『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第37回「江戸無血開城」


木戸は「慶喜を殺さないと屈辱が晴らされない」

西郷どんは京都に戻り、勝との会談を報告します。

最低だ。
あそこまで汚い手を尽くしまくって慶喜ぶっ殺すと息巻いていたのに、なんかヌルい人情で曲げちゃったようにしか見えない。

ここで木戸孝允が「慶喜を殺さないと屈辱が晴らされない」と言い出します。

薩摩嘘つき、とキレだす木戸。
大久保は、もう天子様の軍だし落ち着いてよ、と言います。
天子様アピールの割に、先週、先帝の妹である和宮の嘆願に塩対応してたやん……。

慶喜と和宮
大坂から逃げ戻った慶喜を助けるため和宮が嫌々ながらもしたことは?

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もう、ホントやだ、このドラマ。
西郷も大久保も、武力倒幕に乗り気だったはずでしょ!

それがこんなワケわからない人になってしまって、追い詰められる幕府に同情しか湧かない。
このあと、勝海舟が「戦はなかったよ! 天子様は誰も殺していない」という捏造をしています。

赤松小三郎「解せぬ」
相楽総三「解せぬ」
薩摩御用盗被害者「解せぬ」
明治維新没落幕臣・旗本(餓死者あり)「解せぬ」

勝海舟のゲス度アップです。
マジでなんなんですかね……。江戸では西軍の支配により死者も出ているのに、これではただの鈍感クズじゃないですか。

とにかく史実をかすりもしない……。

ちなみにこのあと、幕臣旗本は、餓死者も出るほど厳しい暮らしをする者も出てきます。

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慶喜を殺すんじゃなかったっけ、とか言い出さないで~

ここで慶喜が、水戸に向かって行きます。

水戸は内戦でズタボロですよ。
こんなリゾートでエンジョイしに行くような演出はどうかと思います。

幕末の水戸藩、内戦で真っ二つで、地獄でしたからね。これまた『ゴールデンカムイ』(尾形百之助)関連の記事ですが、以下に、その辺の事情が触れられてます。

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ここで先週死にそうだった信吾(西郷従道)が能天気な顔をしています。

先週のあれは、一体???
そんな調子だから、死ぬ死ぬ詐欺で優先治療を受けた――という印象を持たれ兼ねないんですよ。

いよいよ江戸城引き渡しタイム。
天璋院が、慶喜を殺すんじゃなかったっけ、とか言い出します。

いや、だから!
そういう立場が上の人の首を簡単に口に出すなってば(´・ω・`)

すげえ。将軍の首は黒髭危機一髪レベル。
誰が首を飛ばすかチャレンジしちゃえ、とでも言いだしそう。

しかも天璋院、なんだか嬉しそうに西郷どんに感謝し始めます。
いえいえ、史実の天璋院は新政府軍に激怒して、奥羽越列藩同盟を応援していました。

それだけでなくドラマの天璋院は、能天気に、徳川家の記録まで差し出します。

最低です。
徳川家の宝までホイホイと差し出すわけ?

こんな貴重な本を自分の判断だけで渡すのは、非常識すぎるでしょ。
なんで勝手に、徳川家の記録を?

「幾島、この西郷が作る国というのをこの目で見たくなった」
いつまでもそなたを見ているのよ、ウフフってねえ。

史実と真逆のサービスを言わされる天璋院が気の毒でなりません……薩摩のドラマなのに、薩摩藩出身者を侮辱し続ける本作。そりゃ島津家現当主もお怒りになりますよ。

本作は捏造や演出を超えて、特定の立場の人に真逆のことをさせます。
悪質にもほどがある。

 


なんか既視感があるな……と思ったら

ここで信吾だの半次郎だのが、叫びながら走ってきます。

これみよがしな臭い音楽を背景に、喧嘩の前のヤンキーたちが走る。それがなんかエエと思っているのは、まぁ、好みの問題でしょうけど、毎回そうなのはシンドイ。結局、工夫の無さが辛いのです。

西郷どんはそんな中、能天気に寝ています。
徳川の書物に囲まれております。

うわぁ。
これもまた何かエエ話のつもりなんでしょうね。
貴重な書物が雑な扱いされていて痛々しい……紙は燃えると危険ですし、もっと大事にしてくださいね。

それにしても、なんか既視感があるなぁ。
と思ったら、そうだ!
本作と脚本家がかぶっている『花子とアン』の、貴重な辞書を漬物石にした描写だ……。
ベースに流れる思考って似てしまうものなんですかね(´・ω・`)

 

佐幕派が戦争をしたがってる?

これにて無血開城、ジ・エンド。やっと彰義隊が出てきます。
山岡鉄舟がそこへ乗り込んでいきました。

ここでもイヤ~な描き方ですね。

「せっかく寛大な新政府がやめようとしているのに、幕府がバカだから」
というニュアンスが半端ない。

戊辰戦争もバカな佐幕派のせい――そんな風に言いたげです。
新政府側が強引だったとか。そういう一面は一切見せません。まぁ、今までもずっとそうなんですけど。

前述の通り、この戦争は、松平容保の首を執拗に要求したことが原因としてあるんです。

ついでに言いますと、奥羽や越後を鎮撫するとして派遣された世良修蔵、大山格之助、岩村精一郎あたりのオラつき対応も、問題大ありでした。
『八重の桜』では、そのあたりを描いていたなぁ。

都合の悪いことをひた隠しにした戦前レベルの歴史観です。
21世紀になっても見られるとは思わなかった! いや、見たくはなかった!

