ゲーム・オブ・スローンズ シーズン8【Amazonプライム・ビデオ→スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS

ゲームオブスローンズ

ゲームオブスローンズ シーズン8第2話 あらすじ相関スッキリ解説!

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死者との戦闘前日宴会やろうぜ〜

さて、そのころ。ラニスター兄弟が飲んでいるところから始まった宴会は、メンバーが増えています。

・ティリオン
・ジェイミー
・ブライエニー
・トアマンド
・ポドリック
・ダヴォス

豪華なメンツだな、おい。

お互い、激戦を生き延びた戦績を語ります。

ダヴォスは【ブラックウォーターの戦い】と【落とし子の戦い】生存者です。

ジェイミーは、【パイク包囲戦(※ドラマ時系列前、シオンが人質となる契機となったグレイジョイの反乱での戦闘)】を生き、【ささやきの森】で敗北、捕虜となりました。

ブライエニーは、グレガーとの一騎打ちを制覇。

しかし、彼女は騎士ではない。だから【サー(※Ser。英語の表記Sirを変えてある)】ではない。あくまでレディなのです。

それが伝統だと聞いて、トアマンドがこう吐き捨てます。

「伝統なんて、くそくらえだぜ」

俺が王なら騎士にするけどなぁ、と続けるトアマンド。

ジェイミーは、騎士任命には王は不要だと言います。騎士は、別の騎士を任命できるのだと。

「跪け。騎士にならないのか、跪け」

ブライエニーに、そう語りかけるのでした。

 


サー・ブライエニーの誕生

ジェイミーは肩に剣をおろします。

これは実際に騎士の任命に必要で、エリザベス女王も未だに行う儀式です。

ゆえに騎士任命が多すぎると、筋肉痛になるんだって。

そんな現実のイギリスでも、女性の騎士(Knight)はいません。女性はDameです。

「立て、七王国の騎士よ!」

立ち上がったブライエニーは、騎士でした。

これはかなり泣ける話でして。

ブライエニーは、タース島領主の娘でありながら、その不器量、高身長、武芸の嗜みゆえに、求婚者すらろくにいない。そんな少女でした。

彼女は故郷から逃げるようにして去り、騎士を目指し始めます。

周囲の男たちは、彼女を馬鹿にしました。

ふざけて求愛し、あのブスと陰険なイジメをしていたのです。彼女が強ければ強いほど、攻撃は執拗でした。

そんなブライエニーを護衛に任命したのが、レンリー王でした。

ブライエニーが彼に忠誠を誓ったのは、愛と恩義が入り混じった感情ゆえでした。

しかし、レンリーはそこまで心が綺麗じゃない。

ロラス・タイレルと愛し合いながら「あのブス、マジウケるよね〜」と馬鹿にし、笑いものにしていたのです。

その容姿ゆえに、美しい貴族の娘にもなれない。

女ゆえに、騎士にもなれない。

そんなブライエニーが騎士になること。

それがどれほど素晴らしいことか!

これも女の幸福です。

女の幸福やゴールって、良妻賢母のことばかり設定されますよね。

ブライエニーの場合は、そうじゃない。騎士になること。それこそが幸せでした。

彼女自身も、そのことに気づいていないかもしれません。

原作ですとより露骨なのですが、彼女は結構面食いでロマンチックなのです。

レンリーの美貌にも惚れておりましたし、ジェイミーにもドキドキしています。

トアマンドよ、頑張ることだ!

 


サー・ジョラーとサムの恩返し

ジョラーは、モーモント女公のリアナと口論中。

まだ幼い少女を地下に逃そうとしますが、気高い彼女は断固拒みます。

この二人も、実はイトコ同士でなかなか複雑な関係です。

ジョラーの父・ジオーは、息子の奴隷貿易の責任を取って、モーモント家当主の座を妹・メイジに譲りました。

そしてジョンの前任【ナイツウォッチ】総帥となったのです。

メイジは【レッド・ウェディング】で殺され、リアナが当主となったわけです。

そんなジョラーに、サムが家宝であるヴァリリア鋼の剣【ハーツベイン】を捧げます。

ジオーがいたからこそ、サムは【ナイツウォッチ】で居場所を見出せたのです。

そのジオーのヴァリリア鋼の剣は、ジョンに譲られた【ロングクロウ】です。

そのかわりに、サムが恩返しとしてヴァリリア鋼を渡すのだと。

妻のために、奴隷貿易に手を染め、スターク家から追放されたジョラー。

そんな彼もまた、シオンのように贖罪のために、ウィンターフェルに戻ったのでした。

 

リアナの像の前で

このあと、ブライエニーが騎士になって浮かれさわぐ一行。

ここで、ポドリックが歌い始めます。

 

ポドリック、歌が上手〜〜!

