さらにニュース自体はここではリンクを張りませんが、芸能人で「黙れ小童!」を使用する例があるそうです。
そしてこんな珍事が。
◆大河ドラマ:観光客「えっ真田丸の城、滝の上にないの?」(→link)
今年の放映前「高度なVFXは実写と見分けつかないんだから、『ゲーム・オブ・スローンズ』くらいバリバリ使っちゃえ!」と書いた記憶があるのですが、私が言うまでもなく今年は多用しているようです。
そして区別がつかない人も大勢いる事態になっているようです。
ちなみにこのタイミングでOPに使用したVFXメイキング映像が公式サイトで公開されていますので、興味がある方は是非ご覧ください。
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『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』(→amazon)
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こう「またみんなで一緒に暮らせるのね」 信幸「・・・・・・」
今週は、昌幸一行が上田に戻るところから始まります。
松は母や祖母らと感動の再会を果たすのですが、ここでこうが「また皆で一緒に暮らせるのですね」と言ったため、信幸の顔がひきつります。
信幸は稲との結婚の件について話すため、こうに頭を下げるのですが……おこうは健気にも、どうか頭を下げないで欲しい、たとえ離縁だとしても、と言います。
そしてはたと、夫の意図に気づいてしまうのです。
しかしこうは驚きも怒りもしません。あまりにあっけない反応に、信幸は拍子抜けします。
ここでも夫を気遣い、悩み抜かれた末なのだろうから、と理解を示すこう。しかしこらえきれず、「一体何故離縁されるのでしょうか」と泣き出します。
政略結婚のため離縁しなければいけないと言う信幸。
二人は感極まって抱き合い、悲運を嘆きます。
真田信幸" width="370" height="320" />
この話を聞いたとりは、この離縁はあまりに酷いと怒ります。ここまで乱世の女としての生き方を示してきたばばさまです。
薫に「茂誠(松の夫)は死んでいますね」とあっさり言ってのけたばば様です。その気丈な女性が、この話はあんまりだと怒りを隠せないのです。
考えてみれば、とりにとって二人は孫同士です。
こうは亡き長男・信綱の子。幼くして父を亡くした孫娘のこうが、とりにとってはいじらしくかわいらしくて仕方なかったのでしょう。
が、しかし。
「いやあ、わしは断ったんだけどね、源三郎がさあ、どうしてもって言うからさあ」
しれっと大嘘を言う昌幸。こいつはゲスい平常運転だぜ!
昌幸の嘘には慣れきっていましたが、今回ほど腹が立ったことはありません。
貴様は姪が可哀相じゃないのか。もう昌幸を殴りたい。私が信幸ならパンチを入れてますね。
こんな状況でも父を殴らない信幸は偉いと思います。かくしてこうは、里に帰されることとなります。ここで松が、
「あなたのことは正直よく覚えていません。めげずに生きていてね、生きていればいいことあるからね」
とフォローになっていないフォロー。
こうも「わざわざ言わなくてもいいです」と返します。確かにいらん一言です。
薫はこうに体を大事にするようにと労り、とりは感極まった様子で孫娘を抱きしめます。
ゲスい昌幸の平常運転
そしていよいよ、本多忠勝の娘・稲が輿入れします。
姫の後ろで天然パーマの付き人がフルフル……。
お前のような付き人がいるか!
どう見ても忠勝です。
祝言での夫妻のカチコチした顔は、信繁と梅の時と比較するとなんとも。娘の身を案じ、鼻水まで垂らして号泣する天然パーマのお付きこと忠勝を見て、薫は「今度の嫁はずいぶんと使用人にまで慕われているのね」と驚きます。
昌幸は「あれは父親だから」とネタばらし。
薫が入れてあげなくてはと気遣いますが、「せっかく化けているのだからそっとしておこう」と昌幸からは言われてしまいます。
それにしても忠勝さん、お茶目過ぎます。本人は真剣なのでしょうが。
嫁いだのに敵地にいるようで、まったく打ち解けぬ様子の稲。
ここで不便はないかと聞かれた稲は、「本当によいのですか?」と何度も念押ししてから、夫に寒いと言います。
妻というより、人質だと自分を考えているかのようです。
そこで信幸が、廊下にいる侍女に声を掛けると、聞き覚えのある返事が……なんと女中は里に戻ったはずのこうでした!
