こんばんは、武者震之助です。
◆「不思議な感覚になった最終回を見てほしい!」森下佳子(脚本)【「おんな城主 直虎」インタビュー】(→link)
◆「登場人物には、私の好きなタイプの男性をずらりと並べました(笑)」森下佳子(脚本)後編【「おんな城主 直虎」インタビュー】(→link)
面白いインタビューです。
「私の好きなタイプの男性をずらりと並べました(笑)」
というのも、よいと思います。
「好きなタイプ」といっても、別に異性として恋に落ちるイケメンではないわけですよ。
仕事仲間にしたいとか、飲み友達とか、要するに「一緒に居て不快じゃなくて、楽しい人」というニュアンスかな、と思います。
そう言われるともの凄く納得できます。
ここで上がっている近藤康用なんかもそうですけれども、憎まれ役でもよい面があったりするのが本作で。
まったく近づきがたかった信長すら、前回嬉しそうに家康に贈る茶器を選ぶところで「あっ、いいところあるんだ……」となってしまうわけです。
型にはめずに、人物に愛情を注いでいる。
そういう良さがありました、うん、森下さん、最高!!
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お好きな項目に飛べる目次
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龍雲丸とマニラ辺りで幸せに暮らしてくれても
さて、いよいよ最終回です。
徳川家康は、織田信長暗殺の陰謀に関わったことはひた隠し、何食わぬ顔で信長の弔い合戦に向かいます。
一方で堺にいるおとわは、明智の子である自然をどう守るか悩んでいました。
南蛮に誘われているという龍雲丸は、おとわも誘います。
しかしおとわは、餞別の水筒を渡すと、笑顔で別れを告げるのでした。
「吾より先に死ぬなよ!」
そう言葉を残して。
この人は結局そう……愛だの恋じゃなくて、大志のために生きるんですよ。
いいじゃないか、もうここで南蛮にお頭と手を取り合って渡っても……ここまでいろいろ我慢して頑張ったんだし。
でも、そうじゃないんですよ。
私はちょっと残念に思ってしまったのです。
この二人が、史実なんか無視して、南蛮でなくても、例えば高山右近のようにマニラあたりで幸せに生きて欲しかったのです。
この笑顔が見られるのはあと少しかと思うと、なんだか寂しくて。
史実なんて、いっそ無視してくれ!
でも、ここで史実の運命に戻って来るからこそ、私の好きなおとわなのです。
明智の遺児を殺そうとする万千代と家康母
信長の弔い合戦は、電光石火の勢いで羽柴秀吉が明智光秀を討ち取ってしまいました。
家康は信長のために一矢報いるため、武田遺領に侵攻します。
昨年の『真田丸』で描かれた、「天正壬午の乱」への突入ですね。
浜松では、今川氏真が万千代に相談を持ちかけておりました。
井伊谷にいた明智の遺児・自然の存在が表沙汰になれば、謀叛に関与したと思われてしまいます。
そのことだけは、避けなければいけません。
おとわは井伊谷に戻り、自然を隠し里に隠そうとします。
しかしその直前に、万千代が自然を引き取りに来ました。自然の身の安全を徳川で保護するためと言いますが、信じられませんよね。
「この子を葬り去るつもりか? 徳川様がそうせよと言うたのか?」
迫るおとわ。
と、そこへ於大の方が現れ、自分の指示だと言うのです。
「その子をお渡しくだされ。御家のためにございます」
「己の子以外は子に見えぬか?」
「子を持たぬ尼殿には、わかりますまい」
あ~、これは痛い台詞だ。
どういう人生、結果でも、その人なりの実りがある
於大の方の迫力に対し、おとわはも負けてません。
子がいないからこそ、どの子も可愛らしく尊い、と返します。
この台詞がいいね!
二年前の大河で【愛する男の子を産んでこそ女の幸せ】としつこく何度も強調してきた呪いを、キッパリと断ち切ります。
妻でなくても。
母でなくても。
そんな女でも、大河の主役になっていいじゃない、というキッパリした宣言です。
『アナと雪の女王』日本公開から三年目で、やっと世界に追いついたんじゃないですか。
どういう人生でも、どういう結果でも、その人なりの実りがある。
そうキッパリ物語中で示して見せたんじゃないでしょうか。
テンプレから外れても、ありのままの幸せがあると、昨年のきりと今年のおとわで、答えは出たんじゃないでしょうか。
おとわは、これは井伊の子、渡せないと言い張ります。
それでも奪おうとする万千代に、傑山が矢をつきつけます。
「若がどのように生きてこられたか! 答えられよ!」
万千代は怯みます。
ここで井伊谷の面々は、万千代を守っていると思います。
かつて、虎松(万千代)の身代わりとして、罪のない幼子を手に掛けた小野政次を、彼らは守れませんでした(第31回)。
彼らの脳裏には、身代わりで死んだ子の姿も、手に掛けた政次も、浮かんでいたことでしょう。
まさかのロングパス ここで信長茶碗とは!
