岩成友通

絵・小久ヒロ

三好家

三好三人衆の一人・岩成友通 なぜ彼らは執拗に信長と戦い続けたのか

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信長包囲網の破綻

元亀年間は、信長の敵対者にとっては残されたわずかな猶予。

彼らはきっちりと連携を取り、また合戦においては集結せねばならない局面でした。

しかし、織田家を取り巻く環境は確実に信長有利に動いていきます。

◆元亀2年(1571年)
毛利元就死去
北条氏康死去

◆元亀4年(1573年)
武田信玄死去
足利義昭放逐※室町幕府滅亡

◆天正元年(1573年)
朝倉義景死去
浅井長政死去

次々に要人が亡くなったり滅ぼされたりして、年号が天正に変わると、浮沈を繰り返していた「信長包囲網」も完全に破綻。

包囲網の一角「三好三人衆」も、破滅へと巻き込まれてゆきました。

追い詰められた岩成友通は、足利義昭と手を組みます。

足利義昭
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岩成友通は一応、寺社領を持ち、近畿において存在感はありました。

義昭とは過去の怨恨はあるにせよ、もはや手を組む相手を選びようがない。焼け石に水のようなものではあっても、互いに頼るしかないわけです。

しかし、こんなことは信長からすれば悪あがきに過ぎません。

信長はかねてより「三好三人衆」を滅ぼすつもりだったのでしょう。

足利義昭に突きつけた【十七箇条意見書】の中で、賀茂神社の所領をめぐり岩成友通と共に名指しで批判しているのが『信長公記』にも記されています。

十七箇条意見書と殿中御掟
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第二次淀城古城の戦い

そして、ついにその時が来ました。

信長は、岩成友通が立て篭もる淀城を攻撃(第二次淀城古城の戦い)。

友通も迎え撃ちはしましたが、激戦の最中、他の兵と共に堀に転落し、その首を討ち取られてしまいます。

討ち取ったのは、細川藤孝の手の者とされています。『信長公記』によると下津権内(しもづごんない)という者ですね。

細川藤孝(細川幽斎)
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変化してゆく情勢のもと、信長につくか対立するか。

その選択肢が運命を分けます。

このとき他の三好三人衆は、詳しい生没状況は不明ながら既に世を去っていたと思われます。

三好宗渭は永禄12年(1569年)、阿波でひっそりと死去(『二条宴乗記』)。

三好長逸は死因も没年も未詳であり、フェードアウトするように歴史の隙間から消えています。

岩成友通だけは、なまじ討ち死にを遂げただけに、生没年と死の状況が明確に残ったんですね。

かくして「三好三人衆」は、歴史の狭間に消えていきました。

 

キャラクター性は残った

岩成友通のような敗死が喜ばしい……とは本人からすれば到底思えないでしょうが、プラスの作用もあります。

キャラクター性です。

岩成友通は死因が明らかなだけに、他の二人とは違ってフィクションでは猛将扱いをされることとなりました。

しかもこの現象は現在まで続いており、ソーシャルゲームでも最もキャラクター性がわかるグラフィックが採用されております。

本人からすれば、

「敗死イメージでなくて、築城や内政も反映してくれ……」

となるかもしれません。

ともあれ「三好三人衆」では最もキャラクター性があり、かつ敵対した松永久秀ほど誇張されていないという立ち位置になっています。

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文:小檜山青

【参考文献】
『中世武士選書31 三好一族と織田信長』(→amazon
『松永久秀と下克上』(→amazon
『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon
『織田信長家臣人名辞典』(→amazon
『戦国人名辞典』(→amazon
『国史大辞典』

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