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クレオパトラの美貌を保ったのはきっとモロヘイヤだ!
クレオパトラといえば、真珠をワインビネガーに入れて溶かして飲み干したという伝説があります。
要するに金持ちアピールともいえるわけですが、そんな伝説でなく、もっと実践的な美貌を保つレシピが知りたい。
そんな要望の答えが、この本にはあります。
それがモロヘイヤスープ。栄養たっぷり、ねばりがあって満足感もある。シンプルながら、これを毎日飲んでいたら美貌も保てそうに思えます。
歴史ものの美容に貢献しそうなレシピなり、化粧は、ハードルが高い! むしろ健康を害する事例もあるので洒落になっておりません。
ウグイスの糞化粧品はちょっとハードルが高い。
鉛や水銀の白粉は中毒になるし。
ディアーヌ・ド・ポワチエの黄金エリクサーだの。西太后の人乳は、無理無理無理!
その点、この楊貴妃のライチと、クレオパトラのモロヘイヤスープはバッチリ!
歴史に思いを馳せつつ、気軽に食べられるなんて素敵です。
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マルコ・ポーロが食べたフビライの宴はなんだかカワイイ
『歴メシ!』に不満があるとすれば、アジア料理が少ないことでした。それを補うフビライの宴が追加されています。
それは「馬乞(マーチ)」。
ラム肉のスープに「猫耳麺」が入ったものです。
猫耳麺って、なにそれ?
これは中国で猫耳朶(マオアールダォ)と呼ばれる麺の一種です。猫の耳のようにクルンとしたかたち。丸めてだいたいあの大きさに潰すのです。
中華麺を作るのは大変です。広いところで潰して伸ばして切るのは一苦労。その点、猫耳朵は割と簡単にできます。猫耳朵は加熱するとクルンとしてとても可愛らしいのです。
このレシピは元朝の鉄膳大医が書き記したものです。モンゴルから来て、中国のメニューを吸収していった。まさに元朝らしいメニューといえます。
他にも東から西へ旅するマルコ・ポーロの足跡を追っていて、素敵な章です。
ベートーヴェンの晩餐――ドイツ人ならジャガイモだ!
新章としてドイツが追加されました。ここに「アルンシュタイニシャー・シール」があります。
スズキとジャガイモのオーブン焼きです。
ドイツ料理ならば、やはりジャガイモだ! そう納得できる一品です。
ドイツはプロテスタント国らしく、食事は質実剛健なイメージがあります。そういうドイツらしさを感じるメニューです。
なぜドイツといえばジャガイモか?
フリードリヒ2世はその素晴らしさに目をつけたものの、なかなか広まりません。ちなみにドイツは気候的にサツマイモよりもジャガイモが適しております。
ジャガイモは見た目が悪い。
「悪魔の食べ物だっていうぜ……」
「ヤバいな。馬か犬の餌にならしてもいいけどよ」
「どっちにせよ人間の食い物じゃないね」
そう民衆は不安を感じ、手を出さない。そこでフリードリヒ2世は考えました。
ジャガイモ畑を作り、仰々しくこう宣言したのです。
「これは皇帝のみが食べる神聖なものである。勝手に食べるな!」
こうなると、かえって民衆は好奇心が湧いてきます。
「マジか……生きているうちに食ってみてえ!」
「こっそり盗んでみるか」
「そ、そんな、いいのか?」
「みんなでやっちまえばいいんだよ!」
かくして民衆はむしろジャガイモを盗みます。ジャガイモって味があまりないので、そこまでおいしいと思われません。
日本の江戸時代の場合、甘みのあるサツマイモ中心に普及し、ジャガイモは寒冷地のみでやむなく栽培されていたのでした。
とはいえ、リスクとともに盗んでおいて、「やっぱりマズいわ」となったらつまらない。
そこでドイツの民がジャガイモ料理に本気を出した結果が、現在に至るまで残されているのです。
ちなみにフランスの場合、ルイ16世は妻であるマリー・アントワネットの髪にジャガイモの花をつけて、パーティに出席させました。
ドイツ人がジャガイモを頬張るとき、フリードリヒ大王の機転を思い出す。一方でフランスは、ちょっと苦い歴史の味があるのかもしれませんね。
そんな歴史に思いを馳せつつ、ベートーヴェンが好んだ料理を作る。一皿にびっしりとドイツの歴史が詰まっていますね。
新章追加で、ドイツのジャガイモ料理が加わったなんて実に素晴らしい。これぞまさしく「決定版」です。
実際に作ってみた!
「第4章リチャード三世の愉しみ」よりマーメニー(黄金色のビーフシチュー)
びっくりするくらい簡単。素朴で優しい味わいです。
牛乳を大量消費するため、牛乳が余った時にもオススメ。パンにも白米にもあいそうな味わいです。
「第8章ビスマルクの遺言」よりフランケン風焼きソーセージ
これもかなり簡単です。リンゴとソーセージってそんな組み合わせ、本当にありなのかとドキドキしながら食べてみました。
ほのかな甘さと酸味がソーセージにマッチ!
これはありです。冬の食卓にぴったりですよ!
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文:小檜山青
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【参考】