『八重の桜』で描かれた世界観と、どちらが歴史的に正しいか?
説明するまでもないと思うのですが、ご存知ない一般の方は、西郷どんを見て、鵜呑みにしてしまうんでしょうね。

それが辛いです。

 


幕府側の死者は、死んだ瞬間透明になってる

西郷どんたちが戦のことで話し合っていると、大村益次郎が登場しました。
のっけから「半日でなんとかする」と言い出します。

こうして、新政府軍=無双を描いていくつもりでしょう。

新政府軍が痛い目に遭う長岡藩と庄内藩の激戦はどう描かれるのか?
変な興味が湧いてきます。
長岡には西郷の弟・吉二郎も参戦、そして亡くなります。

それにしても……大村がうざいっす。
魅力ある薩摩藩士たちが全然描かれず、その割に長州が丁寧に描かれがち。
本作、村田新八のキャラすら全く立っていません。

このあと、勝海舟が「空気読めない奴らのせいで無血開場が台無しに」とか言うのが残念極まりないです。

「ちったぁ、やせ我慢しなさんせ」
と言いたい。

幕臣としてのプライドもなにもない。
福澤諭吉がその場にいたら、飛びかかっているのではないでしょうか。

「死んじゃいけねえよ、西郷どん。龍馬の夢見た新しい国を作ってくれ」
なんてセリフもいかがなものでしょう。
江戸で死んでいる人は無視というか……。

たぶん、勝海舟の立場が、まったくわからない人が大勢いると思います。
まさか幕臣だとは気づくまい。
江戸に住んでる、時勢をよく知ってる浪人とか、そんな感じに見えているかもしれませんね。

そして〆のナレーションは
「きばらにゃ死んだ龍馬が泣くぞ」
というもの。

武力倒幕は、死屍累々です。
幕府側の死者は無双系ゲームの死体。

死んだ瞬間、透明になっています。

一方で西郷どんのお友達は、そうはならない。
えぇえぇ、主役ですから、当たり前です。

しかし、です。
史実的な捏造をひたすら繰り返して描くのは、どうなんでしょう。
大河ドラマの影響力を考えれば、フィクションだからと言って、なんでもアリだなんて、あまりに横暴な気がします。

来週、西郷吉二郎が出るようです。
今から見えます。

「佐幕派が戦争をしたせいだ!」

なんだか切ないなぁ。

 

【総評】

櫻井P入魂の江戸無血開城。
ゆるふわロハスカフェで行われるイベントのようでした。

◆大河ドラマ「西郷どん」プロデューサーに聞く 大胆な脚色「年表のように再現しても人物の本質描けない」(→link

上記の中に、次のような一節があります。

歴史ドラマには、視聴者からの「史実との整合性」に関する問い合わせがつきものだが、「年表のように再現しても、登場人物の本質は描けないし、視聴者も感情移入ができない。史実を踏まえた上で、時には大胆な脚色も必要」と話す。

登場人物の本質を描きたいようです。
って、おい。おいおいおい。

開いた口が塞がらないとはこのことでしょう。
当時の倫理感も持ち合わせていない幕末藩士を描いておいて、本質もクソもありません。

突然、戦の鬼になった西郷隆盛を見て、感情移入できている視聴者っておられるのでしょうか?

作り手は、一体どういう視聴者を想定しているのか?
ちょっとプロファイリングしてみます。

・公私混同していて、身内をやたらと庇うことこそ美談だと思っている
・妾含め、当事者でもない女が、空気を読まずに出しゃばることが好き
・仕事をしているはずの西郷どんが遊郭に入り浸る描写を見て、親近感を抱く
・歴史に疎い、日本史は苦手、歴史ものにも興味関心がない
・薩摩隼人がゲスでクズでもどうでもエエ
・長州がカッコよければそれでエエ
・幕府と東日本の人が殺されようと、どうなるとうどうでもエエ
・幕府と東日本に責任押しつけられてもどうでもエエ(つまりは西日本、佐幕藩以外出身……?)

こんな人そうそういませんわな。
稀代の英雄を扱っておいて、この視聴率崩壊は、自明の理なのかもしれません。

「年表のように再現したくない」というのは、大事な幕末イベントを超早送りダイジェストすることへの言い訳かもしれませんね。
本作は、もはや、そういう次元じゃないんですよ。
お気づきになられておりませんか?

