『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第42回「長篠に立てる柵」

出世のための下心だ 美談ではない

拳を握りしめ、くってかかろうとする万千代を正信が止めます。
怒りがおさまらぬ万千代は、何故か正信の顔面にパンチ。
とばっちりだ! 八つ当たりだ!

万福は主君のために詫び、正信の治療をします。
万千代も素直に正信に頭を下げました。

正信は誰よりも真面目に働いているのに、地味な役目をするのだから、気持ちはわかるし偉い、とかえって万千代は褒めます。
万千代は出世するための下心があるから頑張っている、美談にしないでくれ、と本音を話します。

正信は、相手が徳川家中のエリートであることを強みとするなら、今川の元国衆で潰れた家の子であることを強みとしたらどうかと言います。

「だがノブは、流石に裏切り者と言われる働きをしたいのか?」

そう反論した万千代に、正信は力強く肯定します。
裏切り者、恥知らずだからこそできる強みでのしあがる、と高笑い。
ああ~、正信もいいなぁ!

万福も、直虎様も潰れたことを逆手に取り井伊を治めていますよ、とフォロー。
正信は、こんなはみ出し者の自分でも受け入れる家康は度量がある、いつか努力は報われる、信じてよい御方だと太鼓判を押すのでした。
正信、ほんとイイやつっすわぁ。

 

近藤康用「茶碗を龍潭寺に寄進したい」

今度の戦は味方の大勝利、近藤の死者も出ていないと告げるおとわ。ホッとした様子です。
近藤康用には「茶碗を龍潭寺に寄進したい」と言われます。

どうやら直之と六左衛門が、褒美に茶碗をもらったとのこと。
その茶碗をぺたぺた触るおとわ。

「おい、それは雑に扱っているが城ひとつにも値する茶碗!」

そう言われ、落として割りそうになるおとわ。茶碗コントですね。

近藤はあまりに過ぎた褒美、家康の頭越しにもらったものだから寄進したいと言うのでした。
確かに保管しておくのは怖いですからね。こういうところに近藤の誠実さを垣間見えます。

傑山と昊天も茶碗に興味津々。割っちゃ駄目だぞ、と今度は南渓がハラハラします。
この茶碗は現在も寺に所蔵されているそうです。

 

「顔だけかわいい」って正信も思ってたんか~い!

おとわは南渓に、長篠へ向かうと告げます。
長篠の戦場に立つおとわと傑山。

「いつか、かような景色を見ぬようになる日が来るのかのう」

そう呟く傑山。
死者を弔い読経するおとわ。
生まれてからずっと乱世を生きてきた者の、魂の祈りでした。

家康たちは、各地の転戦から浜松へと戻りしました。
祝宴で流石の忠勝も大騒ぎ。
榊原康政は酔いもせず、クールです。

その康政は、万千代に殿の寝所へ参るよう言いつけます。
しかも着替えていけ、との指示。
これはもしや、夜伽を言いつけられたのではないか、その趣味はないと聞いていたけれど、と万千代は万福に確認します。

正信も「万千代様は顔だけは可愛らしいから、趣味が変わられても不思議ではない」と付け加えます。
「顔だけかわいい」って、そう思っていたんですねえ、正信も。

 

武田家の高坂 織田家の利家を見習うべし?

万福は「具合が悪いと言いますか」とおずおずと尋ねます。

しかし万千代は、主君の寵愛を得て出世した前田利家や高坂昌信(春日虎泰)の例を持ち出し、「これこそが酒井一門を追い出すため、御仏がくださった好機!」ととらえます。

「万福! 新しい褌をもてぇい!」

勝負下着を黙々と身につける万千代。
尻をアップにしながら着替える謎のサービスが入ります。
万千代は綺麗に着替えて、覚悟を決めると寝所に向かうのでした。

万千代が襖を開けると、寝具がドーン!
緊張して警戒気味の万千代に、家康は近づくように声を掛けます。

緊張気味の万千代は「かような契りを結んだことがございませんので」とかしこまって言います。
家康はケラケラと大笑いして、そのつもりはないのになんだよ、と大ウケ。

家康は、武具の手入れが丁寧だから、小五郎ではなくて新しく入ったお前たちが手入れしたのだろう、棚も新しかったし、と指摘するのでした。

「日の本一の留守居を本気でやろうと思ったのではないか?」

万千代は自分の地味な努力が報われたことに感動し、じっと涙をこらえます。
その健気なかわいらしさったらありませんね。確かに憎たらしく般若のような顔をする万千代ですが、この場面はかわいらしい。