こうは薫の情けで侍女として仕えることになったそうです。とりもかわいい孫娘のことですから、このことを歓迎します。
「いいじゃん、おこうを側に置けるなら」
昌幸はまたもいい加減な調子でそうまとめようとしますが、信幸は「できるわけないだろぉ!」と叫びます。
確かにこれはちょっと気持ちの整理がつきませんよね。でもどうせ、誰も信幸の言うことなんて聞いていないんだろうな。
今週のほのぼのパートはこのあたりで終わります。
あとは殺伐秀吉パートです。天皇のもとで大名に臣従を誓わせた秀吉は、いよいよ信長越えを果たしたと有頂天です。
ほのぼので始まったが殺伐秀吉パートへ
しかし我が世の春を謳歌する秀吉にも、大きな悩みがあるとほくそ笑む家康。それは後継者問題です。
ようやく天下を手中のおさめたといえど、それを誰に譲るのか頭が痛いだろう、と本多正信に言います。
天正十七年(1589年)の正月を迎え、寧はじめ貴婦人たちが集い、世間話をしています。
阿茶局は「たいした生まれでもないのに、天下人の妻としてよくやっていますね」と、高度な嫌味に聞こえなくもない褒め言葉を寧に言います。寧は軽く受け流しています。
さらに阿茶局は、マイペースに菓子を食べまくる様子を見て、あれは妊娠しているのではないかと寧に伝えます。
寧は笑いながら即座に否定するのですが、阿茶局はこういう勘は当たるのです、と軽く反論します。
このとき寧と阿茶局の、妊娠に対する意見は何故食い違ったのでしょうか。
勘の差、あるいは妊娠体験の有無といった単純な話でもなく、寧は茶々に子供が出来て欲しくなかったのではないかとも思います。
そしてそれは単純な嫉妬といったことではなく、もしも子が産まれるようなことになれば、天下に災厄の種が蒔かれることを危惧したのではないでしょうか。
これはこのあとの寧の言葉から推察できます。
阿茶局の勘は当たり、五十四才の秀吉初の子(本作での設定、他に子がいたとの説もありますが信憑性は低いとか)ができたことになります。秀吉は喜びを爆発させます。
この懐妊については民の間にも知れ渡ります。そしてある夜のこと、誰の子かわかえらないと揶揄する落書きが門前に書かれます。
書かれた落首は、
ささ絶えて 茶々生い茂る 内野原 今日は傾城 香をきそいける
などとあります。
見つけたら即座に消せばよいものを、偶然通りかかった片桐且元が秀吉に報告したばかりに最悪の展開に……激怒した秀吉は、犯人を見つけ出せと息巻きます。
多忙な石田三成にかわって、信繁とまるでやる気のない平野長泰の捜査が始まります。
書くのに使ったのは消し炭、梯子を持ち歩いていたはずだ。
月明かりがないのだから一人は松明を持っていたはず、つまり単独犯ではない、と推理する信繁。このあたりの推理はミステリ仕立てです。
捜査結果を三成に報告すると、三成は大谷吉継と刀狩りについて会話しています。
刀(武器全般)の没収、とかして大仏を作るのだと説明する三成。本作は日本史の勉強にも役立ちますよ。
と、この会話を聞くと「刀狩りって素晴らしいなあ」と思えるわけですが、庶民はどうだったかと言いますと。その答えはあとで出てきます。
秀長さんピンチで歯止めはいよいよ効かずに
信繁と三成の推理から、尾藤道休という本願寺に逃げ込んだ門番が怪しい、ということになります。
道休は背中を打ち痛め、寝込んでいるそうです。
現場には梯子の段とみられる木片がありました。梯子から落ちて背中を打つのもありえることです。
この時代、寺はアジール(俗世の法体系とは別の場所)としての機能を果たすため、犯人だろうと逃げ込まれた側は匿わねばならないのです。
こうなると捜査は行き詰まります。
三成は病床の秀吉弟・秀長に、本願寺宛に一筆書いてもらうよう頼みます。ここで秀長という、秀吉政権のブレーキ役はもはや壊れかけていることが示されます。
こうしてやっと捜査を続けられることになった信繁たちは、道休から事情聴取を行います。
乱暴者と言われる彼は、山村に産まれながら農業が嫌いなごろつきでした。足軽になるくらいしか取り柄のない道休でしたが、刀狩り例で戦もなくなり、仕事を失ってしまいます。
やっとのことで門番の職を見つけたものの、それも誰かと戦うわけではないと嫌気がさしていたそうです。
彼もまた、乱世の申し子なのでしょう。
こうしたあぶれ者が足軽として戦ったからこそ、乱世は成り立っていたのです。
そして彼はまた、「成功しなかった秀吉」とも言えます。