とある著名な幕末史専門家も、本作に対して史実の整合性を問いかけておりました。
もちろん、そんな声も届きはしないでしょう。

本作って新発見をエピソードに入れました、とドヤ顏アピールしますけど、そんなことより絶対に描くべき重要性の高い既知の話があることをお忘れではありませんか?
基本を押さえてないと、いくら応用で目先を変えても意味がありません。

史実を擦り合わせて描いているというよりも、都合とアリバイなのが露骨すぎて、見ている方が恥ずかしくなってしまいます。

幕府の薩摩フランス割譲案だの、妾のゴリ押しだの、そういうのが視聴者の見たかったものだと思っている?
しつこいですが『八重の桜』のほうが、当時の道徳観と歴史イベントを丁寧に再現していて、それこそ感情移入できるでしょう。本質もついている。

そもそも本作のアレンジ箇所って、大胆な解釈とかそういう話じゃありません。

上記の記事でとりあげられている留学生のエピソードなんかも、全然効果的じゃない。
時間を持たせるため、あるいは薩摩の悪事や不都合を描くことを拒否するために取り入れたようにしか見えない。

妙なアレンジが、すべて
【薩長の正統化&幕府ゲス化】
へ繋げているように感じられるのです。

なぜ、そんな強引に歪めるのでしょう?
意味がわかりません。
普通に描けばいいじゃないですか。

漫画『銀魂』の方が幕末史をきちんと描いているのでは?
そんな意見もあるそうで、全面賛成しかありません。

武士道についてはハリウッド映画『47 RONIN』の方が全然マシです。

薩摩隼人の描写だって漫画『衛府の七忍』の方がはるかに史実準拠ですし、明治以降が舞台の『ゴールデンカムイ』ですら、もっと真摯に幕末史を描いていて、面白い。

わかったよ、武者、オマエは黙れって?

いいえ、黙っていられません。

大河ドラマというのは、日本の歴史ドラマで最高峰の存在だったハズです。
2016年、2017年と挑戦的かつ面白い作品がきて、なぜ2018年でここまで腐ってしまったのか。

別に史実に徹しろなんて思っていません。

しかし歴史を描くのですから、外してはいけない芯があり、かつ娯楽性も保たねばならない――そんな大変な作業ですが、だからこそ一流のスタッフたちが日本人の心に訴える作品を提供し続けてきたのでしょう。

それがここまで落ち込んだ理由は何なのか?
きっちり分析しておきたいと思います。

 


比較:『八重の桜』と『西郷どん』

こんな記事がありました。

◆綾瀬はるかさん「八重の桜は宝物」 戊辰150年式典・トークショー(→link

◆【西郷どん】島津家32代当主、NHKドラマ「西郷どん」での島津久光に苦言 「自ら『国父(藩主の父)だ』などというのはみっともない」

それぞれの記事で、松平と島津それぞれの現当主が以下のような対応をしております。

会津松平家現当主:5年経ても『八重の桜』を大絶賛

島津家現当主:『西郷どん』に「みっともない」と苦言

もう、皆まで言うなって感じかもしれませんが、本作って
【薩摩への大いなる嫌がらせ】
にしか思えないんです。

放映年は観光でうまみがあるでしょうし、なかなか違和感も言い出しにくい。

最低だなと思うのは、幼稚な価値観です。

『八重の桜』の場合:「会津だけが正義ではないと描いても、地元の方だって理解するだろう」
『花燃ゆ』と『西郷どん』の場合:「敵はとことんゲスなんですー!こういう描き方じゃないと地元も喜ばないでしょ!」

なんだか、こんな風に言われている気がするんですよね。

それにしてもバカみたいですよね、慶喜みたいな奴は周囲からボコられて当然という価値観。
これ、慶喜を貶めたいんでしょうけど、主君をボコる勝海舟、フキ、天璋院がクズに見えてくる。
『八重の桜』みたいに、敵対側にも義があるとしていればこんなことには……まぁ『花燃ゆ』での薩摩も酷かったですけど。

もう鹿児島の皆さんは、『ゴールデンカムイ』の鯉登少尉で怒りをこらえてくださいとしかいいようがない。キエエエエエ!

『八重の桜』といえば、「会津戦争で攻め込む長州が嫌」という意見を見かけました。

そこじゃありません。
会津に攻め込んだ大山巌なんか、カッコ良かったですしね。

むしろこれまで隠されてきた不都合な真実、「孝明天皇の宸翰(しんかん)」をがっちり出したところじゃないか、と思います。

禁門の変(蛤御門の変)
禁門の変(蛤御門の変)が起きた不都合な真実~孝明天皇は長州の排除を望んでいた

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「会津は禁門の変で長州をいじめたから仕返しだ!」

という意見があるようですが、いえいえ……禁門の変の背後には、孝明天皇の意志があったことは史実なのです。
要は、孝明天皇が長州排除に積極的で、それを要請されたのが会津でした。

んで、明治維新後に、この【孝明天皇宸翰】を発表した人は逮捕されるわ、口止めされるわ、大変だったようで。

会津側の真実は都合が悪い。
明治維新150周年を迎えても、未だそんな風に描かれるとしたら、その状況っていかがなものでしょう?

根本的にドラマがつまらない。
その問題とあわせて、次の幕末作品からはよく考えてもらいたい――そう切に願います。


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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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