薬を作って同じ家の中にいたい。

三河のために命を捨ててもよいと思いながら、もうお役目を返上したい。お恥ずかしい話しながら、そう思うのだと。

たとえ三河に帰ったとしても、もう家で私を待つ者はいない。皆死に絶えてしまった。こうして駒のもとで薬を作っていると、三河のことも忘れてしまう……そう語るのです。

戸の外では、駒が話を聞いていました。

たまが「子猫を見つけた」と近寄ってくると、駒は黙って彼女とその場を離れます。

 

人には言えないたまの秘密とは

「申し訳ございませぬ。つまらぬことを申しました」

室内では菊丸が光秀に話を続けていました。

「仰せの通り潮時かと。駒さんや東庵先生を巻き込む前に行こうと存じます」

そう言われ、頷く光秀。

一方、たまに様子を聞かれた駒は、部屋の中で光秀と菊丸が難しい話をしていると説明していました。どのくらい難しい話なのか?と無邪気に問いかけるたまに、駒は「人には言えないほど」と言うしかない。

すると、たまも人には言えない秘密がある、駒なら話せると明かします。

二人で座り、話し合うことに……。

たまは嫁に行きたくない。母が亡くなり、父上を残してはおけない。父が戦に行く姿を見送らねばならない。

一緒に戦に行けぬからには、それがせめてものつとめ。一生見送りたいと言います。

駒は理解を示しつつ、今後50年も100年も戦に行くわけではないと告げます。

人はいずれ、遠いところへ旅立つのだから。

「わかってます。だから悩んでしまうんです。どうすればよいのか……」

たまはそう返します。

駒の言葉には願望や諦念も感じさせます。

初めて駒が光秀と会った時。麒麟を信じていると告げた時。二人とも、自分たちが白髪頭になる頃には、麒麟の姿が見えるのではないかと思っていたかもしれない。

それがこうして、光秀の娘がずっと父は戦に行く前提で話している。

麒麟がくることが早いのか?

それとも自分たちが遠いところへ旅立つ方が早いのか?

人生の折り返し地点を過ぎたであろう駒から、そんな悲哀を感じます。

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