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 【戸田氏鉄の生涯】
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尼崎城築城の腕を見込まれ高虎と共に
その大垣に、戸田氏鉄さんが移るのはもう少し後のお話。
「大坂の陣」では居城の膳所城(滋賀県大津市・家康の天下普請によって築かれた重要な城)を守備していた氏鉄さんは、元和3年(1617年)に尼崎藩5万石の藩主となります。
2代将軍・徳川秀忠の時代ですね。
尼崎というと、2019年3月29日に外観を復元した天守がグランドオープンしたことで話題になった尼崎城があります。
ちなみに天守は、旧・ミドリ電化(現在はエディオン傘下)の創業者・安保詮さんが、創業地への恩返しとしてポケットマネーを10億円以上かけたことでも注目を浴びました。
この尼崎城を築城した人物というのが、氏鉄さんです!
大阪の西を守る重要拠点として、氏鉄さんが丹精を込めて建てた尼崎城。
その名城ぶりが話題となっていたのか、元和5年(1619年)には時の将軍の徳川秀忠が視察に訪れています。
そして、築城センスを認められた氏鉄さんは、翌年から10年に及ぶ大坂城改築工事の普請総奉行に指名されているのです。
なお、総責任者は“築城名人”として後世まで語り継がれる藤堂高虎ですので、その下で責任者だった氏鉄さんの力量も素晴らしいものだったことがご理解いただけるでしょう。

藤堂高虎/wikipediaより引用
治水事業で地元住民リスペクト
さて、そんな戸田氏鉄さんが、尼崎において現代まで語り継がれている功績といえば城……ではなく実は河川工事です。
尼崎は当時、湿地帯が広がっており、神崎川の洪水に度々悩まされていました。
そこで氏鉄さんは、神崎川の支流を広げる大工事を行って流れを改善し、洪水の被害を少なくしたといいます。
尼崎の人々は氏鉄さんに感謝し、その支流を氏鉄さんの通称「左門」に因んで「左門殿川」と呼び始め、現在に至っています。
また、左門殿川には、同じく氏鉄さんに因んだ「左門橋」という名の橋も架けられています。
アンケートは実施していないので何とも言えませんが、尼崎市民ならきっと知っているに違いない!
大垣でも得意の築城&治水技術を活かす
尼崎藩での実績を評価された戸田氏鉄さんは寛永12年(1635年)、大垣藩10万石に大出世。
3代将軍の徳川家光の時代です。
大垣は名産に「水まんじゅう」があるなど水が豊かである一方、大小様々なサイズの河川が入り組み、尼崎と同じく水害に悩まされる地域でもありました。
氏鉄さんは尼崎で培った河川工事技術を活かし、水門を新たに設けるなど、大垣の領民を水害から救いました。
また、慶安2年(1649年)には居城の大垣城を、明治時代の廃城まで200年以上続く姿へ大リフォームしています。
話は前後しますが、大垣藩に移って2年後の寛永14年(1647年)、62歳の氏鉄さんは、あの「島原の乱(島原・天草一揆)」にも参戦しています。
実戦経験が少ないメンバーが多かった幕府軍の中で貴重な戦力だった氏鉄さんは副将的なポジションに指名され、松平信綱(“知恵伊豆”と称された幕府の重臣)と共に鎮圧に大貢献しています。
4代将軍家綱生誕時に「へその緒」を切った
家康時代に小姓。
秀忠時代に大坂城築城の総奉行。
家光時代に島原の乱を鎮圧。
江戸幕府にとって無くてはならない存在となっていた氏鉄さん。
寛永18年(1641年)には、後に4代将軍となる徳川家綱が誕生した際、なんと、へその緒を切るという大任を務めています。
その家綱が慶安4年(1651年)、将軍に就任したのを見届けると、氏鉄さんは同年に隠居し、明暦元年(1655年)に80歳でお亡くなりになっています。
平均寿命が50歳くらい?という時代の80歳ですから大往生ですね。
その後、大垣藩は氏鉄さんの善政もあって幕末まで戸田家が藩主を務めました。
明治時代になると、大垣城は廃城となったものの天守などは残され、昭和11年(1936年)、国宝に指定されています。
昭和20年(1945年)の空襲で焼失してしまったものの、大垣の人々の熱意により、昭和34年(1959年)に復元され、平成29年(2017年)には「続日本100名城」にも選ばれています。
氏鉄さんのカッコいい銅像が建つ大垣公園の北には、氏鉄さんを祭神とした「神社」も建立されています。
同地を歴史巡りの際には併せてどうぞ!
実際に僕が大垣城を探訪した動画が以下にアップされております。
よろしければご覧ください!
全国にはまだまだ知られざる名将たちがいます。
今後もがんばりますので、ご期待くださいませ!
文:れきしクン(長谷川ヨシテル)
📚 戦国時代|武将の生涯・合戦・FAQなどを網羅した総合ガイド
◆れきしクンって?
元お笑い芸人。解散後は歴史タレント・作家として数々の番組やイベントで活躍している。
 作家名は長谷川ヨシテルとして柏書房やベストセラーズから書籍を販売中。
【著書一覧】
 『あの方を斬ったの…それがしです』(→amazon)
 『ポンコツ武将列伝』(→amazon)
 『ヘッポコ征夷大将軍』(→amazon)
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