今回は自信があったそうですよ。
日刊スポーツのインタビュー記事です。
◆「西郷どん」鈴木亮平、江戸無血開城の放送に自信(→link)
鈴木は「桜井さんが試写会を開くのは、自信のある回なんですよね。今回は特に自信がある回なので、皆さんの心に届けば」と願った。
そりゃあ、そう言わなきゃならん事情もあるんでしょうけど、こちとら気分はこんな感じすわー。
↓
というか、ですね。
一体これは何なの?
と眉をひそめずにはいられなかったのが次の一文です。
東北勢との戦乱を前に、ひと息つける場面が訪れる回でもある。
おい。
おいおい。
戦乱を前に「ひと息つける」って言い方はさすがにあんまりでしょ。
まるで東北が戦争をしたがっていて、西郷どんにとっては避けがたい天災みたいに言われています。
そもそも戦いを強引に仕掛けていったのは、薩摩じゃないの?
赤松小三郎を殺したり、江戸に放火したり。
一体どうしちゃったの?
まぁ、今更だけどさぁ。
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【1分あらすじ】幕府関係者の謝罪リレー
江戸城総攻撃寸前。
西郷どんは、幾島の手引きで、セキュリティがザルとしか思えない江戸城へ向かいます。
ここで、天璋院篤姫と再会するのです。
おう、ええぞ、天璋院、江戸城まで放火した薩摩にガツンと言ってくれや!
ところが……。
「慶喜の首もあげるし、私が死んでもいいから許して〜」
え? えぇえ……?
このあと、隠れ家カフェで勝海舟とゆるふわトークになります。
「ごめんね、幕府降るから許して」
ゆるい……。
そして慶喜ともご対面。
「ごめんね、フランスのせいなの。許して」
こんな幕府関係者の謝罪リレーで江戸は救われました。
無血開城っていうより「土下座開場はコチラ」みたいな。
「そうやって土下座リレーしたのに、ゲスな連中が戦争するし〜」
今週もそうやって悪いことは全部幕府のせいにします。
こんなに平和主義者なのに戦争が起こっちゃうなんて、とオロオロする西郷どん。
「戦の鬼」だったんじゃなかったっけ?
キャラがブレブレで、さすがにワケがわからないよ><;
ともかく行ってみましょー。
史実の篤姫は【島津を絶対許さない!】
江戸城総攻撃は3月15日です。
またも便意を堪えている系の顔をした西郷どんは、天璋院に出会います。
セキュリティ……先週、本作は時代劇を描くうえでの常識的センスがないと指摘しましたけれども。
この、ホイホイと軽い気持ちでどこにでも行くのは、やめた方がいいです。
『花燃ゆ』も、文ちゃんが散々瞬間移動しておりましたけれども……。
時代考証が駄目な時代劇は、こういう瞬間移動をしてしまいます。
大久保が西郷どんの島流し先まで来ましたもんね。
そして……。
この天璋院の酷さと来たら……いくらなんでも歴史修正がひどい。
なぜ微笑んでいます?
史実の天璋院は、薩摩島津家を絶対許さない!という態度でした。
本作での篤姫は、まるで癒しガール、チアリーダーみたいな性格ですが、史実はもっと強気で、ついでに酒豪でした。
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要は、史実を基に描くのではなくて、視聴者がこういうものを見たいんでしょ、という判断からの人物像なんですよね。
しかし、天璋院の土下座レベルのトーク内容がもう、唖然。
頭を下げねばならんのは私だ、頼みを聞いてくれだとか、正直、史実の彼女をバカにしているレベルです。
戊辰戦争ドロ沼の理由、ご存知ですか?
西郷どんは、彼女の用件が慶喜公の助命嘆願だと見抜きました。
「慶喜の首ひとつでこの戦を終わらせてくれ」
もう本当にイヤだわ、このドラマ。
あのですね。
戊辰戦争が泥沼にぶっこんでいった理由、ご存知ないです?
倒幕側が、しつこく会津藩主・松平容保の首を要求したからですよ。
当時、主君の首を要求されたら、話はもうマトまらない。
それが江戸時代の規範です。
ちなみに長州が瀕死の状態に落ち込んだ「長州征伐」では、松平容保が擁護しているほどです。
長州藩主の死罪処分は重すぎると、緩和を提案しています。
つまり、会津藩は、容保の首を要求される限り、トコトン地獄に墜ちるまで戦うしかない。
倒幕側もそれを知っている。
仙台藩や米沢藩も、そんな会津の事情を知っているからこそ仲介に入り、後の
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へとつながるのです。
冒頭の「東北勢との戦乱を前に、ひと息つける場面」って言葉が、どれだけおちょくった話かご理解いただけるでしょう。
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武士としての忠義はドコいった?
