現時点ではとりあえず好評報道が多いようです。
そうなんですよ。もっと描けという声や報道も見かけましたが、本能寺の変はあのくらいでいいと思います。
◆[月間トルネ番付]「真田丸」2カ月連続首位 「フラジャイル」がランクイン 2月ドラマ編(→link)
の御方もえびす顔のようです。
◆「真田丸」草刈正雄にNHK会長感謝(→link)
もーみーいー会長ぉー! 今更のぉこのぉこ、何が感謝だ、もっと先にすることがあるんじゃないのかぁ?(北条氏政口調で)……感謝より先に、井上真央さんと楫取夫妻の墓前で土下座したんですよね?
とりあえずあなたは、数字が落ちたからと無茶ぶり介入しなければそれでもういいんです。口出さないでください。
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『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』(→amazon)
先週は反響が大きかったようです。
スタッフ渾身の謀略を駆使した先週の感想をみていますと、くっきりわかれています。
スタッフは「女性はついてこられるか?」と不安がっていましたが、そこはむしろ問題ないでしょう。
むしろ先週の黒さに衝撃を受けていたのは、
50代「子どもの頃、わくわくしながらテレビにかじりついて人形劇『真田十勇士』を見ていたのに!」
60代「いくらなんでもここまで卑劣な奴は見たくない」
70代「俺の好きだった、正義の真田はどこへ行った……」
といった、幼少期に正義の真田にあこがれた世代ではないかと思います。
ちなみに本多正信を演じている近藤正臣さんもこの世代で、徳川方のオファーを受けてがっかりしたとか。ただし今は、正信役を楽しんでいるそうです。
一方、『信長の野望』世代(20〜40代)は
「やはり例の一族(『信長の野望』で異常にパラメータが高い一族/真田家、島津家をさす)」
「汚い、流石真田汚い!」
「昌幸パッパ、ぐう畜やな」
とネタ的にもおおいに受けている印象です。
昔の大河を楽しめた層と違い、今の若者はゆるいものじゃないと駄目だ、みたいな印象論がありますが、実は逆なのではないかと。
そういえば『八重の桜』の時も「戦争シーンが残酷できつい」という意見が、結構高年齢層から出ていて驚いたんですよね。
本作は性別より年代によって受け止め方が異なるのではないかと思います。
若年層はSNSで盛り上がってもNHKに意見を送る発想がなかったのか、高年齢層による厳しい意見が多いことに焦りだし、「メールフォームで送ろう!」という呼びかけが始まっています。
SNSだけでは足りないことは『平清盛』で証明済みですからね。
このレビューでも、その動きを応援させていただきます。好評意見、今週は増えているようです。
◆お問い合わせ窓口(→link)
そんな先週のポイントは、氏政の汁かけ飯のエピソード。
「汁を一度でかけないからお前は駄目なんだ」と父・氏康が嘆いたこと(史実かどうかは別)を逆手にとり、「俺は食べるところからかけるんだ、それがやり方なんだ」と逆転したそうです。
何がすごいってこの発想そのものもですが、演じる高嶋政伸さんがこの氏政と同じ食べ方をしていて、父の高島忠夫さんから氏政の故事を引いて叱られたことがある、という話ですね。
公式フェイスブック(→link)に詳細がありますので、興味のある方はご覧ください。
こちらもどうぞ。
◆「真田丸」を100倍楽しむ小話:バカ殿と呼ばれ続けた北条氏政に光明? 「汁かけ飯」に新解釈(→link)
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対北条戦で追い詰められた徳川軍が真田を味方に
はい、ではそろそろ本編へ。
今週は全開の春日信達謀殺事件で心に深い傷を負った信繁くんのセラピーと、今日もいきいきと暗躍する昌幸パパを描きます。
