1978年にTBSで放送されたドラマ『雲を翔びこせ』/TBS公式サイトより引用

青天を衝け感想あらすじ

女性関係はボカすのがお約束~渋沢栄一は過去どんな作品に登場してきた?

『青天を衝け』で主役を演じるのが吉沢亮さんであるせいか。

渋沢栄一がとんでもないイケメンであり、だからこそ女性にモテるのも仕方ない――なんて見方も世間ではあるようですが、それでは過去の映像作品で渋沢は、どのように扱われていたのか?

例えば大河ドラマでは、1980年『獅子の時代』で角野卓造さんが演じて以来、なんと二度目。

実に40年ぶりの登場ということですが、お札になるほどの人物が、なぜこうも注目されてこなかったのか。

映像作品以外であれば、どんな物語に登場しているのか?

本稿では、渋沢の登場する過去作品に注目してみたいと思います。

左(1866年)と右(1867年)の渋沢栄一/wikipediaより引用

※TOP画像は西田敏行さんが渋沢を演じたTBSドラマ『雲を翔びこせ』1978年/TBS公式サイトより引用(→link

 


渋沢栄一を扱った小説は?

渋沢栄一は、実は存命当時から有名人でした。

そのため没後わずか5年後の1936年に『長篇戲曲 渋沢栄一』が発表。小説も多く執筆されています。

現代でも入手可能な小説を挙げてみますと、

1953年 大沸次郎『激流』

1972年 城山三郎『雄気堂々』

1972年 山田克郎『伝記小説 渋沢栄一 財界のフロンティア』

1991年 童門冬ニ『渋沢栄一 人間の礎』

2000年 童門冬ニ『論語とソロバン』

2004年 童門冬ニ『渋沢栄一 人生意気に感ず』

2004年 津本陽『小説 渋沢栄一』

2010年 茶屋二郎『青淵の竜』

2014年 香取俊介・田中渉『渋沢栄一の経営教室』

戦後も定期的に注目されてたことがわかります。

最近は、新札と大河の顔にもなりましたので、子ども向けの作品も増えてきました。

次に、異色作品にも目を向けてみましょう。

1991年発表の船戸鏡聖『たおやかな農婦――渋沢栄一の妻』は妻の千代が主人公となっています。

また、幕末期の欧州を舞台にした南條範夫『幕府パリで戦う』は、万国博覧会を舞台に、諜報戦を繰り広げるもの。

1967年に発表された作品で、東西冷戦時代ということもあり、スパイフィクションが流行していた――そうした時代背景もあるかもしれません。

南條範夫の『駿河城御前試合』を『シグルイ』として漫画にした山口貴由先生が、『幕府パリで戦う』を描いたら面白いかもしれませんね。

1988年発表の古川智映子『小説土佐堀川』は、『あさが来た』の原案であり、広岡浅子を主人公としています。

明治財界を描いたこの作品には渋沢も登場。

『あさが来た』では三宅裕司さんが演じていました。

そして異色作品の最たるものが、荒俣宏『帝都物語』(→amazon)でしょう。

1985年から1987年にかけて小説が連載され、1988年には映画も公開の大ヒット。

帝都物語/amazonより引用

その中で帝都東京を物理的にも魔術的にも保護しようとする渋沢栄一を、あの勝新太郎が演じます。

渋沢が関東大震災の際に

天譴論(てんけんろん・驕り高ぶった人間を罰するために天罰が下る)

を唱えていたためではないかとされています。

今年の大河『青天を衝け』が放送されるまでは、この魔法陣の印象が強かった方もおられるのではないでしょうか。

 


映像化された渋沢栄一

映像化作品も見ていきましょう。

まずは主役となったものから。

1978年『雲を翔びこせ』は渋沢が主役のTBSドラマです。西田敏行さんが主演をつとめました。

◆TBSチャンネル『雲を翔びこせ』(→link

1982年には城山三郎原作『雄気堂々 若き日の渋沢栄一』を、NHKが放映しています。

滝田栄さんが主演です。

◆NHKアーカイブス 雄気堂々 若き日の渋沢栄一(→link

他に演じた役者をみていくと、平泉成さん、宝田明さん、松方弘樹さんらがおられます。

ほっそりとしたイケメンの吉沢亮さんはかなり異色です。

 


今後の『青天を衝け』は?

渋沢栄一は、フィクションで何度も登場するほど人気があったわけではありません。

当人が、幕末の動乱を経験しているとはいえ、主な実績は明治以降。

経済系の題材としては人気がありましたが、幕末と比べたら、人気の面でかなり不利です。

しかも、渋沢を描くとなるとパリ万博の場面が必須であり、それも映像化が難しい一因かもしれません。欧州に至るまでの背景説明も複雑化してしまい、説明するだけで一苦労でしょう。

どうしても手を出しにくい要素が揃っています。

渋沢が戊辰戦争に参戦していなかったことも盛り上げ要素に欠けるとみなされます。

そのため戊辰戦争で函館戦争まで戦った渋沢成一郎が準主役として重要な役割を果たすことが定番。

渋沢成一郎/wikipediaより引用

妾や庶子が数多くいたこともマイナスでしょうが、全てを描かないことはお約束でした。

最初の妻である千代が良妻賢母タイプでしたので、彼女をクローズアップしておしまいでしょう。

『青天を衝け』は大河でも放送回数が少ない方ですので、千代の死後、兼子との再婚後の展開は短くなる可能性が高いと思われます。

こうした過去作品の傾向をふまえますと、『青天を衝け』の今後も予測しやすくなります。

千代との悲しい永別には尺を使い、家族愛や慈愛に富む姿を描く。

けれども朝鮮における事業や、足尾銅山のことはほとんど触れない。

後妻・兼子との生活もじっくりとは描かれない。

大河主人公としても長寿の部類ですので、共通点の多い『花燃ゆ』のように亡くなるところまでは描かず、希望を視聴者に届けるエンディングとなるのではないのでしょうか。

『青天を衝け』と『花燃ゆ』には、富岡製糸場設立に関わるという共通点もあります。

井上真央さんが登場したら話題になりそうです。

もちろん『あさが来た』から、広岡浅子として波瑠さんが登場するサプライズも考えられますね。


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文:小檜山青

【参考文献】
渋沢研究会『はじめての渋沢栄一』(→amazon

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