秀吉ほどの才知に恵まれなかったあぶれ者は、彼のように乱世の終わりとともに存在意義を失っていったのでしょう。刀狩りは、道休のような者にとっては災厄だったのです。
門番の仕事すらまともにする価値がないと腐っていた道休。彼は当日も、他の勤務日も小屋で酒を飲んでいたそうです。
こうなるとますます怪しいのですが、彼は絶対に犯人ではありませんでした。字を書けないのです。
道休ではなく、犯人は道休が真面目に警護しないと思った者、ということになります。
つかみかけた犯人捜しがまた振り出しに戻ったと、三成に報告する信繁。この話を横で聞いていた吉継はついに立ち上がります。
「たかが落書きではないか。ばかばかしい」
そう諫めようとする吉継を、三成が止めに入ります。
三成は吉継よりも、秀吉のことをよく知っているのです。情がないと加藤清正に酷評された三成ですが、親友の危難は断固として守る熱さが見えてきました。
秀吉は怒り心頭です。
こうなったら門番全員を解雇し、磔にすると言い出します。
誰も秀吉を止めることはできず、門番たちは牢へ収監されます。このままでは捜査担当者も危ないぞ、と長泰は焦り出します。
信繁はきり経由で、秀次に取りなしを頼みます。
きっちりと信繁の依頼をこなすきりは今週もよくやってくれます。きりの頼みならばと聞いてくれる秀次も、また安定の好青年ぶりです。
直球勝負で「馬鹿なことはするな、って言えば!」と言うきり。ストレートではありますが、視聴者の意見を代弁しています。
それはちょっとと渋る秀次に、信繁は「天下万民の好意を裏切るな」と諫めたらどうか、と秀次にアドバイスします。
秀次はその言葉通り諫めたようですが、まったく効果はなく、秀吉はますます怒り狂います。
「自分を馬鹿にするのは構わん、だが息子を馬鹿にするな、犯人どもは耳をそぎ、鼻をそぎ殺してやる」と息巻く秀吉。
こうして門番たちは磔にされたのでした。
息子のためなら流血をいとわないと息巻く秀吉、そしてそれに怯え何もできない秀次。
この状況は、このあともっと凄惨なかたちで繰り返されることになるでしょう。
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オールフォアワン ワンフォアオールの三成の苦悶
信繁が三成に抗議に行くと三成は酒を飲んでいました。
三成と話しあうことができずに廊下に出た信繁に、三成の妻・うたは「夫はずっとああして酒を飲んでいます。そして酔えぬと言うのです」と打ち明けます。
彼女の言葉は少ないものの、その短い一言に深い意味をこめる才知があります。
苦渋の三成が盃を傾ける前には、「大一大万大吉(一人が万人の為に、万人が一人の為に尽くせば天下の人々は幸せになれる)」と書かれています。
秀吉に才能を見いだされた三成は、主君のもとでこの理想をかかげ、万人のための天下を作り出すため邁進してきたのでしょう。
ところがその理想からかけ離れてきてしまっている。
天下を獲った秀吉は、万人のことなぞ気に掛けず、自分と我が子のことしか考えていない。
自分はどこで間違ったのか、三成はそう自問しつつ苦い盃を重ねているのでしょう。
門番たちの凄惨な死なぞ気にせず、秀吉は生まれてくる子に木馬を用意して大はしゃぎです。
信繁ときりは寧を見かけ、現状の悲惨さを訴えます。
寧は、秀吉は痛いところを突かれた、茶々の腹にいる子が自分の子か、秀吉自身が一番疑っているのではないかと推理します。
きりは、秀吉はおそろしい、人が変わったのではないかと寧に言います。寧はよくそう言われるけれども、それは違うと否定します。
寧は
「秀吉は昔から怖い人、ずっと冷たい人、信長より恐ろしい男だった」
と語ります。そうでなければ天下など取れない、と。
阿茶局に夫の出世にも善し悪しがあると語っていた彼女ではありますが、その真意がわかるとぞっとします。
先週、秀吉が、寧は戦仲間であり女としては見られないと語った意味も見えて来ます。
寧はあまりに夫の残酷な一面を見すぎてしまい、素直な愛情だけを感じることはもうできないのでしょう。
秀吉は茶々の前から血の臭いがするものを消し去るようにしていました。
己の血なまぐささに気づいたら、女は自分を愛することができなくなるとわかっているのかもしれません。
しかし秀吉はもう破壊と暴力衝動を抑えることはできなくなっています。遅かれ早かれ、茶々も彼の残酷な本性を知ることでしょう。
道休は死んでいた こうなったら罪をかぶせるしかない!?
