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【ゲームオブスローンズ シーズン8第6話 あらすじ相関スッキリ解説【最終回】】
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また【壁】で会おう
ジョンは【冥夜の守り人】に戻ることとなりました。子も土地も持たない、あの身分に戻るのです。
それが適切でしょう。
誰かがターガリエンの血を利用しようと企むかもしれない。
デナーリス殺害という罪を犯したからには、暗殺されるかもしれません。
「俺は正しかったのか? 俺たちは……」
正しい気がしない。
ジョンがそう言います。
「10年後にまた聞いてくれ」
「会えるのか? もう二度と会えないだろ」
「どうだかね。【王の手】なんざやってたら、また【壁】で小便したくならぁ」
ティリオンはそう言います。
思えばシーズン1で、二人はそう言い会ったものでしたっけね。
グレイワームは、ミッサンディと約束したナースへと船で向かいます。
サンサは違う道があればよかったとジョンに許しを請います。
「君のおかげで北部は解放されたんだ」
二人はしっかりと抱き合います。
ジョンはアリアに「いつでも【黒の城(カースルブラック)】で会えるな」と告げるのですが。
「そりゃどうだろうな」
「女だから追い出されるってか?」
「北部には戻らん」
「どこへ行く? 西へ向かう。西の果てには何がある? 誰にもわからんよな。地図にもないんだ」
「【ニードル(針)】はあるか?」
「ここにある」
そう言うと二人は抱きしめあいます。
ジョンはブランに跪きます。
「陛下、必要な時に不在で申し訳ありません」
「いるべき場所にいたから」
そう語るのです。
【王殺し】が女王を守った
【王の盾】総帥となったデナーリスは【白の書】を見ています。それは歴代の騎士について記されたものです。
ジェイミー・ラニスターの章に、彼女は続きを書いていきます。
【王殺し】が生者のために戦い、女王を守るために王都に戻り死んだ――そんな運命を記すブライエニー。彼女の中にはジェイミーがいます。
ジェイミーの死は愛の証であったかもしれませんが、彼はそれでも消え去りません。
騎士の魂を彼女の中に残していったのです。
ティリオンは、小評議会のために椅子を並べています。
きっちりと並べ返し準備万端です。
氷と炎の歌
しかし、やってきたブロンは結構ドカドカと椅子をずらすのでした。おいっ!
ここでグランドメイスターになったらしきサムウェル登場!
「ロバート王死後のことを【氷と炎の歌】という書物にまとめました」
「ほほう」
ティリオンは、俺については悪いこと書いてあるんだろうなあとめくり始めます。
ブロンの反応がなんだかおもしろいですね。
「あの、あなたのことは書いてありません……」
気まずいぞ、ティリオン!
ここで、ブライエニーがブランの車椅子を押して登場します。
「密告者の長がいないね。法務大臣、軍事大臣も。ドロゴンはどこだろうか?」
「探せばよろしいかと」
「じゃあ探してみようか」
「お望み通りにどうぞ」
そう告げると、これまた【王の盾】となったポドリックに伴われ、ブランは去るのでした。
「六王国の王万歳!」と言うものの、なんだかいまいち。
「練習させます!」と締めます。
さて、ブロンですが。リーチをもらいがっぽがぽ。しかも財務大臣だそうです。
この人事でいいのかな?
ここでティリオンは、これでええんかと念押し。
そして、復興するから財務大臣頼むで〜と念押しするのでした。
ブロンは文法ミスを指摘されて、
「んだてめえ、文法大臣か、このやろう!」と毒づいたり絶好調っすね。
ダヴォスは艦隊、港湾、水運の復興担当。海軍大臣ですね。
その他、下水道整備、売春宿の復興。課題は山積みです。
サムが「うーんシタデルとしては売春宿の効能はちょっと」と抵抗を見せるのでした。
そこでティリオンが、ロバと蜂の巣を売春宿に持ち込んだ話で脱線するという。
なんのかんので、六王国はうまくいきそうです。
平和になると笑いが戻るんですね。
壁の向こうへ、海の向こうへ
ジョンは壁を超え【自由の民】と合流。
トアマンドが嬉しそうに迎えます。ゴーストも!
