渋沢栄一を持ち上げようとするあまり、完全に悪役とされてしまった大隈重信。
栄一は、金儲けでなく国のために銀行を作った!と大隈に対して啖呵を切っています。
今日もまた、廊下で歩きながら話し、叫び、そして顔芸……。
いつもいつも歩きながら大事な話をしていますが、これは現実的にいかがなものでしょうか。
大隈はショッカー岩崎と結びつき、その悪どさを強調されていますが、結局、明治初期に金をたんまり儲けている点はそうだし、親族の優遇もしています。
「銀行は儲ける手段じゃない! あくまで国益のためにするんです!」
そんな栄一の言葉はまさしくブーメランではありませんか。
先週の『論語』推しもそうですが、明治になってからの本作は渋沢の経歴ロンダリングに費やされています。
幕末も酷かったものですが、結局は言い訳の連続だったりします。
しかも、銀行を作りたい業者から届いた贈り物は、しっかり家族で食べているんだから、どうなってんだ?と……。
「国益のため!」とシャウトするぐらいなら、「そんな贈り物はすべて送り返してしまえ!」と毅然とした態度のほうが、大河の主人公らしくありませんか。
時を同じくして、北国で飢え死にしそうな屯田兵や会津藩士が見たら血を吐きそうな、無神経な描写とも言えます。
この先、どれだけ綺麗事を言っても、袖の下もらっとるやないか、と突っ込まれたら終わりでしょう。
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安政の五カ国条約
そして今週も時間稼ぎのような、幼少期の回想シーンが始まります。
『八犬士』や『三国志』の遊び事をしていた時代ですが、この辺の詰めが甘いと感じてしまう。
本当に『三国志』が好きなら、少年たちが推し武将を叫ぶようにすればよいのでは?
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さらに気になるのが、和室での所作です。
なぜ、こんなに立ちっぱなしなのか。
本作は「立つ・座る」という動きが本当に少ない。しかも和装と洋装で頻度が異なる。
まさかそんなことはないと思いたいのですが、和装での立って座るという一連の動作が指導されてないとか?
とか考えていたら、またまた徳川家康が出てきました。
「お久しぶり」だそうで、安政の五カ国条約の説明を始めました。
その認識が古いというか、間違っているというか、変な忖度がある……。
ですので、あの方にキッチリ説明してもらいましょう。
福沢諭吉「こんにちは、福沢諭吉です。何を忖度しているんでしょうか? では、ざざっと解説しますけどね」
【幕末の条約締結 事実はこう】
・幕府は諸外国勢力とできる範囲でフェアな条約締結をした
・しかし尊王攘夷と騒ぐかつての渋沢栄一のような志士どもは「条約締結そのものがありえない!」とギャーギャー大騒ぎ
・中でも慶喜の父である斉昭は「異人なんてぶっ殺せ!」と喚き散らして幕政を妨害
・「こうなったら殺すしかねえよな! 心即理!」と陽明学をかじっただけのイキリ志士たちがヘイトクライム殺傷事件をバンバン起こす
・「あァ? お前ら殺傷事件の落とし前つけろや!」と諸外国がねじ込んできて、どんどん条件悪化
・反撃されて袋叩きにあった長州藩は「すまん、イギリスさんの言う通りにする……」と低姿勢に
・薩英戦争で引き分けた薩摩藩上層部も「イギリスどんと手を組んで討幕しもんそ」と方向転換
・新政府になってからも賠償金は支払い続ける
・過去の愚行が特大ブーメランになって日本そのものを直撃
・しかし、ありのままにそんなやらかしを描くと「明治維新って一体なんなんだ?」と疑念が湧くため、大河でもロンダリングの嵐
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てなわけで脳内福沢さんにお引き取り願いまして。
「攘夷なんかしたのが悪いでしょ」
パークスとサトウが出てきます。
イギリス留学経験のある伊藤が一応英語で対応します。
パークスが随分とおとなしいなぁ。
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そこはこうでないの?