そこへ、織田の手の者が駆けつけました。
ここに明智の子はいないと言い張る井伊の者たちです。
「この子は信長公のお子じゃ!」
おとわはそう言うと、信長から中野直之と奥村六左衛門が拝領していた超高価な茶碗を差しだします。
茶碗だけでは引き下がらない相手も、添えられた信長の花押入り書状を見て、思わず後ずさりするしかありません。
うはぁ、あのときの茶碗か!(第42回)
まさかのロングパス!
咄嗟によくぞ思いついた! まさかあの茶碗がこう来るとは!
おとわってこういう人でしたよね。
そうだ、第一回から鶴之丞の身代わりになって、敵を欺こうとする人でした。
一難が去ると、おとわは自然の健気さを褒めて抱きしめます。
その様子を、じっと見守る於大。彼女も殺したくはなかったのです。
「守れぬ命も、山のようにございます。ならばこそ、せめて、守れるものを」
「織田様の忘れ形見の子のこと、どうかよしなに、お願い申し上げまする」
万感をこめて、於大はそう言います。
家のために孫である元康を犠牲にしたからこそ(第45回)、この一言が胸に響きます。
自然が救われたことは、彼女にとっても救いではないでしょうか。
休む間もなく咳を患う直虎は……
自然は得度式を終え、龍潭寺の僧・悦岫(えっしゅう)となりました。
その姿は、かつてのおとわを思い出させます。
この悦岫も、茶碗のことも、史実で裏付けがあるからまた凄いのです。
ロングパス、伏線のつなげ方、脱帽しかありません。
おとわは少し疲れたようにも見え、咳き込んでいます。
彼女は休む暇もありません。
新井野家のあやめが嫁いだ庵原朝昌を徳川にとりなしてもらいたい、桔梗も夫を失ったとのこと。
この際、井伊谷の者をまとめて万千代に引き取って欲しいと言い出すおとわ。
南渓はさみしそうにしていますが、おとわは井伊谷をアジールとして機能させたい、井伊谷全体を寺がひとつあるだけ、世捨て人のための隠し里にしたいと考えているのです。
「逃げ回り、策をめぐらし、挙げ句潰しまでし、それでも命脈を保ってきた井伊じゃ。それが、井伊が負うべき役目かもしれんのう」
そう語る南渓でした。
「今となっては、ひどく生きたいと思うておりまする」
おとわは近藤康用の元を訪れます。
近藤は高瀬を養女とし、万千代とめあわせたいと言い出します。おとわと高瀬は、口をあんぐりと開けます。
「同じ顔をしておるではないか! やはり、親子じゃの」
そう告げる近藤。
騙されたふりをすれば、高瀬を手元におけると思っていたのでした。それも潮時だと。
うぅ……最終回まで近藤殿のかわいらしさがアップしてゆく、天井知らずだぞ! どうしてくれる、このままでは近藤ロスになってしまう!
おとわから井伊谷の井伊家を畳みたいと聞かされ、近藤は動揺します。
奪っておいて今更かとは思いますが、それはそれ。この人は、根は陰謀に向いていない善人なんですよ。
おとわはここから徳川に天下を取らせたいと近藤に言うと、クスクス笑うのでした。
本気なのか、冗談なのか。おとわもお茶目です。
ここでおとわは動けなくなってしまい、寝込んでしまいます。
ああ~……ギリギリまで奮闘するおとわらしいですね。
気力で頑張っていたのに、ガクッと駄目になるところが彼女らしいのです。
疲労と病で寝付いてしまったおとわ。おとわは見送るばかりの人生を振り返り、この世に未練などないと思っていたと語ります。
「なれど、今となっては、ひどく生きたいと思うておりまする。井伊の旗のもとに皆が集い、徳川の旗のもとに日の本中のものが集うのを、この目で見たい……」
そんなおとわを励まし、その日が来たら酒をたくさん飲もうな、と誓う南渓でした。
直親、政次、龍雲丸たちと井戸の中へ
そのころ、徳川遺領をめぐり、徳川と北条が対立していました。
ここで本多忠勝が、
「真田が北条についた!?」
と動揺しております。
そうそう、旧武田の国衆がうろうろしていたんでしたっけ。
昨年の『真田丸』でおなじみですね。ここで真田がいかに悪辣で厄介かわかるのは、昨年のおかげです。
万千代は慰労のために笛を吹けと命じられ、探し回ります。
しかしあるべき荷物の中に入っていないのです。
これは何やらありそうな予感です。
その晩、寝付けぬおとわはどこかから聞こえる笛の音に導かれ、井伊の井戸端にやって来ます。
井戸の側には、亀之丞と鶴丸がいました。
「待ちかねたぞ、おとわ」
「おとわ様、遅れるにもほどがございまする」
何故子供なのかと困惑するおとわ。
彼女もいつの間に、子供に戻っていました。亀之丞と鶴丸は、この先を見るために行こうと言い出します。
「いやじゃ~! 吾にはまだやらねばならぬことが! やっと先に見えてきたのに!」
亀之丞は大事ない、おとわが俺の志を継いだように、誰かがおとわの志を継いでくれると言います。
そこに、少年の龍雲丸もやって来ます。
「では皆様、参りますぞ」
「いざ!」
鶴丸がそう言うと、四人は井戸の中へと消えてゆきました。
おとわに、竜宮小僧が寄り添います。
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