家康はその顔をニヤニヤしながら見ていました。
「いっそ、まことに色小姓としてしまう手もあるかな? ここはひとつ、まことそういうことにしてしまおうか」

ここで画面が切り替わります。
新井美羽さんの竜宮小僧が、石を甚兵衛の家に投げつけます。
外は大嵐。川も激流になっています。何が起こるのでしょうか。

 

MVP:織田信長

井伊万千代と迷ったのですが、ともかく迫力が凄かった。

前述の通り、声から三白眼の目つきまで、ともかく凄味があります。

あの一歩間違えると変に見えてしまう衣装を着こなすのも素晴らしい。
それ以上に「この人はもう人間を辞めたのではないだろうか?」と思わせる迫力。これが凄い。

信長の前ではきっと私たちも六左衛門のようにガタガタと震えるしかないのだろうな、と戦慄しました。

 

総評

今週は本作の持つ力が遺憾なく発揮された素晴らしい回です。

まずは長篠の合戦。昨年の『真田丸』は合戦シーンに迫力がなかった、と散々書きました。
その反省を十分に生かしていたと感じます。

馬やエキストラを増やしたわけではなく、演出でうまくカバーしていました。
馬防柵の前で為す術もなくうろたえる馬から漂う悲哀感。
あれがもの凄くよかったです。

あの憎々しげであった山県昌景が本多忠勝に討ち取られるところも、いい。
喉を掻き切った次の瞬間、首をたかだかと掲げるあの迫力。
ギリギリの残虐表現に迫る本作らしさが出ていました。

戦場の撮り方も工夫されていて、背景に霧のようなスモークが流れていました。
あのおかげで兵数のスカスカ感がかなり減じていたと思います。
昨年の反省点を生かしてきたこの進化。素晴らしい!
近年の合戦シーンはVFXが主流ですが、それとはまた違うやり方で迫力を出して来ましたね! 素晴らしいです。

こうなってくると影が薄くなりがちなおとわにも、存在感がありました。
長篠での読経がまさに彼女の思いが込められています。

勝ち戦とはいえども、人が亡くなるもの。その悲しみを説得力をもって表現できるのは、やはり彼女なのです。

男色に関する描写も大変よくできていました。
男色描写で話題になったのが2012年『平清盛』でしたが、これは問題のある描き方でした。
院政期は男色はごく当たり前のこととして行われていたのですが、ドラマでは藤原頼長の異常性の一種として描いているように思えました。
頼長は確かに異常な性格であると当時から思われていましたが、それは男色ではなく強引なストーキング体質であったことの方が大きいのです。

本作では万千代も家康も、男色を異常なこととは考えていません。
むしろ万千代は出世の糸口であると前向きにとたえます。
そうはいっても緊張感や戸惑いはあるわけで、そのあたりがバランスよく描かれています。

その気はなかった家康が、やっぱりその気になってしまう流れも自然でした。
いつもキレ気味の万千代が、しおらしく健気で可愛らしくてぐっと来てしまう。
そういう表情を演じきった管田将輝さんも、いやらしくもなく自然な阿部サダヲさんも、これまたいいですよ!

過度に生々しくなく、ちょっとコミカルに、史実ネタをきっちりと取り入れる。
もうこの脚本演出には脱帽です。

そんなコミカルさの中に持って行かれた感もありますが、家康が天下を獲得してよかったなあ、としみじみと思いましたねえ。

そりゃあ信長の方が断然格好いい。
でも、上に立つ存在として家康の方がよいではないかと。
家臣の細かい仕事に気がつき、石川数正にもフォローを入れていますよね。

今川滅亡関連で井伊といろいろあった家康。
『真田丸』では悪役だった家康。
しかし彼こそ天下人にふさわしいと思いました。

カリスマではなく、気遣いという意味においてです。
理想の上司に見えて来ました。

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著:武者震之助
絵:霜月けい

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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link

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