「偉くなったな伊藤よー、オメー、なに対等の話を求めてんだ? お前らが大英帝国の国民を斬りまくって野蛮人アピールしたのが悪いよな? 殺人自慢をイギリスでまでしてたっけなあ?」
と、言ってもおかしくない。
しかし、イギリスからパシリ状態にされ、日露戦争まで突き進む明治政府の都合もまたロンダリングされます。
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ドラマの中では、一応、福地源一郎が「攘夷なんかしたのが悪いでしょ」とチクリと言っていました。
それならば天狗党とズッ友宣言していた渋沢栄一も真面目に反省しなければいけない場面。
しかし、栄一は例の一言です。
「おかしれぇ」
今回も来ました、チートコマンドの合図。
オラついてこの決め台詞を言い、ろくろ回しポーズで三白眼になれば、ほとんどのトラブルが解決するフラグです。
”chamber of commerce”こと商工会議所の出来上がりですね。
これでいいんでしょうか。
パークスらは議会制やもっとスケールの大きなことも含めていたのでは?
渋沢栄一が、まるで明治維新の森羅万象を司るような扱いが本当に理解しがたいです。
そしてまた、タップで経営するゲームのように、東京商法会議所ができています。
栄一、ガチャ運が素晴らしすぎるでしょーよ。
薩摩生まれのメリサンドル
東京商法会議所の部屋で冊子が配られました。
なんでしょう、この明治時代じゃない感は。小道具班も時間的にギリギリだとすれば、本当に可哀想です。
しかもズッコケそうになるのは、栄一が考えた人事をみんなで事後承諾しているような雰囲気だってことです。そこは話し合いで決める場面では?
会議室にいる彼等は、相変わらず文化祭準備のようなノリで、
「マジでショッカー岩崎を放送部ブース担当にすんのぉ?」
とかなんとか言い合ってる。嗚呼、青春だのぅ。
と思ったら、五代様がスカした態度で紅茶を飲む場面へ。
ショッカー岩崎の相談に乗っていますが、五代を出す意味がわかりま……いや、気づきました。この人は、薩摩生まれのメリサンドルだと。
メリサンドルとは大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に出てくる赤装束の巫女なのですが、いつも唐突に現れ、奥深い予言を告げて去ってゆきます。
五代が重々しく何か言うと、相手もうやうやしく受け取るシステム。
うん、やっぱりそういう使いなんでしょう。であれば納得できます。
※右の赤い女性です
場面は、書生が住み込んでいる渋沢家へ。
この場面もみんな立ちっぱなしで、ワケがわかりません。スタンディング状態で和室にいるものでしょうか。
もしかして足が痺れるから?
特に渋沢千代はメインキャストで、しかも大河三度目なのに、なぜ頑なに和装所作をしないのでしょう。横にいる人のほうがこなれている印象すら受けます。
そう思っていたらやっと千代が座った、よっしゃー!
千代はなんだかカッコつけたことを言います。発声は綺麗で、長いセリフの読み方も良い感じになってきました。もうすぐ退場なのが残念です……。
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そして夫婦の寝室トークへ。
貧しい者を救いたいと栄一。寝る直前まで整髪料ガチガチなのが気になります。
現代人のように毎日洗髪しているとは到底思いませんが、あまりに整いすぎていて不自然だなぁと目がいってしまう。
栄一はボソボソと話しながら回想シーンへ。
孤児たちが怒鳴られる場面が入るのですが、子役エキストラがまともな演技指導されず、放り出されたようで辛い。
不思議なのは、栄一がこの段階になって初めて不幸な子供たちの存在に気づいたような点ですね。
駿府の幕臣には一家揃って餓死するほど困窮した人もいました。
北国だってそうですし、江戸だって同じこと。
困った子供の実物を見るまで何も気づかないとか、どういうことでしょう。
だからこそ、こうした場面も渋沢栄一夫婦の善人アピールがしたいだけのように見えてしまいます。
芸者遊びをしながら商売トーク
そんな栄一は、岩崎弥太郎に呼び出されます。
なんだかVFX処理の変な建物が出てきて、綺麗なお姉ちゃんのもとへ。
平岡円四郎の妻・やすもその場にいました。