秀吉は犯人が名乗り出るまで、くじ引きをして町人を磔処刑すると言い出します。
三成、吉継、信繁はこの知らせに戸惑います。
そのとき、本願寺から道休が死んだと知らせが入るのでした。
実のところ、自然死ではなく自害です。
本作も死因をはっきりとさせていませんので、責任をとったゆえの自害かもしれないと思わせます。
信繁は道休に罪をかぶせ、無実の人がこれ以上巻き込まれないようにしようと言い出します。
危険な賭けではありますが、三成と吉継も腹をくくって信繁の案に乗ります。
実休の首を吉継が切断し、工作を行います。
ここで手慣れた様子で首を切り取る吉継の姿から、彼の武人としての像が垣間見えます。
真田信繁" width="370" height="320" />
犯人の首を見た秀吉は、これで怒りがおさまったかと思ったらそんなことはありませんでした。
犯人の一家親類も斬首、家を焼き払い、近隣の住民を磔にしろと吐き捨てる秀吉。
三成が諫めにかかると、信繁も口を出そうとします。三成は信繁を一喝し、口を出すなと止めます。
兼続の言っていた「熱いもの」が三成からあふれ出しました。
秀吉は必死の諫言をする三成に「佐吉(三成)は狂ったのか」と返します。
三成は熱い口調で、「佐吉は正気だ、乱心されているのは殿下です」と詰め寄ります。三成に切腹を言いつけようとする秀吉のもとに、寧がやって来ます。
「怒れば怒るほど人は本当のことだと勘ぐるのだ、それがわからないほど耄碌したのか」と諫める寧。
「産まれてくるのは自分の子なんだからでーんと構えろ、どうしても心配なら茶々に聞いてみなさい」と続けます。
ここで秀吉は「そんなおそろしいことができるか!」とうなだれます。
おそろしいこと、ですか。
秀吉にとっては、無実の人を殺すことよりも、茶々に腹の子が誰か聞くことの方がおそろしいということです。
自信に満ちあふれ、天下を我が物とし、先週は茶々を日本一幸せにすると語っていた秀吉。
しかしコンプレックスも抱えているのです。
そこに茶々本人が入ってきます。艶然といたずらっぽく笑う茶々。
この子の父は源次郎です、と洒落にならないことを言ったあと「殿下の子に決まっておりまする!」と言い切る茶々。
地獄のようなひとときを経て、ここでやっと秀吉は茶々を追いかけ去ってゆくのでした。
信繁「落首の犯人は誰だ?」三成「決まっている、民だ」
寧はせめてもの罪滅ぼしに何か町民にしようと言い出します。
信繁が金をばらまいたらどうかと提案し、三成はちょっと下品だと難色を示しますが、寧はそれがよいと賛成します。
まあ、そのお金だって出所をたどれば町民の出した税金のわけで、それで恩着せがましくされてもな、とは思うわけですけれどね。
そしてお気づきになりましたか?
