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【クロード・モネ】
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「水の庭」と名付けた自宅の池に睡蓮を浮かべて
一時期はフランス各地やイタリアを旅行して、最終的にモネはパリから北に80kmほどのところにあるジヴェルニーという町へ腰を落ち着けました。
なぜかモネはパリの北西方面が好きだったようで、アルジャントゥイユとジヴェルニーとル・アーヴルは、ほぼ一直線上にあります。
フランスってそこそこ広い国なのに、不思議なものです。
『昆虫記』で有名なファーブルも似たような感じでフランス南部を行き来していますから、「水が合うかどうか」ってことなんですかね。
ジヴェルニーには今もモネの家がそのまま残されており、作品と浮世絵のコレクションが展示されています。
また、モネの一番有名な作品『睡蓮』のモデルになった庭でも有名です。
モネはもともとあった家の庭にさらに土地を買い足して広げ、何年もかけて画題として理想の庭を作ったのです。
『睡蓮』は一枚の絵ではなく連作のタイトルで、同じモチーフをさまざまな時間帯に描くというものでした。
同じスタイルで『積み藁』や『ルーアン大聖堂』なども複数枚描いています。
この連作こそ、モネが「光の画家」と呼ばれる所以です。
『睡蓮』が代表作として知られているのは、モネが最も多く描いた事が大きいと思われます。
その数27年で200枚といいますから、同じモチーフを一年に7枚は描いたことになります。
それだけ描き続けられるというのもなんだか恐ろしいですが、モネに限らず、芸術家の多くは「狂気一歩手前」くらいの気迫を持ってこそ、名作を生み出している気がしますしね。
そんなわけで一口に「睡蓮」と言っても、見た人の好みによって思い浮かぶ絵が異なると思われます。
いくつか票が集まりそうなもののうち、やはり一番有名なのは、太鼓橋と共に睡蓮が描かれているものでしょうか。
この橋、浮世絵好きだったモネがわざわざ作らせたものなのだそうです。
当時のフランスでは中国や日本の美術に人気が集まっていたので、モネもその一人と考えれば不自然なことではありません。
しかし……モネについては、もうちょっとだけ他の理由があるような気もします。
これはまたワタクシの私見なのですけれども、モネは浮世絵にとどまらず、日本という国に憧れを抱いていたのではないか?と思うのです。
ヨーロッパにない花を愛した理由を考えてみる
上記の通り、モネは若かりし頃、兵役についたこと、そして再度の徴兵から逃れるために逃亡に近い長期旅行をしていたことがあります。
当時、日本のことがどこまでヨーロッパに伝わっていたかはハッキリしません。
しかし「日本では武家が戦争をするので、一般人は武器を持つ必要がない」ということが知られていたら、モネにとっては非常に羨ましい話に思えたのではないでしょうか。
芸術家であっても徴兵されるフランスに比べて、対外戦争もなく、のびのび絵を描いている画家がいるという日本。
モネにとって理想郷に見えたとしてもおかしくはないですよね。
睡蓮という元々ヨーロッパにない花を愛したのも、もしかしたら頻発する戦争に嫌気がさしていたからかもしれません。
その割には一生ヨーロッパから出ていませんが、当時の国際事情や交通事情で移住するには、言語なり何なりの壁が多すぎたでしょうし。
もしもっと平和な時代に生まれていたら、モネは全く違う絵を描いていたのでは?って、それはどの芸術家にも当てはまりますね。
最晩年のモネは眼病(おそらく白内障)にかかっても、絵画への情熱は失いませんでした。
1918~19年にかけて描かれた荒々しいタッチの『睡蓮』は、モネのもどかしさやいらだちがこもっているようにも感じられます。
これ、上の方に描いてある光の当たった葉っぱらしきものが龍に見えるような気もするような……。
現在「モネの庭」として公開されている池には白い藤がかかっているようなので、それを描いたんですかね。
モネの愛したジヴェルニーの庭と邸宅は、今も大切に守られています。
パリに近く、個人旅行でも行きやすいような場所だそうで。
ここ数年はいろいろと国際事情が落ち着きませんが、頃合いを見て訪れてみたいものですね。
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長月 七紀・記
【参考】
早坂優子『101人の画家―生きてることが101倍楽しくなる (リトルキュレーターシリーズ)』(→amazon)
日本大百科全書(ニッポニカ)
世界大百科事典