上杉攻めから反転して甲斐の徳川を攻めた北条軍は絶好調。徳川軍は追い詰められております。
家康はあまりに早い北条の反転に焦り、忠勝はもう「全力でぶつかるのが策」と言います。
「そんなものは策でも何でもない!」
と、ここで本多正信が正論を述べます。最もすぎるツッコミ、真面目なのに笑えます。
正信は武田旧臣・真田昌幸を使うことを提案。その頃真田では昌幸親子たちが面と向かい合っておりました。
信幸は父に感心していますが、信繁は先週の事件のせいでパパなんてもう信じないよ、という暗い顔をしています。
真田の計略にかかった上杉景勝は激怒。いつか成敗すると誓います。
直江兼続は上杉に残っている真田信尹をとらえようとしますが、謀略プロエージェントである彼は既に逃れていました。
叔父上、さすが黒カッコイイ! この短い上杉パートは、来週以降パンチとなって効いてくるようです。
信濃は国人衆で統治する! それが昌幸の提案だったが……
昌幸は国衆による信濃統治を提案。
大名になるべきだと提言する出浦昌相と高梨内記ですが、昌幸は、自分はその器ではないと固辞します。
しかしそうなると、信濃国衆ナンバーツーの室賀正武の説得が必要になります。
「アイツ嫌い。顔からして嫌い」
と、どうしようもないことを言い出す昌幸。
一方で信繁は「パパなんて大嫌い! 策って本当に必要なの? ぼくは策なんて知りたくないんだ!」と青春まっさかりの反抗期ぶりを示します。
例年なら信繁はケツの青いしょーもねーガキ扱いでしょうが、先週が鬼畜展開過ぎたので今年はまあ仕方ないな、というのがお茶の間に流れる空気ではないでしょうか。
そんな信繁に、昌相は「春日は上杉景勝を不服に思い己の意志で裏切ったのだから、自業自得だとは思わないのか? お前は優し過ぎる、もっと強くなれ」と言われるのですが。うーん、まだ信繁はティーンエイジャーだしなあ。
ただし、あの汚いとしか思えなかった謀略に別の一面が見えたのも確かではあります。
信幸は国衆による統治案に心酔しており、妻の前でその意気込みや歴史的意義を語ります。
しかし妻のこうは病弱過ぎて、会話どころではないのでした。この全く話し相手にならないパートナーというのが、今回のポイントでもあります。
傷心の信繁を見て、内記はこれがチャンスだ、慰めて接近しろと娘のきりをせっつきます。
あー、おまえの娘は駄目だ! 客観的に見てみようよ、美人でスタイルもいいけど、性格がね。
昌幸は室賀正武説得開始。
正武は北条を裏切るなんて冗談じゃないぞとつっぱねます。
が、一方で領地を北条に渡したくないという昌幸の言葉に、ついにデレます。
武田が滅んでから大名を渡り歩いたが、この大名なら安泰と思ったことはない。誰にも従わず国衆で信濃を治めるなんてふざけたことを、だが面白い、と満面の笑みを浮かべます。
これでお茶の間の「黙れ小童」への期待感はしぼみましたが、昌幸の工作は成功しました。
武田家の頃は隣村に食物を荒らされる心配もなかった
きりは信繁の部屋にやって来ます。
帰れと言われてもあがりこみ、スイーツを差し出すきり。
これが昨年なら、スイーツパワーで全て解決するところですが、今年この時間に放送しているのはまともな大河なので、そういう展開にはなりません。信繁は出かけてしまいます。
真っ白に燃え尽きた顔の信繁は、堀田作兵衛と出くわします。
作兵衛は、作物を隣村に荒らされて困っている、武田家支配下のころはこんなことはなかった。昌幸が治めればいいのに、とぼやきます。
信繁はきりを放置して、そのまま堀田家へ。
梅は信繁の話を聞きます。
春日信達にはも申し訳ないことだが、策で戦を防げてよかった、と梅は言います。
戦が起これば田畑が荒らされ、生活基盤が危うくなり、大切な人が死ぬ。今年の場合、戦による山村の荒廃も描いてきたため、例年の「いくさはいやでございますぅ〜〜〜」的な、現代平和思想とはちがった実感があります。