話を戻しますと、先週の勝海舟や、天璋院のように、ボールを蹴り飛ばすレベルの気安さで「慶喜の首」をどうこう言うのはおかしい。
史実において、山岡鉄舟の頼みを西郷どんが聞き入れたのも、
「首の要求はやりすぎ。取り返しがつかない禁じ手になる」
と指摘されたからです。
本作では山岡の「切腹するする詐欺」にほだされたような描き方ですが。
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ともかく慶喜はゲスでみんなから嫌われまくりだと本作は言いたいようです。
コチラとしましては、慶喜周辺がクズにしか見えんのですが。
しかも、天璋院がそう言っている理由は、西郷どんが一番欲しいからだって。
幕末の人間として、もう、最低最悪ですよ……本作の武士は、武士としての忠義を1ミリも持っていない。
なんで格下、薩摩の下級藩士の出である西郷どんごときに、お姫様、元御台所がヘコヘコヘラヘラ土下座してる?
江戸時代の身分についてすら、勉強したくないのでしょうか。
ちなみに西郷どんの率いた「薩摩御用盗」放火のせいで、天璋院が住んでいるお城まで火がついています。
そんな状況で薩摩藩士である西郷がのこのことやってくるあたりがもう……。
「じゃっどんこの戦を止めることはできもはん」
更に。
なにがビックリかって、ここで将軍継嗣問題の回想が出てきたことですね。
慶喜を将軍にプッシュしたこと、忘れていなかったんだ。
そーなんだー!
今更思い出した感、満々だけれども……。
ここで天璋院、自分も自害すると言い出します。
慶喜と自分が死ぬから徳川家を救って、だって。
西郷どんは、天璋院を追い詰めてごめんね、と言い出します。
「じゃっどんこの戦を止めることはできもはん」
慶喜ぶち殺す、徳川ぶっ潰すと言い出します。
まぁ、そのために「薩摩御用盗」を出動させました。
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この西郷どんが、カッコよいく見えるのかなぁ。
ただ,
「徳川の名にかけて戦うのみ」
という覚悟の天璋院はよかったです。
もうさぁ、前段無視してここまで飛んでいいよ。幾島がゲホゲホするのはどうでもエエ。
この天璋院への同情が無血開城の前振りになる?
折り目正しい武士らしい武士が見たいだけなのよ
そして、総攻撃前日。
慶喜、すごく隠れ家カフェっぽい寛永寺で読書中です。なんだこのロハスな江戸描写は!
西郷どんは、なんとなくノリで(そうみえるんだよね)、山岡鉄舟に説得されて勝海舟と話すことになります。
「よう、西郷どん」
史実の勝海舟は、西軍の江戸侵攻に対し、ナポレオンを撃退したロシアを真似して焦土作戦を考えたほどです。
そういう緊迫は皆無。
遠藤憲一さんをただのぬるい親父にしてしまった本作って、本当に恐ろしいなぁ。
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そうそう。
それと、勝海舟をずっと軽い江戸弁にするのやめてくれーい。
幕臣なんだからフォーマルな言葉遣いくらいするし、西郷と勝海舟の想像図だって、ちゃんと正座しているでしょ!
ロハスな隠れ家カフェでお茶をしているようにしか見えない。
緊迫感レスな幕末って……どこに需要があるのでしょうか。
しっかし、山岡鉄舟にせよ、天璋院にせよ、この勝海舟にせよ、イキナリ腹を見せた犬のようです。
プライドを感じません。
「へへーっ、幕府は負けました。許してくださーい」
とでも言いたげ。これじゃあ幕府と佐幕派が、あまりに不憫だわ(´・ω・`)
こんな調子だから『八重の桜』再放送が喜ばれるんだよ!
立場は違えど、みんな折り目正しい武士らしい武士が見たいんですよ!
こんな隠れ家カフェにいる「ゆるふわおっさん」と「便意我慢男」が話し合うところなんて、見たかぁ~ない。
これが男にもモテるってこと?」
あと本作、音声は大丈夫ですか?