それだけでは済まないんだな。

この歌を背景に、明日死ぬかもしれない人々の姿が映し出されます。

デナーリスとジョンは、スターク家の地下墓地にいました。

そこにあるリアナ・スタークの像を前に、デナーリスはこう言います。

「兄のレイガーは気高い人物だった。それなのに、リアナを凌辱していたとは」

いやちがう。陵辱じゃない。

同意の上の、関係だった。

それどころか、結婚していたのだと。

そして生まれた子供がいるのだと。

「俺の本当の名は、エイゴン・ターガリエン」

デナーリスは動揺します。

ジョンは、ブランとサムウェルから聞かされた事実だと告げるのです。

衝撃の告白の中、死者の軍勢が突き進んで来るのでした。

 


ジェニーの歌

ポドリックの歌ですが、これがかなり重要です。

以下、歌詞です。

死せる王たちが集う広間の高みで

ジェニーは彼女の幽霊と踊るのだ

彼女が失ったものと彼女が見つけたものたち

そして彼女を最も愛した人と

長いこと立ち去ってしまっていた人たちと

彼女は彼らの名すらを覚えていない

彼らは濡れそぼった古びた石の上で彼女を翻弄した

彼女の悲しみと苦痛をすべて取り除いた

それでも彼女は決して去りたくなかった

決して去りたくなかったのに……

彼らは日がな一日踊り続けた

そして夜が訪れ雪がホールに吹き付けた

冬から夏、また冬が来るまで

壁が崩れ倒れて落ちるまで

それでも彼女は決して去りたくなかった

決して去りたくなかったのに……

さて、この歌の主役であるオールドストーンのジェニーとは誰なのか。

原作とドラマ版では、ターガリエン家の血縁関係設定が一部異なりますので、ドラマ版準拠で説明します。

彼女は、ダンカン・ターガリエンの愛した女性です。

ダンカンとは、デナーリスの父・エイリス2世の兄でした。

本来嫡子で、王位を継承するはずであったのです。

ちなみにダンカンの名前は、ダンカン・ザ・トール(のっぽのダンカン)という【王の盾】総帥となった騎士が由来です。

このダンカンは、ブライエニーの一族であるともされています。

ダンカンは、旅の途中で身分を隠したターガリエンの王子・エイゴンと知り合い、冒険し、親友となったのです。

『ダンクとエッグ』という外伝がありますので、ご興味がある方は是非にでも。

このダンカンの名を持つエイリス2世の兄は、庶民のジェニーと恋に落ちます。

父であるエイゴン5世の反対を押し切り、結婚しようとするダンカン王子。

ジェニーは、【森の子】らの子孫ともされ、【森の魔女】とも親しくしていました。

【森の魔女】とは、サーセイの未来を予言したマギーというものもおります。

百発百中の神秘の占いができますが、普段は占いや魔除け販売等で生計をたてています。

ジェニーは、この【森の魔女】によりダンカンとの結婚にこぎつけます。

彼女はその結果、【オールドストーンズのジェニー】と呼ばれるようになり、敬意を表されたのでした。

【森の魔女】はこういったのです。

「エイリスとレイラの血を引くものこそが【運命の子】になるであろう」

この予言を受け、ダンカンは廃嫡されました。

その弟エリスが太子とされ、妹レイラと結婚させたのです。

エイリスとレイラの血を引く者は、現時点では二名います。

デナーリスとジョン。

どちらがその【運命の子】なのでしょうか。

原作読者の間では、ここにティリオンを入れる説もあります。

ただ、ドラマ版ではかなり根拠が弱くなっています。

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あのジェニーの歌は、彼らの運命を決定づけた女性のものでもあるのです。