彼女の江戸弁――いわゆる“べらんめぇ”口調がどうにも入ってこない。『いだてん』の森山未來さんはそりゃうまかったものです。
栄一は、ショッカー岩崎と芸者遊びを始めました。
実はこれも残酷絵図です。
芸者の中には家が没落し、身売りしている江戸娘もちらほらいる。そういう困窮者に対して、この栄一は何も感情を抱かないのでしょうか。
女中くにや孤児みたいに「明らかにそうである」という格好・スタンスでないと気づかないなんて、とても仕事のデキる人間とは思えません。
それにしても栄一とショッカー岩崎の芝居の長いことよ……。
二人で怒鳴り合い、意思疎通叶わず、最終的に栄一が「しょんべん」と言い、どこかへ向かいます。
このドラマはなぜこうも排泄が好きなのか。栄一と慶喜の初対面も並んで排泄でした。正直、気持ち悪いです……。
廊下へ出た栄一は、ケラケラと下品な笑い方をするやすと遭遇しました。
本作って【廊下での出会い禁止!】にしたら成立しませんね。
やすは栄一に対して「逃げな」と告げます。
岩崎弥太郎には「好みの芸者を見つけて連れ帰った」と言い訳しておくとのことですが、いやぁ、これは妙な生々しさがあってゾッとします。
栄一ならお持ち帰り常習犯でしょうね。
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平岡円四郎は、京都で慶喜の妾探しをしていたそうですが、このドラマですとその妻・やすも同様のことをしていそうですね。
言動がいちいち軽薄かつ下品で、本当に辛い。
しかも、このやすがまたスピリチュアル。まるで誰かに見せるようなわざとらしさで円四郎に語りかけます。死人は時間稼ぎに便利なんですよ。
というか、やすの出番が多すぎませんか?
川路聖謨の自害場面にまで出しゃばっていましたよね。
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かくしてカッコ悪い逃亡をした栄一。
ショッカー岩崎との戦いの幕開けだそうです。
初戦は一方的にやられただけのように見せ、いずれチートでどうにかするんでしょう。
伊藤兼子の登場は朗報
伊藤兼子が座っています。
新時代では成功と没落をする者がいると語られ、没落商家の娘として登場。
そういう女の弱みにつけ込むようにして渋沢栄一は彼女を後妻にします。
史実にしてもドラマにしても、なかなか酷い展開ではないでしょうか。
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しかし……兼子は見られてよかった。
大島優子さんは気になっていました。
この年代で上位に入る、和装所作が綺麗で日本髪が似合う女優でしょう。
それは彼女一人の実力でそうなったものか?
これまでの出演作品での演技指導がよかったのか?
指導が甘い本作でも光るものがあれば、彼女は本物だと確信できます。これは朗報です。
大島優子さんが眼福だと思っていたら、その次は栄一と千代が子供を保護する善人シーンへ。
渋沢栄一と並んでお札の顔になる人物に津田梅子がいます。
その津田と女子留学生として親友になった山川捨松。会津藩家老の娘である捨松がなぜ留学を?というと口減らしでした。
娘一人の生活費すら出せない山川家は、苦渋の決断の末に留学させ、「捨てて待つから捨松だ」と改名までしたのです。
そんな凄絶な史実と比べると、本作のわざとらしい千代の笑顔なぞ笑止千万。
社会的弱者の救済施設を作ったという描写だけでも十分なはずなのに、なぜこうも急に慈愛に満ちた人物像に描かれるのか。
渋沢栄一といえば確かに福祉事業で有名ですが、あざとく子供を泣かせて「がんばったね」と言わせたり、それを栄一が立ったままボケーっと見ていたり、どうしても茶番に思えてなりません。
例えば、貧しさで餓死者も出ていた北海道(開拓者)も同時代にはあります。育てきれぬ我が子をアイヌのコタンに捨てていく話もよくあり、『ゴールデンカムイ』でもそんな場面が出てきます。
そういう屯田兵のことを思い出すと、金持ちがぬくぬくと自己満足に浸っている場面にしか見えません。しかも東京の金持ちたちは、苦労して開拓した北の大地を、別荘地だのなんだのと買い漁ったものです。
なぜ南北戦争のことを知らないのだろう
髭が浮き上がっている伊藤が、アメリカからお客様を迎えると言い出しました。
前大統領で将軍だってよ!
大統領なのに将軍ってどういうこと!