両者のボソボソ声が気になります。
二人とも滑舌が悪いわけじゃないはずなのに、非常に聞き取りづらい。
音声スタッフさんのヤル気が尽きたとかないよね?
私たちが慣れない薩摩弁のせいだけではないでしょう。
まぁ、ともあれ、隠れ家カフェでゆるふわ幕臣・勝海舟に説得された西郷どん、総攻撃をやめました。
これでエエ話とか思っちゃう人もいるだろうなぁ……。
赤松小三郎の暗殺、薩摩御用盗の悪事、相楽総三の悲劇等々。
西郷や薩摩には、簡単にはチャラにはできない黒歴史が多々あります。まぁ、ドラマでは描かれないんでわからないんですけどね。
勝海舟も、すっかり腑抜けた人になってしまって、
「俺は西郷どんファンだから」
とかいう発言も心の底から意味がわかりません。
「どういうこと?これが男にもモテるってこと?」
西郷と勝の歴史的な接近経緯なんかバッサリ省いて、ただのロハスカフェに入り浸るただのゆるふわおっさんにしやがって!!!
そんなにモテモテなら、なぜ下野することになった?
西郷は、男にも女にもモテモテ。
そんな無理設定を押し通したもんだから、今後も矛盾がキツイですよ。
特に、西南戦争。
そんなに西郷がモテモテなら、なぜ、新政府内で対立し、下野することになった?
この究極の矛盾、どうやって解消するのよ(´・ω・`)
完全無欠のモテモテだったら、大久保利通も、川路利良も、岩倉具視も、伊藤博文も、誰も彼も敵になんて回らなかったでしょうに。
ここで「江戸の桜が見られる」とか言い出す勝海舟もゲス極だなぁ。
彰義隊とか、薩摩御用盗に殺された人とか、それどころじゃない。
江戸では、この時期、犠牲者が出ているんだってば!
そんな状況なのに、自分は「お花見たーのしー!」とかゲスなの?
主家が滅びて桜が綺麗ウフフって、福沢諭吉が見たら、助走つけながら勝を鉄拳制裁するレベルでっせ。
フランスから逃げたってどないやねん
慶喜は、西郷どんと面会します。
この、西郷どんに面会した幕府関係者が全員腹見せ犬にする演出は何がしたい?
俺を殺しにきたのか、とか言い出す。
よっしゃ高橋泥舟さん、この薩摩っぽを槍術で追い出そう!
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まぁ、こんなVIPに護衛がつかないわけないでしょ。
ヤンキー漫画のタイマンじゃないんだから、江戸時代のセキュリティを理解してぇ!
ここで西郷どんが、なぜ逃げたのか聴き出します。
そりゃあ勤王思想が強い水戸徳川家出身だから、錦旗には参るでしょ。そう思っていたら……
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「俺はロッシュから逃げたのだ」
はあ
慶喜は、
「フランスが銃をくれるかわりに、勝利したあかつきには、薩摩をよこせとを言うから逃げたんだもん」
と言い訳。
史実では、フランスは「いざという時は船を出します、亡命しましょう!」と持ちかけていました(以下に関連記事)。
慶喜っていうよりヒー様だね、ずっと友達だよ
「フランスが薩摩を欲しがった」
そんな本作屈指のゲスかつ無根拠で、戦前レベルの捏造であるデタラメ。
いい話だと言いたげに出すわけですが、逆効果ッスよ。
幕府は長州征伐でも外国からの援助を断っているのです。
一方で明治新政府は、イギリスから介入を受けております。日露戦争の遠因説もあるほどです。
樺太も、イギリス介入で手放しております。
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そんなツッコミに事前に答えておきますが、戦前の日本経済に貢献しておりました。
ついでに言いますと、この日ロ間の交渉のせいで、樺太先住民は大打撃を受けました。
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なんせ鯉登少尉の方が薩摩隼人として考証的に正確なんだよなんですね。
ともかく、素直に心情を吐露した徳川慶喜。
これに対し西郷どん、
「慶喜っていうよりヒー様だね、ずっと友達だよ。よくぞ逃げて日本を守ったね」
と言い出します。
いやいや、いやいや。
史実では、赤松小三郎あたりの提案を受け入れて倒幕をやめていれば、日本の危機なんてそもそも発生していなかった。
ここで慶喜が泣くのも最低です。
慶喜までお腹を見せるワンちゃんになってしまった。
こんなゆるふわなノリで無血開城ね……はぁ、もう。
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