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【信長公記184話】
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安土城に感動し「一生の思い出になります」て……
南部政直とは、おそらく168話(天正六年・1578年)に出てきた南部政直(宮内少輔)と同一人物だと思われます。
津軽ですから、これまた東北ですね。
陸奥の南部氏が信長に鷹を献上! 信忠は自ら育てた四羽を贈る~信長公記168話
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南部政直は、あれから一年間滞在していたのか。あるいは安土を再訪したのか。
まぁ、普通に考えれば後者のほうが可能性は高そうですよね。
石田・前田・南部の三人は安土城天守閣を見て感動し、「一生の思い出になります」と言っていたとか。
思わず石田三成と前田利家が並んでいる姿も想像してしまいますが、ともかくホンワカしていて、なんだか東北からの修学旅行生のようですね。
遠野孫次郎には返礼として、以下の三点が贈られました。
①織田家の紋が入った衣服 十重
「表裏の色がそれぞれ十色ずつあった」と書かれていますので、おそらく表裏の生地が違う「袷(あわせ)」の着物だと思われます。
②白熊の尾 二本
これは漢字そのままの「シロクマ」ではなく、「はぐま」と読みます。この場合はヤクを示すため、「白いヤクの尾」が二本ということです。
ヤクは日本には生息しておらず、その毛はインドや中国などから輸入され、兜や槍の飾りとして武士に好まれていました。
「家康に過ぎたるものが二つあり、唐の頭に本多平八」という文句がありますが、この”唐の頭”はヤク毛の飾りがついた兜を意味しています。
③虎の毛皮 二枚
使者の石田主計にも、衣服五重と旅費として黄金が下賜され、主計は感動して帰っていったそうです。
宗論勝者にも銀子を振る舞い
8月2日には、同年5月に【安土宗論】で勝利した浄土宗の僧侶たちに銀子を送っています。
安土宗論で信長に斬首刑とされた者も!法華宗vs浄土宗の結末~信長公記181話
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主に発言していた聖誉貞安に銀子50枚。
宗論の会場となった浄厳院の長老に銀子30枚。
審判を務めた日野の景秀鉄叟に銀子10枚。
宗論の発端でありながら、冷静に対応した関東の霊誉玉念に銀子10枚。
なかなか気前のいい配りっぷりですね。
8月6日、今度は近江国中の力士を召し寄せ、安土山で相撲を取らせています。
その中で、甲賀の伴正林(とも しょうりん)という18~9歳の若者が七人抜きをし、翌7日にも良い取り組みを見せたため、信長は早速彼を召し抱えました。
この頃、鉄砲屋与四郎という者が罰されて牢に入れられていたので、彼の私宅や財産を没収し、正林に与えたといいます。
他にも知行100石・金銀飾りの太刀・脇差大小・小袖・馬・馬具一式が正林に与えられたのですから、相撲取りになって一発出世する道もあったんですね。
そして8月9日には、柴田勝家が加賀へ出陣、阿多賀・本折・小松(いずれも小松市)の入り口まで焼き払い、稲田を薙ぎ払って帰陣したことが書かれています。
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この時点の北陸戦線については膠着状態にありましたので、上杉氏などに対する軽い牽制といったところでしょうか。
次回は、裏切者・荒木村重のターニングポイントとなる出来事が起こります。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
太田 牛一・中川 太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)
日本史史料研究会編『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon)
谷口克広『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon)
谷口克広『信長と消えた家臣たち』(→amazon)
谷口克広『織田信長家臣人名辞典』(→amazon)
峰岸 純夫・片桐 昭彦『戦国武将合戦事典』(→amazon)