弱い殿様のもとで村が荒れるのも困る。かといって、戦が起こり、生活が危うくなるのも困る。
堀田家の人々は、地に足をしっかりとつけた民の姿です。
戦乱の時代だからといっても、戦っていることより失うことが多い層の人は、なるべく戦いたくなかった。
そんな当たり前のことが、丁寧に描写されているのが本作の強みです。
こんな賢い返答をする梅に、すっかり信繁の傷は癒されます。先ほど書きましたが、今回出てくる男女の会話にご注目を。信繁は梅から癒やしを得ますが、信幸はそれができません。
あたたかい梅との会話を経て自室に戻った信繁は、初恋の進展にドキドキ。
そこでふと目をやると、叩きつけられた無残なスイーツを見つけるのでした。
「黙れ小童!」ノルマもこなしてくれました
北条氏直は、真田が動かないことにブチきれています。
短い出番ながら、この氏直のキレ芸は磨きがかかってきました。
一方で昌幸は正武とコンビを組んで国衆を説得して回るのですが、どうにも反応は芳しくないようです。
正武はいきいきと前向きで、信幸にたしなめられる始末。
そしてここで、今週の「黙れ小童!」ノルマもこなしてくれました。ここで出たか! これ、そろそろ着ボイス配信しませんか、NHKさん。
話を終えた正武は信繁を見つけ「おまえの親父の顔嫌い! で、でもっ、他の大名にこの地を取られるよりはマシなんだからね。アイツ、一人で立つこともできたのに、この私に声を掛けるなんて……なかなかの男じゃない」
とツンデレトークを繰り広げていました。
デレる正武の一方で、その裏で出浦昌相が昌幸をしつこく大名になれと口説きます。
信幸は止めるのですが、昌幸の気持ちはぐらぐらと動き出します。
幼なじみ系ツンデレ正武ちゃんと、クールなようでパッションもある昌相ちゃん。二人のヒロイン(みたいなおっさん)の間で揺れる昌幸の心なのでした。
家康に手を貸し恩を売ってやろうではないか
信繁の部屋にはしれっときりが入り込んでいました。
きりの気持ちなんて無視して、梅によって策に開眼したと語る信繁。
きりはスイーツを差し出します。
これが昨年だったらまた別の展開でしょうが、今年は違います。
信繁は梅とのことで怒るなら筋違いなんだよ、おまえと俺は何もないだろと言います。
きりは「別にアンタのこと好きじゃないし! 父に言われただけし!」と言うとスイーツをブン投げて去って行きます。
こっちは、デレないなあ。ウザイと悪評まみれのきりちゃんですが、だんだんと面白くなってきました。
それにしてもスイーツを食べるのではなく投げつけるのは、昨年大河との決別を表すのでしょうか。はは、まさかね。
昌幸は亡き信玄に語りかけます。
この世に武田信玄公のかわりが務まる者などいるわけない、と逡巡する昌幸。そのまま夜が明け、何者かが近づいて来ます
。昌幸はトランス状態にでもなったのか、てっきり信玄公の亡霊かと思いますが。
そんなことはなくやって来たのは信幸です。信幸が持って来たのは、家康からのオファー書状でした。
昌幸は、これはおもしろい、負けそうな家康に手を貸せば恩着せがましくできるぞ、利用してやる、と言い出します。もうこいつ何とかしてよお!
ここで昌幸、いずれ大名になると腹をくくった宣言。喜んだ昌相は臣従を誓い、ここで正武ルートは消えたことになります。
ニヒルでクールな彼にしては珍しく嬉しそう。一方で国衆統治賛成派の信幸は「ちちうえええええ!?」とあきれ果てます。
弟・信尹も策を食って生きている そんなエナジー感じます
昌幸は信尹を徳川に派遣。この弟も、兄同様、策を喰らって生きる顔していますわ。
信尹は家康に臣従条件を出します。
諏訪、甲斐に二千貫文相応の所領、さらに上野の沼田を真田領として認めると迫る信尹。
本多忠勝はいくら何でも図々しいと怒りますが、家康はいなして「いいよいいよー、そのくらい安いものだ」と快諾。
徳川真田間で揉める「沼田領問題」の火種が撒かれました。
