絵・富永商太

皇室・公家 信長公記

東宮蹴鞠の会 信長から光秀に「惟任日向守」が贈られ|信長公記第123話

2020/03/31

浅井長政や朝倉義景をはじめ、【比叡山焼き討ち】や【長島一向一揆】など。

各地域の討伐で、近畿とその周辺をほぼ勢力下に収めた織田信長ですが、全てが意のままに……というわけでもありません。

特に朝廷や公家との付き合い方に関しては、常に気を使っていた形跡がうかがえます。

天正三年(1575年)6月26日、信長は京都へ出発しました。

長篠の戦いが5月ですので、本当に休む暇なくアッチコッチいってますね。

📚 『信長公記』連載まとめ

 

清涼殿の庭で蹴鞠の会

この日は佐和山で休息した後、早船で坂本へ渡り、27日には京都へ入っています。

行軍でもない割には、急いでいるという感じですね。

前回、”山中の猿”を助けた節でも、この日に出発したことが書かれていますから、先に用事が決まっていて、その途中で山中に寄ったのでしょう。

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今回の宿所は相国寺でした。

以前、今川氏真と会ったときのお寺で、7月1日になると、摂家・清華家などの公家や、近畿周辺の大名が続々と挨拶にやってきました。

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中でも、塩川長満は馬を下賜されたとか。

彼は以前、松永久秀に与していたのですが、おそらくこの頃までに信長へ降っていたのでしょう。

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ここまで名前が出てきていませんから、戦功などへの褒美ではなく、信長に従った事自体を評価されての褒美でしょう。

そして一日おいて7月3日。
今回の上洛の目的だったろうと思われる、東宮主催の蹴鞠会が行われました。

東宮とは皇太子のことです。当時は誠仁親王(さねひとしんのう)という方で、ときの帝である正親町天皇の嫡子でした。

蹴鞠会の会場は清涼殿の庭。

清涼殿そのものは天皇の住まいかつ儀式場ですし、この蹴鞠自体も伝統的な形式に則ったものとされています。きっと厳かな会だったでしょう。

 


氏真との蹴鞠に参加した人も

信長は御馬廻衆だけを連れて参内し、見物の席につきました。

蹴鞠に参加した公家も多く、ざっとかなりの人数です。

公家の参加者

・三条西実枝
・勧修寺晴右
・飛鳥井雅教
・庭田重保
・甘露寺経元

高倉永相たかくらながすけ
・山科言経
・庭田重通
・勧修寺晴豊
・三条西公明

・中院通勝
・飛鳥井雅敦
・烏丸光宣
・竹内長治
・中院通勝

・水無瀬親具
・三条公宣
・日野輝資
・広橋兼勝
・高倉長孝

・万里小路充房
薄以継すすきいつぐ
五辻元仲いつつじもとなか

中には、この年3月に今川氏真との蹴鞠に参加した人もいます。

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もしかすると、その会の話を東宮が聞いて、「ならば宮中でも蹴鞠の会をしようか」と考えたのかもしれませんね。

他、それぞれの衣装の色などが書かれているが、ここでは割愛させていただきます。

 

信長当人ではなく家臣たちに称号や官位を

蹴鞠は四回行われ、誠仁親王も一回目と四回目に参加していました。

元々蹴鞠には勝敗がないため、おそらくは和やかな会だったと思われます。

蹴鞠が終わってから、正親町天皇より信長へ、女官を通して盃を頂戴したとあります。信長と天皇の関係については、いろいろと話題になりますが……『信長公記』に書かれている限りでは、さほど悪い印象はありません。

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また、この日信長の官位昇進について勅諚があったようです。

しかし、信長はこれを受けず、その代わりに家臣たちの中から数名に称号や官位、姓を賜ることにします。

ポイント

・松井友閑 宮内卿法印
・武井夕庵 二位の法印

この二人は、織田家の吏僚の代表格です。

政治だけでなく外交や茶道にも長けており、戦以外の面でなくてはならない存在ですから、こうした格上げはある程度の効果も見込めたでしょう。

注目は以下3名の武将ですね。

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長月七紀

2013年から歴史ライターとして活動中。 好きな時代は平安~江戸。 「とりあえずざっくりから始めよう」がモットーのゆるライターです。 武将ジャパンでは『その日、歴史が動いた』『日本史オモシロ参考書』『信長公記』などを担当。 最近は「地味な歴史人ほど現代人の参考になるのでは?」と思いながらネタを発掘しています。

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