なんて語り合っていますが、この時代の政府中枢が南北戦争のことぐらい把握できていませんか。
脚本家さんが感じた疑問をそのまま入れたのでしょうか。彼等の会話はまたもや高校生の文化祭レベルです。
「文化祭ゲストのグランプリさんって何者? タレント? 映画出てたっけ?」
「バーカ、グランドだよ。なんかすげー人じゃん!」
「グ・ラ・ン・トな。でもさ、すごいってなにしたっけ?」
「待って、今ググるわ」
日本を動かす政府を文化祭レベルに落とさないでほしい。私の知っている明治時代と違います。
栄一は怪しい笑みを浮かべ、新しい日本を見せると言い出します。具体的に何をしてくれるのか不明ですが、やはりチートスキルでこなしてしまうのでしょう。
そして外国人をもてなす話へ。
本当にくどくて申し訳ありませんが、餓死凍死している屯田兵には一切触れず「外国人の出迎え、ウキウキルンルン♪」をやりますか。
あーあ……本当に屯田兵大河を見たいなぁ。
北海道開拓はある意味男女の区別もなかったんですね。
ヒグマはむしろ女性や子供を好んで襲撃した。開拓では、かつての大名夫人までもが立ち上がっていた。
そっちのほうがよほど見ごたえあるドラマだと思いませんか?
それなのに予告で「千代がぐるぐる?」ときた。どこまで幼稚なのでしょう。
胸のぐるぐるはどうでもいいので、黒田清隆が艦砲射撃で北海道漁民の民家を撃ち抜く場面でも繰り広げていただきたい。雑なVFXで構いませんのでお願いします。
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総評
役者殺すにゃ刃物はいらぬ、駄作大河があればいい――。
そんな言葉が思い浮かんでしまった今回。
栄一と岩崎の対峙は、所作、発声、その他諸々、役者の力量がハッキリ出てしまい、残酷で見てられませんでした。
栄一がものすごく綺麗に見えた箇所もありました。
さして動かず、座ってキリッとした顔をしているところ。ああ、この役者さんは、こういうモデルのようなポーズを決めている間は大変絵になるものだと感じました。
ただ、それも横にいる迫力の岩崎弥太郎を見るまでのことでして……モデルのようにポーズを取ることは、ドラマではおかしいのです。
なぜ、こんなことに?
彼は演技が下手ではないでしょう。
序盤は時代劇に慣れないことがあっても、秋ともなれば成長している。それが大河主演を担う役者のルートでした。
ギャラが低くても役者として成長できるからこそ特別な番組でした。しかし……。
吉沢亮さんは大丈夫でしょうか。いくら底上げするにせよ、中身が伴わないようでは厳しいかもしれません。
ただし、岩崎弥太郎も手放しで絶賛もできません。
歌舞伎の口調が出過ぎてやいませんか。
映画版『柳生一族の陰謀』での萬屋錦之介さんを思い出してしまったのです。
あの「夢でござーーる!」は最高ではあるのですが、あれは当時「なんか一人だけ演技が浮いてないか?」と批判もあったんですね。要は浮いてる、と。
中村芝翫さんのようなベテランが、若手に胸を貸して成長させたい意図はわからなくもありませんが、主役を喰ってしまい、勢い両者共倒れの感が否めません。
ただし、泥の中でも咲く花はあります。それについては後ほど。
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偽善の極み
今週の福祉描写の薄っぺらさはお粗末でした。
手塚治虫『どろろ』原作版にはこんな場面があります。
タイトルロールをつとめるW主人公であり、百鬼丸の相棒ある盗賊の子・どろろ。
どろろとその親が飢えて苦しんでいると、貴婦人の車が止まります。
そして幼いどろろに恵んでやれと饅頭を与えると、飢えたどろろは食べようとします。
しかし、どろろの父は怒る。
人が餓死しそうな時に、お前らはいい暮らしをしている! 俺らが飢えているのはお前ら支配者が、権力のために戦なんかする。
そんな連中から施しを受けてたまるか!
どろろは喜んで食べようとするんだけど父親は制止するんです。それが無礼だとされて、彼は殺されてしまいます。
愚行のようで、言わんとするところは理解できます。
権力者ならば、目の前の人間に施して満足していないで、国の福祉なり体制を変革しろ、民が飢えぬ世を作れ、と。
お前らが気持ち良くなるために、貧乏人は存在しているわけじゃない!