秀吉は茶々の元に嬉しそうに駆けよって行きましたが、「殺すのはやめにした」とは言っていません。
史実では道休は自害を強要され、かくまった僧侶は殺され、秀吉が指示した通りに道休の縁者や近隣の者は殺害されています。
フレーム外では殺戮が続いているのです。
結局のところあの落首の犯人は誰だろうかと尋ねる信繁。
「決まっている、民だ」と三成は返します。
「大一大万大吉」を掲げ、民のためを思ってきた三成にとって、民に背かれることほど苦しく哀しいことはありません。
しかし、彼が秀吉に忠義を誓い続けるということは、民に憎まれるようなふるまいを執行しなければならないのです。
これから三成は、民の殺戮をすべく手配しなければなりません。
秀吉は、道休関係者殺戮をやめるとは言っていませんから。
こうした混乱と殺戮を経て、秀吉と茶々の子である「捨」が誕生します。
産まれたそのときから、たっぷりと犠牲者の血を吸った赤子です。
親の目にとってはこのうえなく無垢な赤子でも、民にはそうは見えないでしょう。
今週のMVP
こう。
寧とかなり迷いましたが、もうこうが好き過ぎてつい。一番本作で好きかもしれません。
稲までのつなぎだろう、ネタキャラだろうと思っていたら、どんどんチャーミングになっていき、自分の中で彼女の存在が大きくなっていきました。
今週は本当に気の毒で、かなり感情移入しました。
自分の姪で嫁なのに、へらへらいつもの調子だった昌幸が本当に憎たらしく思えて、自分の中でこうがこんなに大きくふくれあがっていたのか、と驚いてしまいました。
長野里美さんの演じ方が本当にいじらしく、うっとうしく、かつ愛おしく思えます。
彼女が退場しなくてほっとしました。
侍女としてまさかの再登場おめでとうございます。
目立つことはなくとも、これからもちらちらと顔を見せてください!
総評
前半部の上田パートをのぞくと、ずっと意がキリキリと痛むような、辛い回でした。
上田合戦よりも緊張感がありましたが、考えてみればあの合戦の真田方死者より、今回処刑された人数の方が多いんですよね……。
結局のところ、信繁は何ができたのか?
犯人も見つけられず、門番の死を止めることはできず、実休を利用した策をもってしても殺戮を最小限に抑えることはできませんでした。
『軍師官兵衛』の官兵衛のように、秀吉を諫めて一瞬でも改心させる役割も、寧に持っていかれています。
本作の信繁は無力です。
彼はありとあらゆる場面に顔を出し絡んではいるものの、与える影響は軽微です。
その聡明さは随所で示されるものの、その知能をもってしても、できることは限られているのです。
だからこそ例年のように、主役が悪目立ちしないのでしょう。
そのぶんカタルシスは減っているかもしれませんが、それこそ本作にふさわしいとも言えるのではないでしょうか。
『天地人』のような出来の悪いドラマでは、主役が西軍につくせいもあってか秀吉の悪事をぼかしました。
そうでなくとも、多くの作品で秀吉は人が変わったという解釈がなされてきました。
ところが本作ではそれをひっくり返し、糟糠の妻である寧があれは初めから怖い人だった、だからこそ天下を取れたのだと言います。
そんな怖い人間のもとに人が集まり、天下を獲らせてしまったのか。
だからこそ怖いのです。
秀吉は渦のようなもので、人を引き寄せるのです。
初めはその魅力によって、権力の座にのぼりつめてからはその力によって。引き寄せられる人は、抵抗することなどできません。
ですから、「こんなひどい男なのになぜ彼は味方したのか?」と問いかけることは無意味です。
秀吉の前で選択肢はないのです。
信繁の乗った船は巨大な渦に引き込まれ、飲み込まれて沈む運命にあります。
しかし、その渦に巻き込まれずに波を乗り切った男がいます。
それこそが徳川家康です。
そして本作を最初から見ていれば、実は彼こそ人が変わったのだと気づくはずです。
信長の元で働き、「生き延びられれば十分じゃ」とつぶやいていた家康。
伊賀越えでみっともない姿を見せていた家康。
ところが今は貫禄たっぷりです。
家康はこれからも成長し続け、豊臣という渦をものともせず天下をつかみ取るのです。
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文・武者震之助
絵・霜月けい
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真田丸感想