死屍累々、そこにあるのは惨劇のあとでした。
女王デナーリスの命令のもと、グレイワームはラニスター将兵の処刑をせよと命じています。
ジョンとダヴォスが止めても、復讐の鬼と化した彼は止まりません。
いや、止まらないのはデナーリスなのか。
「サーセイに従うものは殺す!」
そう言い切るわけです。
ジョンはショックを受けた顔でデナーリスを探しに向かいます。
シーズン1~8や前史も含めて全部で14本の解説記事!
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兄よ、姉よ! 無念の獅子吼
ティリオンは松明を手にして、崩れ落ちた建物の中へと歩いて行きます。
その光に照らされた先にあるのは、ジェイミーの義手でした。
この義手をめぐっては、消し忘れでいろいろあったようですが。
◆「ゲーム・オブ・スローンズ」、コーヒーカップに続き新たなミスが発覚でファン呆れ顔 (→link)
ティリオンは瓦礫を取り除き始めます。
そこにあったのは、ジェイミーとサーセイの死体です。
母の胎内に戻るように、双子は折り重なって死んでいるのでした。
ティリオンは悔しそうに瓦礫を叩きつけ、泣き出します。
俺を化け物扱いしなかった兄よ!
憎みながらも、理解したかった姉よ!
二人ともティリオンからジェイミーに授けられた策で動いていた部分もあるわけです。
デナーリスの王都進撃において、彼の責任は回避できません。
ティリオンよ……生まれることで母を殺し、父を手に掛け、そして姉と兄をもその死の引き金を引いてしまったのです。
一体何人の死を見届けねばならないのか。
ティリオンは泣き叫びます。
あまりに悲痛な声でした。
アリアも、茫然自失とした顔で荒れ狂うドラスク戦士を見ています。
もう、サーセイを殺すどころではありません。
輪からの解放か、虐殺か
ジョンはデナーリスに会いに行こうとしますが、グレイワームが立ちふさがります。
その頭上を、ドロゴンが飛んでいく。
デナーリスはヴァリリア語で演説を始めます。
「【血盟の血】よ! 彼らの城を陥落させ、七王国を我がものとした! ドロゴ・ヌォド、汝を陸軍大臣に任命する!」
このヴァリリア語が、彼女はウェスタロスの人間でないことを強調するようでもあります。
歓声を送るドラスク戦士も、そのことをはっきりと示すのでした。
アンサリード(【穢れなき軍団】)は、奴隷から今は解放者になった。
王都を解放したのだ!
そうデナーリスは高らかに宣言します。
「戦いは続く! 七王国を我がものとするのだ。ウィンターフェルからドーンまで!」
ラニスポートからクァースまで。
夏諸島から翡翠の海まで。
東西南北、戦いあるのみだと。
「すべての女も、男も、子供も! 解放あるのみ! ありとあらゆる輪を解放する!」
そう高らかに宣言するデナーリスの言葉を聞き、ウィンターフェルに生まれたジョンとアリア、ラニスポートに生まれたティリオンは顔を硬ばらせるのです。
それからデナーリスはこうティリオンに告げるのです。
「お前は兄を逃したな。反逆罪と知りつつ、そうしたのだな?」
「ええ、俺は兄を逃しましたとも。そしてあなたは王都を屠った!」
ティリオンはそう吐き捨てると、【女王の手】のブローチをむしり取り、投げ捨てるのでした。
階段下へ転がり、金属音を立ててゆくブローチ。
デナーリス配下の兵が、槍の柄で地面を突いていた音が止まります。
「連行しろ」
かくしてティリオンは、囚われてしまうのでした。
ジョンは呆然とした顔で見ています。
その横にはアリアがいました。
「ここで何をしているんだ?」
「サーセイを殺しにきたが、先を越されたようだな」
「彼女は今や我らの女王だ」
「サンサがそれに納得すると思うのか?」
「門外で待っていろ」
ジョンはアリアの言葉に、明らかに動揺してそう言うしかないのです。
「サンサは知っている。あなたの正体を。あなたは女王にとっては脅威だぞ。人殺しは、見ればわかる」
アリアはそう告げます。
なんとも皮肉な説得力ですが。
ティリオンをとらえたデナーリスが、ジョンをそうしないとは思えません。
ターガリエンは【炎と血】
ティリオンの独房に、ジョンが姿を見せます。
「ワイン持ってきたのか?」
「いや」
「まぁ、来てくれてありがとうな。女王はすぐに捕虜を殺すからなぁ。まだマシかもしれんね。ヴァリスの遺灰が俺の遺灰に、私の思った通りですって言うと思うぜ」
ティリオンは怒涛の嫌味を言います。
一回死んだなら、死後の世界って知らんかね。
ジョンは困惑し、覚えていないと回答します。
「あっそ。忘れていいんじゃね。俺は愛人(シェイ)を殺したし、父も殺したし、女王も裏切ったし。自分の運命を選んだようなもんだしな。でも、王都の民は違うんだぜ。正当化できねえぞこんなん」
戦は終わったとジョンは苦しい言い訳をするわけですが。
「それを信じるん? 女王の演説聞いてそう解釈できんの? 奴隷湾から王都まで、あの調子で解放し続けるんだぞ」
「あなたも俺も今日まで仕えただろう」
「ああ、あくまで今日まで、な」
ヴァリスは正しかったとティリオンは続けます。
「ま、ターガリエンといえば【炎と血】ってわけだ。【炎と血】。まさにそれじゃね」
「それを言うなら、俺も【炎と血】だ。父と君は関係ないだろ」
ジョンはそう続けます。
ターガリエンの血が、もはや呪いに成り果てました。
「まぁよ。父の血ってことなら、俺もタイウィンの息子だわな。タイウィンもサーセイも極悪だったわ。けどよ、あの二人が殺した死体を積み上げても、女王の王都虐殺1日分半分以下だわな」
これは重要な指摘なんですよね。
【レッド・ウェディング】にせよ【大聖堂爆破】にせよ、犠牲者人数でカウントするとそこまで多くないんです。
【レッド・ウェディング】の元ネタは、40名以下ですからね。
グレンコーの虐殺が超凶悪!安心させて殲滅するレッド・ウェディングの元ネタ
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先週も書いたのですが、
「戦をするくらいなら謀殺の方がいいよっ!」
というわけです。
ゲームオブスローンズ シーズン8第5話 あらすじ相関スッキリ解説!