手塚治虫と同世代、戦争体験者は、失政により人が飢えて苦しむ様を見つめていました。
そういう作者の訴えがそこにはあります。
去年の『麒麟がくる』も同じ世界観です。
光秀は延々と「どうすれば麒麟がくる仁政が実現できるのか」悩みに悩んでいた。どうすれば孔子が理想としたよりよい世にできるか、もがいていた。
今年は『論語』引用をすっかり忘れた栄一が「おかしれぇ!」「胸がぐるぐるする!」と幼稚なことを言って文化祭準備です。ほんとに情けない……。
獅子がいない時代
今週は
「銀行設立で儲けたいからノウハウ教えてくれ!」
という希望者から届いた豪華な食材を美味そうにつつく渋沢一家を見て、ドス黒いものが胸に湧き上がってきました。
考えたいのは、接待を徹底的に嫌った元会津藩士・山川浩のこと。
『獅子の時代』主人公である平沼銑次のモチーフの一人です。
ざっと見ていきますと……。。
・斗南藩時代に山川家がおからを買ったところ「買い占めて卑怯だべした!」と糾弾される。実質的な藩のトップが、おからを買っただけでこの騒ぎ。どんだけ貧しかったのか?
・上京後、会津藩ゆかりの人物を世話する。山川家も全く金がないのにそんなことをして、当然ながら家計は火の車に。『八重の桜』でも浩の姉・二葉が質屋に向かう場面があった
・接待をされそうな気配を察知し、店ではなく「公園で食物持ち込みで!」と提案するも役人から豪華なお取り寄せをされてイラつき、帰り道は猛烈ダッシュして宿まで戻ることを提案。接待した役人たちは地獄を見た……
・それでも接待を受けたとき、和歌を詠んでこう嫌味を書きつける
飲むも憂しけふのうたげに酌む酒は青い人草の血しほと思えば
【意訳】クソまずいべした。今日の宴で飲む酒も、原資が血税だべ? やってらんね!
極め付けは、軍功がある割には給与や年金が安かったこと。
なぜだ? 会津出身だからか? と言われていますが、こんな説もあります。
浩の妹・捨松は、陸軍の大物である薩摩閥の大山巌の後妻となりました。
つまり、大山と姻戚になった自分が厚遇されると周囲に示しがつかん……そんな潔癖にも程がある思考になって、敢えて拒んだとか。
そういう山川目線になってみれば、芸者のいる席で岩崎と飲むだの、袖の下をもらってヘラヘラしているだの、一体なんなんでしょうか。
民間人だからいい?
そんな言い訳は通用しません。銀行設立は国益のためだ!と言っておきながら、贈り物をホイホイと口に運んでいたら元も子もないでしょう。
そもそも伊藤博文とベッタリでありながら、岩崎と大隈ばかりを悪者にしてなんなんでしょうか。
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舟に刻して剣を求む
今週の漢籍タイムです。
先週頑張って『論語』を出し、スタミナが尽きたかもしれない本作製作陣はともかく、こちらはまだ弾が残っております。
舟に刻して剣を求む。『呂氏春秋』
ザッとこんな話です。
ある人が川を船で渡っている時、剣を落としてしまった。
「まずい! よし、船に落とした位置を刻むか」
そう言って船にマーキングをしました。
そして船が止まったあと、剣をその位置を参照して探しますが、見つかるわけもない。
昔の感覚で今の物事を判断しようとするのって、そういうことですよ。アップデートしようね!
渋沢栄一顕彰とは何か?
まさにこの「舟に刻して剣を求む」ではないかと思うのです。
もう世界的に行き過ぎた資本主義の是非すら問われ始めているのに、今年の大河はキャピキャピと“日本資本主義の父”を褒めている。
例えばこちらの記事。
◆渋沢栄一が新一万円札の顔にふさわしい理由 LGBTの学生を採用面接して悟った彼の凄さ(→link)
渋沢栄一とあまり関係がありません。渋沢の話をする意味がない。
でもWeb記事はこういうことが好きです。見出しに入れておけばそれでPV稼ぎができますからね。記事の趣旨がボヤけてしまいますが、数字を前にしては些細な問題なのでしょう。
見落としていることがあります。
渋沢栄一が生きていれば、SDGsに配慮しただの、差別しないだの、そういう願望ありきの記事は実に多い。
それって渋沢のことをよく知らないだけでは?
