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【シャルロット・コルデー】
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法廷に出された姿は天使そのもの
シャルロットは、マラーの死によってジロンド派が勝利し、平和が訪れると信じていました。
しかし実際はまるで逆。
中央から派遣された軍隊によってジロンド派は倒され、完全に壊滅することになります。
法廷に引き出された彼女の姿と声に、人々は魅了されました。
その姿は穢れなき天使そのもので、あどけない声には不思議な魅力があります。
「ジャンヌ・ダルクが持っていたのと同種の特質がある」
そう考えた人もいました。
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取り調べと裁判では、いくら何でもこんな大胆な犯行を若い女性一人でできるはずがない、と共犯者の追及が行われました。
シャルロットは、自分の考えや計画を朗々と述べて反論します。
それでも不運な何名かは、共犯者として処刑される羽目になるのですが。
いくらシャルロットが魅力的であろうと、処刑は覆らない運命でした。
彼女は死刑判決を下されます。それでもシャルロットは落ち着き払っていました。
彼女は最期に、肖像画を描いてもらいました。
私ならばやさしく縛るから心配はいりませんよ
当日、処刑人のアンリ・サンソンが到着します。
サンソンはシャルロットの美貌と清らかさに目を見張りました。
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シャルロットの手を縛ろうとすると、彼女は手袋をしたままでよいかと尋ねます。
逮捕の際にきつく縛られ痛みを感じていたのです。
私ならばやさしく縛るから心配はいりませんよ、と穏やかに彼女に語りかけるサンソン。
するとシャルロットはおとなしく手袋を脱ぎ、両手を差しだします。
処刑場に向かうシャルロットの馬車を、数名の青年たちが取り憑かれたように見送っていました。
死を目前にしたシャルロットは、処刑にそなえて美しい髪を短く切られ、死刑囚用の赤いシャツを身につけていました。
そんな姿でも彼女は神々しいほど美しく、男たちの心をつかんだのです。
リュクスという青年は、彼女に恋をしました。
そして同じ断頭台で死ぬことを望んだ彼は、四ヶ月後その望みが叶うこととなります。
その時リュクスは、喜びのあまり処刑人と抱き合ったのでした。
赤らむ天使の首
ギロチンの前にたどりついたシャルロットは、いそいそと階段を上り、自らうつ伏せになりました。
サンソンはこの女性の苦痛を短くするため、素早く掛け金を外し、斬首しました。
直後、群衆の一人が彼女の白い首をつかみ、平手打ちをしました。
怒りの声に包まれる群衆。そのとき、シャルロットの首が、怒りのあまり赤らんだという証言が残されています。
頸動脈がたたれた状態で、どうやって血の気が頰にのぼるのか……それは天使の気高さが見せた幻だったのでしょう。
革命の中、幾人もの人々が命を失い、首を刎ねられました。
そんないくつもの首の中で、シャルロットにはそんな伝説が残されたのでした――。
英雄伝を読みふけり、歴史に名を刻むことに固執したシャルロット。
彼女は、人を殺し、殺されて「暗殺の天使」として名を残したのでした。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
安達正勝『マラーを殺した女―暗殺の天使シャルロット・コルデ (中公文庫)』(→amazon)