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ジョンは弱っております。
義務は愛を殺す
「批判するなよ。その場にいなかったろ。それにミッサンディ斬首、ドラゴンを殺されて怒ってたっていうのもあるし」
「それが虐殺の理由になるのかよ。お前もあのドラゴンが生きていて、乗っていたら、あそこまで焼きまくるのか?」
「わかんないな……」
「嘘こくなよ。裏切りたくねえから言ってるんだろ」
アスタポアでの虐殺。
貴族磔刑三昧。
ドラスクのカールどもを大量に焼き殺す。
デナーリスは、自分が悪人認定した相手は殺しまくってきた――ティリオンはそう主張します。
そうして殺すことで、自分の力を噛み締めてきただろうと。
言われてみればそうですね……。
裏切った侍女のドリアを閉じ込めて処刑あたりから、容赦ないものがありました。
本作の第1話は、エダードがブランや息子に斬首を見せつける場面でした。
殺す重みを見せつける、スターク家の教育方針です。
デナーリスは、そんな教育を受けていない。
命の重み、殺す重みを理解していないのでしょう。
全人類のためによりよい世界を作ると宣言し、殺しまくる。逆らえば殺す。そういう人だろうが。
ティリオンはそう指摘するのです。
ジョンは座り込んでしまいます。
「愛しているのはわかる。俺もだ。お前ほどうまくできなかったけれども。信じてた。彼女を心からな。愛は理性に勝るってこと。誰もが知ってるだろ。俺の兄貴もそうだったよ。愛は義務を殺すんだ」
「今気づいたのか?」
「ま、メイスター・エイモンの言葉だわな」
これはジェイミーの最期でもありますが【王の盾】になった経緯でもあります。
ジェイミーは嫡男なので、結婚できない【王の盾】になることはタイウィンの想定外でした。
しかし彼は、愛ゆえにサーセイの側にいるために、嫡出子である義務を捨てたのです。
「時に義務は愛に死をもたらす。あんたは人を守るために尽くしてきただろ。今、人にとって最大の脅威は何だと思う? 残酷なのはわかちゃいるが、それが正義だ」
そうだ。ジョンは【冥夜の守り人(ナイツ・ウォッチ)】として、死者から生者を守るべく奮闘してきたのです。
「最後に処刑されるのは俺じゃない。【鉄の王座】の邪魔者は殺され続ける。女王が下す判断次第ってわけだな」
「こんな結末で残念だ」
「お前の妹たちはどうだろうな。まだ女王に忠誠を誓っていないよな」
「誓うさ!」
「サンサはなんで俺に、お前の正体をバラしたんだろうなぁ。今、選べよ!」
ティリオンはそうジョンに突きつけるのでした。
こんな結末は残念――ジョンの言葉が重い!