SDGsについて言えば、日本の公害第一号である足尾銅山に渋沢は深く関与しています。
むしろ渋沢は公害隠蔽しそうです。世界的に『MINAMATA』が話題だというのに日本では渋沢顕彰。それが2021年大河です。
マイノリティに優しいかというと、別にそんなことはない。
試しに別の国で聞いてみればよろしい。
レオポルド2世を褒めちぎり、水戸学を信奉する渋沢が差別しないって?
冗談にもほどがあります。
要するに、渋沢栄一の実像なんてどうでもいいんですね。
万札になるし、大河主人公だし、話題だし、PV稼げるし。そういう諸条件が揃えば、筆というのは動かせます。
しかし、そのまま掲載する朝日新聞もどうなのやら。今年の大河と渋沢を褒めちぎる記事をよく掲載していますが、正しいからそうしているんですか?
マスメディアの使命とは、権力監視ではありませんか?
差別とからめてお札の顔を持ち上げるのであれば、性差別と戦った津田梅子の方が適切でしょう。
出自や性別やらで散々門前払いされて、それでも挫けなかったのが津田です。
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渋沢はテロ仲間のコネでホイホイ出世していて、とても現代人の見本になんてできません。
女癖の悪さや海外での低評価を持ち出すと、こう返されると想像もつきます。
「今の価値観で当時を裁いちゃいけないよ」
「妾ってセーフティネットだから」
それを言い出したら、世の中なんでもアリで、歴史から何も学べなくなってしまいます。
伊藤博文なんて若い娘や人妻にも平気で手を出す人物でしたが、もしも身内の人がその対象とされたら「時代だから」でヘーコラできるでしょうか。
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渋沢も、伊藤ほどではないですが、十分に常軌を逸した女遊びをしています。
そんな人物を大新聞が称賛しているのですから理解に苦しみます。
マイノリティへの配慮は、明治大正昭和の偉人ではなく、現代を生きる誰かから学ぶべきでしょう。
お札の顔であれば、イギリス50ポンド紙幣の顔となるアラン・チューリング。
ナチスドイツとの情報戦勝利に貢献し、コンピューターやAIの父と評されるものの、同性愛者であったがために自殺へ追い込まれた人物です。
彼を描いた『イミテーション・ゲーム』は若い世代にも人気があるベネディクト・カンバーバッチ主演。
若者と語るのであれば、大河より訴求力もあるかと思います。非常によい映画でした。
蓮は泥より出でて泥に染まらず
大河って、見どころのある役者が多いですよね。
秋に気高く咲く菊のような、そんな門脇麦さんが好きだという人もいる。
牡丹のように華麗で美しい。そんな川口春奈さんは多くの視聴者に愛されました。
でも私は、敢えて大島優子さんを推したい。
彼女の演じる兼子は、芸者でありながら妖艶とはちがう。
真っ直ぐに伸びた背筋、清らかさがある。アップにならなくてもいい。遠くからソッと見てもいい。そういうところがグッときます。
門脇さんのような菊は、物静かな美がある。川口さんは今が盛りの華やかさ。
でも、一人孤高な美しさがあるといえば、大島さんじゃありませんか!
なんかいきなり妄言を吐き始めたようで、元ネタはあります。
北宋の時代を生きた周敦頤(しゅうとんい)の『愛蓮説』です。
予独り蓮の汚泥より出でて染まらず、清漣に濯(あら)われて妖ならず……
私はただ、蓮が汚泥から生えているのに染まらず、さざなみに洗われても妖艶ではないところが……(大好きなんです)
これをもとにして「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という言葉がある。
大島さんはまさに泥の中から生えているにもかかわらず、染まらず、気高く咲き誇る。
そんな蓮のような美しさがありました。
役者は美形であることが条件です。
それは顔かたちの作りだけではありません。気品がある。芸者でありながらも凛とした佇まい。座っている姿だけでも美しかった。
安心しました。彼女自身に光るものがあるから、ああも美しい。
これが彼女にとって最初の大河でも、最後ではない。そう願っています。
将来的には淀の方でも、北政所でも、坂本龍馬の妻であるお龍でも。大物を狙っていける。そう思えました。
この兼子だけでも今日は見る価値があった!
感謝します。
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【参考】
青天を衝け/公式サイト