うん……ジョンは壁に来て正解だったんだな。そう思える再会です。
スターク家のきょうだいではないからアルビノのゴーストをもらったジョン。
ダイアウルフが最後まで残ったのが、このゴーストというのも面白いですね。出てきてよかった。
まぁ、トアマンドは失恋しちゃったし、ジョンも妻帯禁止ですが、そのぶん男同士の友情でもあたためちゃいなよ! よかったな。
【ニードル】を身につけたアリアは、スタークの旗のもと、前人未到の西へ。
サンサは威厳と狼の王冠を身につけ、堂々たる【北の女王】に。
ジョンは【自由の民】と壁の向こうへ向かうのでした。
完
MVP:ティリオン・ラニスター
ティリオンの弁舌、弁舌、弁舌!
デナーリスの息の根を止め、ブランを王にしたのも、彼の弁舌あってのことでしょう。
ティリオンの弁舌がともかく冴えていました。
ドラゴンが暴れようが、弁舌や知略がなければ勝利できない。
そんなことを痛感したティリオン無双でした。
予想の答え合わせ:
サンサとティリオン共同統治:❌
まあ当たってはいませんが、サンサは北の女王、ティリオンが【王の手】だし、まぁまぁいい線いってたかな。
好きなキャラは死んだか?:
一番好きなキャラは死にました。
予想通りではありますが、いい死に方なのでまぁよかったかなと。
三番目くらいに好きなブロンがなんだかんだで大出世なので、満足です。
デナーリスは踊り続ける
オールドストーンズのジェニーの歌は、当たったとも言えます。
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デナーリスはドロゴンに連れ去られました。
最も愛したドロゴの名をつけた我が子のようなドラゴンと、どこかで彼女は踊り続けるのかもしれない。
デナーリスはかわいそうといえばそうです。
何もかもを失って、全てを捨てて賭けてきたのに、王座に座ることすらなく、死んでしまうわけです。悲劇といえばそうですが。
じゃ、何が悲劇かって?
血統です。世襲の悲劇です。
本人に特性があるかわからないのに、それが運命だと吹き込まれ突き進んだ悲劇がそこにあります。
ヴィセーリスが王に向いていないことは明確です。
デナーリスもそうだった。気づきにくいだけでそうだった。
どうしてデナーリスに、ジョン、ティリオン、多くの民、視聴者まで騙されたのか?
美貌? 血統? 正義? 物語?
ティリオンが指摘する通り、危険な兆候はいくらでもありました。
それを見逃したようなことが、あなたにもないかどうか。安易な救世主を求めていないか。
考える必要があるでしょう。
血統の魔法ということを考えますと、ターガリエン朝はフランスのボナパルト朝を彷彿とさせます。
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英雄の血は不要――そうフランスが悟るまで、大量の血が流れたものです。
その王朝当事者は悲劇的ではあります。
ただ、振り回される側だって十分迷惑なのです。
デナーリスの悲劇は、救世主や血統に夢を見る人間の頭をぶっ壊すインパクトがありました。
確かにデナーリスはかわいそうですが。
ティリオンの言葉を借りれば「個人がかわいそうなことと、王都の虐殺関係ねえし」となるのでしょう。
世襲の否定
デナーリスとジョンのターガリエンが完全に否定された一方で、ブランの子供を作れないことが大絶賛されました。
あぁ、このドラマってアメリカの作品だったねえ。
そう納得したものです。
海外は、日本ほど世襲を重視しないもので、特にアメリカは顕著です。
むしろ七光りを嫌い、隠すこともあるほど。
セレブが我が子を無理矢理よい大学に入れていて、そのことが問題視されていたほどです。
幕末、福澤諭吉のような日本人は、アメリカで誰もジョージ・ワシントンの子孫を知らないことに驚きました。
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当時の日本では、家康の子孫が治めていたわけですからね。
そういう世襲を否定してきた国が作るドラマで、中世ヨーロッパを模した世界観で、どうするのか。こういう落とし方があったんだと納得できました。
本作って、世襲の権力に否定的なんです。
デナーリスは、第一子流産の際に妊娠できない呪いをかけられました。
エダードの嫡男・ロブは【レッド・ウェディング】で殺害。
この際、ロブの血を引く胎児ごと殺されています。
我が子に執着したサーセイは、三人の子を失う。
サーセイが死んだ際に、妊娠していたことも皮肉です。
我が子に権力を譲りたいと思ったものが、登場人物の感情移入を無視して殺されているかのように思えます。
その一方で、ブランといい。ジェンドリーのプロポーズを断ったアリアといい。ジェイミーと別離を体験したブライエニーといい。自分の血を引かないジリの子を愛するサムといい。
結婚をしないでも生きていく。
我が子がいなくとも生きていく。
そういう人物の明るい未来を示しています。
高貴な血を引くデナーリスといい、ジョンといい、古典的なファンタジーの美味しい設定がてんこ盛りでした。
それを全否定し、流れる血よりも奉仕する心、知性、動機、物語だと本作はきっちり示しました。
2019年――求められる権力者とは何か。
その答えをきっちりと見せてきたわけです。
そりゃ、中世やファンタジーのセオリーを考えて予測したら当たらないわ。
ひねりにひねって、大団円を迎えたように思えます。
愛って結局なんだったんだろう?
