第一回の感想もぼちぼち出てきましたが、とりあえずは順調なようです。
子役で一ヶ月間引っ張る本作。子役の熱演は既に話題ですが、それだけではない脚本のおもしろさにも期待がかかります。
さて、視聴率ですが。
◆大河ドラマ『直虎』初回視聴率は16.9% 2000年以降ワースト2位の低発進(→link)
ここは視聴率そのものではなく、低いからと叩きが加速することを警戒したいです。BS先行や録画率も合算して報道されるとよいと思います。
『真田丸』の遺産は、先行放送や録画率、SNSでの反応、大河ドラマ館の入場者数など、総合的に判断して扱うようになったことでしょう。
大河の報道といえば、視聴率が下がったことに対する茶化した報道、視聴率アップのためにお色気シーンを投入するのではないかといったしょうもないものが多かったものです。
昨年は初夏までは「きりバッシング」をしつこく繰り返すしょうもない記事が多かったのですが、そのうちそうした記事は減り、内容や史実の検証記事が増えてきています。
今年もそうなることを願います。
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何気ない会話でもキャラクターがぶれない
物語の背景を説明するアバンのあと、OPを経て本編開始です。
まずは先週のラストで、どうして亀之丞(井伊直親)とおとわ(井伊直虎)が入れ替わっていたかのネタばらしとなります。
とわは亀之丞に笛を返すため、早朝から山中を歩いていました。
そこで亀之丞と出会ったとわは、着物を交換して時間稼ぎのために囮となったのでした。
亀之丞は強くなって必ず帰って来るととわに誓います。ここは気合いを入れて描かないと、とわがどうして亀之丞を待ち続けるのか弱くなりますので、演技や演出にも力がこもります。
今川家の家臣(何かと気になる、キラキラしたおそろいの服です)もこの入れ替わりと、「竜宮小僧を探していた」と答えるとわには困惑するばかりです
。子供相手に本気で怒ることもできない今川の家臣は、かわりに保護者である井伊直盛夫妻に鬱憤をぶつけるほかありません。
幼いながらも今川家を翻弄するとわの姿は、将来の行動を予感させます。
このあと今川家は何度も、あの井伊家の女にしてやられたと歯がみすることになるのでしょう。
曾祖父の井伊直平と直盛はとわの機転、今川の鼻を明かした痛快さを褒めます。
一方で直盛の妻・千賀(新野千賀)は、その場で斬られたらどうするつもりだったかと叱ります。
何気ない会話でもキャラクターがぶれないところが本作の良さです。体幹がしっかりしている人が踊るのを見るような、そんな安心感があります。
ここでのぶれなさは井伊家の男性陣が楽観的で陽性であるのに対して、女性はむしろリアリストであるというところなのです。
千賀はありがちな優しく慈愛に満ちた母親というわけではなく、時に厳しく、時に冷徹にもなって、娘に接します。
我が子の人格や性格を認めつつも、厳しく指導する姿に好感が持てます。
亀之丞は逃げ切って捜索は一段落。討たれた井伊直満の寂しい葬儀がやっと行われます。
この葬儀のあとの酒宴での会話で、各人の立位置を示します。
井伊家の面々は直満の死は仕組まれたものではないかと薄々感じてはいますが、決定的な証拠を出せずに怒るばかりです。このあたりが真田家との違いです。
和泉守の主張にも一理あり 直平では今川にソク潰される!?
そこへ小野和泉守政直がやって来ます。
官名で「小野和泉守」と呼ぶあたり、昨年からのよい傾向が継承されていますね。
今川家では千賀の兄である新野左馬助(新野親矩)ではなく、小野政直を目付にすることにしました。
さらに政直の子・鶴丸(小野政次)をとわの婿として、次の井伊家当主に据えると言ってきたのです。
直平は激昂し、政直を斬り捨てようとすらします。これはもう直満を罠にかけたのは政直だと、井伊家の皆にもわかってきます。
しかし繰り返しますが、彼らは決定的な証拠がないというところで詰まってしまいます。それ以上の策は出せないのです。
どうしようもないまま、彼らは死者を弔うために酒を飲むしかありません。
板張りの粗末な屋敷、鶏の声が聞こえる場所で、為す術もなく酒を飲む井伊家の面々。弱小国衆の悲哀を凝縮したかのような場面です。
昨年の真田昌幸は「小国は辛いのう」と嘆いていましたが、今年の井伊家もそれがあてはまります。
全体的に漂う悲哀から井伊家に肩入れしたくはなるものの、台詞だけを検証すると小野政直がさほど間違っていない点にも注目したいところです。
直平の言うように怒りにまかせて今川(今川義元)に叛旗を翻したところで、井伊家を待つのは破滅だけです。それを回避するためには、彼のような有能なパイプ役が必要なのでしょう。
政直は劇中ではわかりやすい悪役とされていますが、家を守るために今川に近づきすぎて邪推され、後世において奸臣扱いされるようになった人物かもしれません。
その「やむにやまれぬ立場から悪役となる」という部分は、政直の次の世代でもっとはっきりするでしょう。
とわは千賀から、直満が残した土産を受け取ります。その中身は鼓です。夫が笛を吹き、妻が鼓を叩く、そんな願いがこめられていました。
この鼓はとわの恋心の象徴となるわけです。笛の音を鼻声で再現しながら鼓を拍つとわの姿は、理屈抜きで健気です。
ここで猫和尚こと南渓との対話タイム。
とわは井伊家初代の伝説「井戸の赤子」の正解を知りたいと尋ねます。
南渓はとわ、亀之丞、鶴丸それぞれの答えを聞き、全て正解だと返します。
「答えは一つとは限らぬからのう」
軽い口調ですが、本作のテーマとなりそうなことを言う南渓和尚なのでした。
「死ぬために生かされる」解死人 なかなかヘビーですのぅ
鼓を練習しているとわに、厳しい現実が待っています。
父・直盛の口から、亀之丞ではなく鶴丸と婚約して欲しいと言われるのです。
今川に振り回される現実に、まったく納得がいかないとわです。直盛は目が泳いでいますが、千賀は強い態度で娘を諭します。
鶴丸もまた、父・政直から婚約の話を聞かされていました。
鶴丸は何故こんなことになるのか、これまた全く納得ができないようで父に反論します。
鶴丸の心の中には、父への不信感と、そしておそらく軽蔑とが渦巻いてゆきます。
鶴丸を演じる小林颯さんは台詞の読み方は少し拙くもなりますが、それを補うように目の表情が雄弁です。見開いた目から彼の苦悩や困惑が伝わって来ます。
井戸の近くで、とわと鶴丸は顔を合わせます。
父が井伊直満を罠にかけ、亀之丞を追い出し、亀之丞ととわの婚約を破談にしたのだと鶴丸はとわに言います。
そんな父の子である自分がとわに好かれるはずはないだろうと、諦念をにじませる鶴丸。
しかしとわは、父のしたことと息子は関係ないと言います。
ここが父の罪を息子にまで問う今川家との対比になっています。とわは、今回の縁談を反故に出来ないかと鶴丸に尋ねますが、答えは得られません。
それにしてもとわに悪意は全くないとは思いますが、なかかか残酷ではあります。
父は父、子は子なのだから悪く思わないと言う一方で、鶴丸との結婚は断固として断るつもりなのですから。
ある夜、井伊家からとわの姿が消えます。
皆は「かどわかしではないか」と驚き、捜索隊が出動します。
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