しかし、ダンカンとジェニーの恋は悲恋に終わりました。

ダンカンは【サマーホールの惨劇】において、父王、【王の盾】総帥ダンカンらとともに、焼死したのでした。

ジェニーが幽霊と踊る場所とは、この【サマーホール】のことでしょう。

そしてこの歌は、死亡フラグとしても機能しているのではないでしょうか。

ジェニーの歌は、悲劇を予感させます。

これはあくまで私の予想ですが、サンサとの会話を踏まえると、死亡率が高いのはデナーリスではないかと思います……。

いずれにせよ、ジョンとデナーリスの二人が生き延びることができるとは、思えないのです。

 

MVP:ジェイミー・ラニスター

彼ほど視聴者に与える印象が変わった人物も、そうそういないのでは?

スターク家のきょうだいのように、成長途上でガラリと変わる人物は多い。

ただ、彼の場合は完成した成人済みで物語に登場してきました。

ブランが言う通り、姉とデキているうえに、窓から子供を突き落とすわ。

サンサが言う通り、スタークの君臣を襲って死傷させるわ。

途中までは、ただの高慢で嫌な奴でした。

それがブライエニーと出会い、彼の性根が明らかにされてゆきます。

王の弑逆は、民を守るためだった。

そのことを、ずっと一人だけ胸の内にしまってきた。そして侮辱を受け止めてきた。

スターク家に激怒したのも、弟を愛していたから。

原作はPOV(語り手)が交代する形式で、ティリオンから兄への愛がわかるのですが、どうしてもドラマだとそこがわかりにくいんですよね。

ティリオン視点から見ると、「兄はちょっとバカだけど、悪い奴じゃないし、好き」という捉え方です。

ブライエニーを救うことで、こいつはいい奴なんだな〜と痛感できるのです。

ちなみに、ラニスター家ってジェイミータイプが多いんですよね。

原作からカットされた一族は、だいたい単純で気のいい人物ばかりです。

例外が、タイウィンです。

彼の父はこれまたお人好しで、そのせいもあって、配下のレイン家による反乱を起こされました。

『キャスタミアの雨』のきっかけとなるレイン家掃討戦を指揮したのは、まだ若いタイウィンであったのです。

なんだかラニスターって、策謀に長けているな!

そうなったのは、実はタイウィンからでした。

そのタイウィンの子供たちですが、ティリオンは父から策略を受け継ぎました。

サーセイは冷酷さを。策略も最近は冴えてきましたね。

ジェイミーは、一番父から遠い、本来の典型的なラニスターなのです。計略はできないのさ。

サーセイへの愛ゆえに、家督相続を拒み【王の盾】になってしまったジェイミー。

サー・バリスタンのような高潔さもないと思いつつ、生きてきた男。

彼の性格的に、ラニスター家当主も適性はないかと思います。かといって、サーセイ の横にいることもあっていたとは思えません。

自分を縛っていた愛と家を捨てて、ウィンターフェルに立つジェイミー。

死を目前にしながら、彼はやっと本来の自由な魂に戻ったかのように思えます。

そこには【黄金の獅子】の高慢さはありません。

誠意と戦士としての魂だけがあればこそ、ブライエニーに従うといい、彼女を騎士にしたのでしょう。

これから先、何があろうと、彼の魂はブライエニーの中に残り続けるでしょう。

って、死亡フラグめいたことを書いてすみません!

まぁ、そりゃね……。

 


その愛が破滅を招くのか

先週、愛や性欲のせいで駄目になることがあるのではないか?と書きました。

それで思い出した、ドラマの改変箇所がありました。

それはロブ・スタークの妻です。

原作とドラマ版では、かなり異なっています。

 

◆ドラマ版
名:タリサ・メーガー
性格・外見:心身共に成熟していて、自立的
出身:ヴォランティス
職業:治療師
結婚の契機:治療を契機に恋に落ちる。彼女自身の性質に、ロブが惹かれた
生死:胎児ともども死亡

 

◆原作版
名:ジェイン・ウェスタリング
性格・外見:ほっそりとしていておとなしい
出身:ラニスター領西部
職業:ラニスター配下ウェスタリング家貴族令嬢
結婚の契機:治療を契機に恋に落ちるところは同じ。だが、動機は「できちゃった婚」。タイウィン・ラニスターがロブに催淫剤を盛っていたと思われる記述もある
生死:生存