【鉄の王座】に座る時を待っていた
デナーリスは、人生を賭けて求めてきた【鉄の王座】を見て感無量の表情です。
その彼女の背後に、ジョンが立ちます。
「兄が言っていた。エイゴンが倒した剣を固めた王座だって。20まで数えられない私でも、高い山で座ったエイゴン王の足の裏しか見られないだろうな、って思っていた。そういう高い山を想像していたの」
「ラニスターの捕虜を処刑するのを見たんだ」
「必要だった!」
「見ていたのか? 幼子まで死んだぞ」
「和平交渉を壊したのはサーセイだ! 人質を利用した、そんな奸計に負けるわけにはいかない!」
「ティリオンは義務を果たしたんだ。彼を許してくれ」
「それはできぬ!」
「許してくれ。皆を、許してくれ。過ちを理解させて許すんだ。頼むよ、ダニー」
「できない。問題に向き合わねばならん。慈悲よりも忠義が必要なのだ!」
「慈悲こそが必要なんだ!」
ダニーと親愛を込めて呼びかけても、彼女には通じない。
「存在しない世界を夢見よう。難しいことだ。けれど、きっといい世界になる!」
「どうしてわかる?」
「善を見極められるから。あなたもだろう」
「他の皆はどうなんだ? 世界の他の人は見分けられるのか?」
「奴らに選択肢はない。あなたは私の側でよりよい世界を作るのだ」
ずっとそうだった。落とし子だった頃から、20まで数えられなかった幼い頃から、輪を壊そうとしてきたはず。
そう、うっとりとデナーリスは語るのです。
「君は我が女王だ。今も、これからも」
ジョンはそう言い、二人は抱き合います。
そのとき……ジョンの短剣が、デナーリスの体を刺し貫くのでした。
ぐったりと倒れるデナーリス。
そこへドロゴンが悲痛な声を上げながら飛んできます。
ドロゴンは死んでしまったデナーリスを確かめ、嘆きを見せます。
そして炎を吐き出すのでした。
ジョンには向かわず【鉄の王座】へ。
溶けて流れて、デナーリスが目指した王座は消えてゆくのです。
そしてドロゴンは、デナーリスの屍とともに飛び去るのでした。
どういうバッドエンドだ。
そう唖然としますが、これもティリオンとの対話、そしてあの惨劇を踏まえればそうなるのかも。
王を選ぶ
ティリオンは、呆然とした顔でグレイワームに引き出されます。
デナーリスの死を受け、ジョンは捕縛。
そして七王国の諸侯が集っているのでした。
ここで話し合いとなりますが、旧デナーリス配下のグレイワームやアンサリード、ヤーラ・グレイジョイはおさまりません。
死闘をくぐり抜け王都を支配したのに、納得できるわけもありません。
ジョンは処刑だといきり立っています。
一方で、サンサとアリアは助命したい。
苛立ちながらヤーラは主張します。
「我が女王を殺したジョンは処刑だ!」
「あぁ? 兄貴のこと殺すと言ったらお前を先にぶっ殺すぞ?」
アリアがそうヤーラを脅すのでした。流石ですなぁ。
ダヴォスは、リーチ(旧ティレル領)をアンサリードにやるからとグレイワームに妥協を促しますが、賠償より正義が欲しいと拒否されます。
ここで、ティリオンが前に出ます。グレイワームは苛立っているのです。
「お前は黙ってろ!」
「俺より口がうまい奴いねえだろ。ジョンのことは女王が決めればいいんだ。王でもいいけどな」
こうして王を選ぶ流れになるのです。
ここでエドミュア・タリー(キャトリンの弟、【レッド・ウェディング】は彼の結婚式だった)が立ち上がり何かを言おうとします。
「叔父上、ご無理なさらずお座りくだされ」
ここでサンサが止めます。
なんのかんのでこのエドミュア、いい扱いかな? 生きているし。そこにいるだけでなんかちょっと和みます。
サムウェルがここで提案します。
「諸侯のためでなくて、全ての民のための王を選びましょう」
犬や馬のために選ぶのかよと突っ込まれても、サムウェルはめげません。
輪を壊すもの
「ま、俺はあの女王に仕えて裏切った。嫌われもんよ。
けど、数週間考えてばかりでな。ちょっとここで小鬼(インプ)の意見を聞いてくれねえかな。
ずっと考えてきたけどよ。血みどろの歴史に、ろくでもない失敗。人を団結させるもんってなんだろうな?
軍? 金? 旗?
物語だと思う、物語あってこそ! 誰にも止められねえよ。戦も勝てない。
そこで! 不自由なブランってことだわ。窓から落ちて、壁を超えて、【三つ目鴉】として全てを知ったんだ。最高じゃねえか」
ここで、ブランは野心がないし、子作りもできないという意見があるのですが。
「そこがいいじゃない! デナーリスが壊したかった輪ってまさにそこなのよ! 血統で決めないこと。話し合って決めることだ!」
それでこそ領主。権力を望まない。それはわかる。
だからこそ、無欲だからこそ、皆が選んだ王として最高なんだ。そうティリオンは力説します。
だからこそ、よりよい七王国に尽くしてくれる――。
「だからこそここにいるんだ」
「賛成!」
「賛成だ」
「賛成しよう」
ティリオンの演説を受け、諸侯が次々とブランに投票します。
最後のサンサは、愛する弟はきっとよい王になると太鼓判を押します。
「けれど、北部は犠牲になってきた。生き延びたものはこれ以上忠誠を誓えぬほどだ。戦った北部はこの先、何千年と自由の王国にしていただきたい!」
サンサがそう言うと、皆が頷きます。
こうしてブランは、七ならぬ六王国の王となったのです。
「不自由王ブランばんざーい!」
「万歳!!」
ティリオンは【王の手】に任命されます。
ダヴォスにしてくれよと本人が言ってもダメですね。
正義を尽くすことが残りの人生の意義と諭されるのでした。
さて、ジョンは……。
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