それにしてもエージェント信尹って、地味だけど凄いですよね。こんな胃に穴が空きそうな役目を次から次へとよくこなしますよ。
昌幸は夜、薫の寝室にやって来て膝枕。
そのための薫の膝でございます、という台詞から薫は昌幸の癒やし役なのだとわかります。問題があると言われる薫ですが、ちゃんと聞き手になるという点では合格なのです。
信幸の妻・こうはそれどころではないし、きりは全く駄目ですからね。
愛妻に子どものように甘えて、膝を撫で撫でする昌幸はなかなかお茶目です。
「お前にもお城作っちゃう〜〜」「やだあ、お城ですかあ」と、ラブラブではないですか。
若い頃からこの調子だったのかな。作中で明言されていないけど、こりゃやっぱりこのカップル、恋愛結婚でしょう。
あれをあげる、これもあげる、お前のためなら俺は何でもしちゃう、と口説いた昌幸が想像できます。
デレたり甘える昌幸の顔を引き出せるのは、薫の役目です。
とはいえ、このあたたかい空気が続くのは、昌幸が人質のことをしれっと言い出すまでですが。薫はきっぱりと断ります
。子犬のような目で困った顔をしても、昌幸はそれ以上言えないんですよね。
「では、おやすみなさい」とすごすご去るしかないという。惚れた妻には弱い男、昌幸なのでした。
真田の裏切りを受けて、北条氏政は内心腹を立てるのですが、表向きは「雑魚に関わっている暇はない」と言います。
これがのちのち、重大なミスとなります。今週はのちにつながるフラグがたくさん立っていますね。
小県の国衆は徳川について行きます。
ノリノリの室賀正武を見ていると、昌幸は例の国衆合同統治破棄を言い出せないようです。
そりゃあの調子を見ているとねえ。これはもう室賀さん、絶対次の被害者になりますね。いつか、黙れ小童を思い出してきっと泣いてしまう……。
北条を攻めることになった真田家。
その軍議で信繁は内山城を攻める正攻法ではなく、物資輸送のためには必ず通過せねばならず、落としやすい小諸城を落とすべきだと献策。一同も見事な策だと納得します。
この場面でよいのは、信繁以上に実は信幸の気がします。
弟に発言させ、嫉妬するようなそぶりもなく、むしろさわやかに褒めます。
弟は自分の大事なサポート役だと信じているからこその態度です。
そしてこの場で信繁は末席から「おそれながら申し上げます」と切り出し、促されるまで待っているんですよね。ちゃんとそういう決まりは守っているのです。
この小諸攻めは絵画駆らず、ノブヤボマップでのみ示されます。
予算は上田合戦につぎ込むと信じていますよ。それにしても回を追うごとにこのマップの芸が細かくなっていて、CGチームの奮闘を感じます。
北条は物資を立たれ苦戦。
家康は「よっしゃー!」とガッツポーズです。
昌幸もうまくいったと息子を前にして嬉しそうです。
ところがそこに衝撃の知らせが!
なんと北条と徳川が同盟を結んでしまったのです。
家康にしてみればまだ敵は多く援軍も頼れない状況。和睦はありがたい話でした。
満面の笑みを浮かべ、互いにほっぺをぷにぷにしながら同盟締結! この絵はおもしろすぎてもはや卑怯だ! やらかい大福さん(by『あさが来た』の新次郎)の持ち主はあさだけじゃなかったぞ!
そして昌幸は策士、策に溺れきり、裏目に出ましたねえ。
愕然とした昌幸の顔、いいぞ、その顔が見たかった!
お前みたいな腹黒策士、ちょっとは痛い目を見ろ!
正直ざまあみろと思っちゃったぞ!!
予告で「真田殺してもいいよね?」「真田死ねばいいのに」といろんな人から言われまくりますが、思わず頷きそうになってしまいます。真田最低、だがそれがいい!
今週のMVP:室賀正武
「べっ、べつにおまえの親父が好きなわけじゃないぞ!」
って。ベタベタなツンデレ幼なじみはきりだけじゃなかったのか! いやむしろきりより可愛いのではないかいう笑顔。
しかし彼は知らない。
いい笑顔の人ほど本作は酷い目にあうのだ(滝川さん、春日さん)……おのれ真田昌幸!