 

結構な違いがありますね。

ドラマですと、原作にはない恋愛描写があり、なんだかかったるいなぁと思ったものです。

しかし、最終シーズンに至り、意図が掴めてきた気がします。

原作のロブは、ラニスターの計略にはまり、性欲から妻となる女性と関係を持ってしまったように思えます。それがドラマですと、自発的に恋愛をして結婚をしていると。

これはよいことのようで、実はそうでもない。

ロブが政略結婚であるフレイ家の縁談を拒んだことが、【レッド・ウェディング】の引き金でもあるわけです。

ドラマ版の方が、謀略にはめられたというよりも、ロブの愛ゆえの過ちであると強調されています。

ジョンの出生といい、デナーリスとの恋愛といい。

最終シーズンまで来て、愛ゆえの破滅がチラチラと見えてきました。

原作シリーズタイトルは『氷と炎の歌』です。

このタイトルからして、ジョンとデナーリスが物語の鍵を握る人物であることは、確定的でしょう。

しかし、それが皮肉にも共闘どころか、亀裂と危難を招いている。なんとまぁ、おそろしいことでしょうか。

さて、その原作。

ドラマバケが決まった時には、停滞している刊行も弾みがついて完結するだろうと思っていたものですが。

ドラマが追い抜き、ついには完結することになりました。

G・R・R・マーティンよ……早く書いてくれ!

 

母になることだけが女の人生なのか?

愛のもたらす破滅は、恋愛だけではありません。

母の愛――本作ほど、母の愛に厳しい作品も、なかなかないと思います。

サンサがジェイミーをチクリと刺した、ジョリー殺害の件。

これもジェイミーに言い分があります。

キャトリンは、我が子ブランへの愛に目がくらみ、策謀にはまってティリオンを誘拐していたのですから。

本作には、愛が強烈な母親が何人も出てきます。

我が子ロビンをスポイルしてしまったライサ・アリン。

我が子のためならば手を汚すサーセイ。

我が子のためならば何でもするキャトリン。

母性愛は、神聖な愛とされています。

フィクションではその傾向が強いものです。

しかし、現実では母性愛が悲劇を招く例もある。

長年タブーとされてきたことが、ようやく語られ始めました。

◆NHK武田真一アナ、「毒親」特集で大粒の涙 「子育てのいろいろな後悔があります」(→link

ここであげた三人の母は、悲劇的な運命を迎えています。

ライサの場合は、母としての愛よりも、ピーター・ベイリッシュへの愛で破滅しましたが。

サーセイは、我が子全員の死を見届けることに。

キャトリンは、我が子は全員死んだと信じたまま亡くなりました。

母性愛は美しく神聖であるどころか、破滅の鍵ですらあります。

こうした母の愚行を、女の浅ましさゆえではないかという意見も、原作発表時からありました。

最終シーズンを迎え、そうではないと確信できたのです。

母の愛は素晴らしい――。

そのこと自体、疑念を持ってはいけないように思えるのです。

しかし、その母性神話が人を苦しめてはいませんか?

ジョンのように、生まれた時から母の愛を失っていた人間は、何か欠けてしまうのでしょうか?

母から虐待をされていた子は、母の愛を疑う声をあげることすらできないのでしょうか?

我が子を愛することのできない母は、人間失格ですか?

母になれない女は、人間失格ですか?

そうじゃないでしょう。

今回、そのことも見えてきました。

ブライエニーは、騎士になることで目標を果たしました。

アリアやリアナは、戦うこと。

サンサやデナーリスは、君臨し統治することで目的を果たそうとしています。

ミッサンディは、グレイワームを愛する限り、決して母にはなれません。

彼女らは良妻賢母ではありません。

だから、無価値ですか?

人間失格ですか?

女が十人いれば、その数だけ人生があって当然です。

愛も、目的も。

人には、その人なりの人生がある。

男だろうと、女だろうと。

そう本作は、示しているように思えるのです。

文:武者震之助

【参考】
『剣嵐の大地 (中)〈氷と炎の歌 3〉(ハヤカワ文庫SF1877)』(→amazon

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