それにしてもこの大団円を迎えて、やはり恐ろしいと思えてきます。
サーセイとジェイミーはじめ、そしてデナーリス。
愛に生きたものが死んでしまう中。ティリオンは義務のためなら愛を殺せと言い切り、その結果、ジョンはああなってしまう。
愛と義務の話は怖かった……。
本作って厄介だ。
愛の力でむしろなんとかなる。そういう創作が多いように思えるのに、全否定してこそ2019年。
おそろしい、本当に恐ろしい!
愛は奇跡を生みません、悲劇を生みます!
これも、世襲否定にもつながりがあるのかと思えてしまうのです。
ブランは子供ができないからこそ適任。すごいっちゃそうですよね。
別に子作り禁止ということではなく、家族や恋人への愛を、国への奉仕の上に置いたらいかんだろうということなのでしょう。
イヴァンカのような親族をホイホイ重要ポストにつける、トランプ大統領への皮肉かも。
トランプが本作と絡めたツイートをした時、スタッフも出演者も叩きまくっていましたっけ。
権力に媚びない姿勢が本作なのだな、と思ったものです。
ファンタジーがおとぎ話だと思った奴を焼き払う。
本作ってしみじみ、そういう作風だと思います。
この大団円も、2019年にふさわしいんですよね。
ある意味、完璧なポリティカルコレクトネス!
エログロあるからポリコレを無視したドラマと言い切る人がいるようですが、いや、そんなことありません。
◆サンサが北部女王になる
→民族的に異なる北部が独立する構図は、先住民保護やスコットランド独立運動を彷彿とさせます。日本は関係ない?「アイヌ新法」があるじゃない!
◆ジョンと【自由の民】の融合
→壁で隔てて敵対していた民と融合する。北部復興の助けにもなるはず。これぞ移民や難民を受け入れるべき、そういう世界の流れに一致するのでは?
◆ストーリーと障害のあるブラン王
→多様性だ!
個々人の違いを受け入れる融合。そういう路線がしっかりとあります。
ファンタジーはやっぱりファンタジー。そんなことをきっぱりと否定した本作です。
銀髪とドラゴンという、ファンタジーの王道女王デナーリスを葬った本作。実に厄介な傑作でした。
こんな厄介なドラマはもうできないだろう。
そう思える、幸福な没入感でした。
あ、でも、G・R・R・マーティンよぉ……自分の構想通りなら、あと3シーズンか5シーズン必要と語っているそうですが。
いいから、このシリーズ書け。
それが、ドラマ化以前からシリーズを追いかけているファンの願いです。
本作の脚本には不満があるとも言いますが、それを回収する原作を楽しみに待ちたいと思います。
いや、完結するとは信じていませんけどね……半々です。
ともあれ、スタッフ&出演者の皆さま、お疲れ様でした!
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文:武者震之助
【参考】
『剣嵐の大地 (中)〈氷と炎の歌 3〉(ハヤカワ文庫SF1877)』(→amazon)