特別功労賞:
CG班の皆さんとシブサワ・コウさん
複雑怪奇な「天正壬午の乱」をすっきり見やすくでき、戦闘場面をカットしてもそれなりに説得力があったのは、CGマップのおかげです。
鷹を飛ばしたり、馬を動かしたり、芸が細かくて見ていて楽しいです。
今週の一言:
「この世に武田信玄公のかわりが務まる者などいるわけがない」by真田昌幸
これは、本作の通底するテーマではないかと思います。
本作は偉大な父の影を意識しながら生き抜く子の物語です。
そしてまた、スタッフも過去の名作の影を意識しながら、新たな平成の大河を目指している。そんな気負いを感じます。
懐古的になって「昔と違う! 昔はよかった」と言い続けたところで、過去の名作を再度作れない。代わりなぞいないのです。
ならば、新たな名作を作り続けるしかない。そんなスタッフの、偉大な背中を見ながら乗り越える決意を感じます。
総評
「息子よ、何故わしが先週あのような外道行為をしたかわかるか?」
「わかりませぬ」
「今週、おぬしは命を損なわないための戦だの、女のためなら戦えるなぞ、大河のケツの青いガキ主人公にありがちなことを口走る……」
「ええっ、そんな!」
「例年ならば、そのようなことをほざいた奴は、何眠たいことぬかしとんねんとボコられるまでよ」
「ええっ、そんな!」
「だが今年はこの父がおまえをとことん追い詰めてやったわ。おかげでおまえが何をほざこうと、それも仕方ないねとかえって同情する……ククッ、視聴者なぞ戦国は厳しい、もっと緊迫感をなぞとほざいておいっても、いざ容赦ない外道行為をすればコロッと甘ったれたことを言い出すものだからな」
「父上の深慮遠謀ですか。しかしあまりに真田にあこがれる視聴者の夢を破壊しているのでは?」
「いいか源次郎。これから先、わしはえらい目にあう。因果応報じゃ。主役が酷い目にあうと視聴者は嫌な気分になる。しかしわしが鬼畜行為を繰り返せば、その思いも軽くなるんじゃ。『八重の桜』みたいに主役側が誠心誠意動いているのに殴られまくると、視聴者はヒーヒー泣き叫びながら厳しい意見を送るようになる! せっかく一生懸命作っても文句ばかりなんだ」
「えぇ……結局どうあがいても大河ってボコられるじゃないですか」
「そうだ! 武将JAPANなんてサイトのレビューは特にひどいぞ! だからもうここは、三谷の好きなようにさせるしかないんだ!」
という会話を妄想してしまった今回です。
策士・三谷幸喜が描く策士・真田昌幸、視聴者の反応まで掌にのせてくるくる回している感覚があります。
三谷氏の力量もさることながら、このどこまで黒くできるかのチキンレースに挑み続ける屋敷Pも剛の者です。
しかもこの人、『江』も担当していたんですよね。あの大河史に残る汚点からよくぞここまで到達できました。
一度徹底的に挫折したからこそ、陽(ひ)はまた昇ったのでしょうか。がんばれ、屋敷Pもがんばれ!
それにしても、武田→織田→滝川→上杉→北条→徳川……毎週掌返しばっかりしていますよね。
それでも飽きさせない、結局同じことばっかりしていると思わせないのは、軽妙なギャグと黒い策略をテンポよく、バランスよく配合しているからでしょう。
春日信達謀殺のようなえげつない策はなかったものの、やはり今週もえげつないことをしています。
そもそも本作って、黒さがボジョレーヌーボーのコピー並じゃないですか。
第一回「ここ数年の大河で一番黒い主人公父」
第二回「まだ序盤だが味の濃い黒さが堪能できる」
第三回「策略は上々で息子を巻き込み申し分の無い黒さ」
第四回「家康と渡り合う中々の黒さ」
第五回「窮地の中でも陰謀味が豊かで上質な黒さ」
第六回「迫り来る不安と、可能性に賭ける決意が調和した黒さ」
第七回「ギャグでも誤魔化し切れない、滝川一益を裏切る、コクのある黒さ」
第八回「視聴者を圧倒する、狡猾きわまる地獄の底のような黒さ」
第九回「ソムリエも納得、奥深い酸味もある、まさに匠の黒さ」
毎週黒い、毎週毎週汚いことばっかりしやがって、という意見も当然あるとは思います。
ただ、これこそ取り得る最良の戦略だと思うのです。
根性のない脚本家ならブン投げてしまうし、視聴者も頭が混乱しそうな「天正壬午の乱」を、昌幸の黒さとテンポのよいギャグ、そしてノブヤボマップで表現するというのは、うまいなあとうなってしまいます。
懸案だった女性陣の描き方も落ち着いて来ました。きりは面白くなってきたし、薫は甘えモードの昌幸を引き出す役目を果たしました。
梅はむしろ出来過ぎているような感もありますね。
梅といえば、会話で戦への嫌悪感をうまく表現しました。
信繁の策への嫌悪感も説得力がありましたが、このあたり実感がないまま展開すると薄っぺらく、嘘っぽくなってしまいます。
今週は次週以降の伏線もたくさんありました。
思えば信長の死から僅か数ヶ月で、上杉、北条、徳川に中指立てている真田家。
大名に翻弄されるどころか、大名を煽りまくる真田家。
一艘の小舟どころか武装海賊船のような真田家。
この厄介な災難を呼ぶ船が、漆黒の帆を掲げてどこへ向かうのでしょうか。
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真田丸感想