御台である五十宮が蘭学を習うこととなり、青沼の講義は大盛況。
不真面目なのは伊兵衛だけ。
おなごの臭いに目を覚ますと、その香りの持ち主は、華麗なる田沼意次でした。
源内もあがりこんで、青沼に声をかけます。大奥は女人禁制だと青沼が焦ると、受講生たちがざわつきます。
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風来山人先生は春本も書く
平賀源内って、あの評判の本草学者のか!
そうと知った講義の生徒たちが皆一様に驚いています。伊兵衛などは「風来山人先生!」と驚愕の表情で源内に寄っていく。
風来山人とは、源内のペンネームですが、ここで江戸時代の名前について少し見ておきましょう。
当時は、一人で複数の名前を使うことはごくごく当たり前。
源内のように本草学者のついでに戯作者として生きているならば、その職業ごとに名前があります。現代の会社員兼同人作家のような感覚ですね。
伊兵衛がなぜ源内ファンなのか?というと、エロ本を書いているからです。『長枕褥合戦』って……タイトルからしてヤバいですね。
実は『鎌倉殿の13人』ファン=武衛なら悶絶する内容で、ざっと触りだけ記すとこんな感じです。
頼朝が亡くなったあとのこと。
坂東武者は考えました。
「尼将軍こと北条政子の夫となれば天下が取れるじゃねえか!」
そこで梶原景時が政子の秘密の場所に薬を盛りまして、坂東武者の「槍比べ(ぼかしていますので適宜ご想像ください)」となりました。
そして皆裾をまくり、”槍“を見せます。
「あら、梶原殿がことのほかご立派!」
するとそこに弓削道鏡の子孫である弓削道久という、はるかにビッグな槍自慢が出てきて、景時の企みは敗れましたとさ。
江戸時代、北条政子はエロゲスネタの題材にされていましたので、そこはそういうモンだとお思いください。
尼将軍という響きが想像を刺激したんですかね。梶原景時も、源義経をいじめた悪役とされています。
これを敢えて武衛向けに入れたのならば、さすがは森下佳子先生です。
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さて、そんなエロ本を読んでいると、伊兵衛はじめ読者が源内のところに群がります。
ファンサービスとして取り出したのが“竹とんぼ”でした。
源内は竹とんぼの発明者とされることもありますが、元を辿れば東晋時代(『三国志』のすぐあと)『抱朴子』に記載があります。改良したのではないか?とされる。
そこを踏まえ、とにかくよく飛ぶものだと説明。飛びすぎて拾いに行くのが大変で、売れなかったそうです。
これも源内らしいですね。アイデアが無尽蔵なようで、史実でもイマイチ詰めが甘かったり、実らないところがありました。
熊も赤面に罹る
サボンのことを上様に話してくれたことについて青沼は田沼意次に感謝します。源内は、青沼に話があるとか。
なんでもあるマタギの村に行ったとき、熊の皮膚に赤面疱瘡ができていることに気づいたのです。
マタギがいうには、大昔、熊を撃った武家が赤面になったとか。元々は熊の病気ではないか?それが何かの拍子で感染るようになったのでは?と源内が推理します。
けれども話を聞いた一同は、なんだ赤面の特効薬ではないのか……と拍子抜けしていますが違うのです。逆なのです。
治すのではなく、防ぐ方法を見つければいい!
これを「赤面のサボン」と源内は呼びます。
それはいい!と伊兵衛が喜ぶも、すぐに青沼は浮かない表情になり「途方もないことだ……」と落ち込んでいます。
だからといって全くへこたれないのが源内。
みんな考えて欲しい!と促すと、おもしろい、やってみましょと五十宮が続きます。
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男は蘭学を学べていいなぁ。赤面を撲滅すれば女でも学べるようにご定法が変わるかなぁ……と田沼に心情を吐露する源内。
田沼はあらためてこの場を守っていかねばならないと決意を固めます。
蘭学講座は、大急ぎで蘭語を習得しようと励んでいます。
伊兵衛はふざけ、黒木は真面目に、そして五十宮も聡明さを発揮。
田沼が御台を引き込んだことで、蘭学は「御台の遊び」ということでごまかせているのでした。
しかし田沼は、あくまで側用人です。中奥と大奥にしか関われない。もっと力を得ねばならない……と決意している。
かくして田沼意次は、600石から異例の大出世を遂げました。
身分も決して高くはない田沼。『べらぼう』の渡辺謙さんは「てやんでぇ!」という江戸っ子の気迫で演じたいとか。そういう気概が田沼にはあったのでしょう。
田沼意次の出世とは、岩盤のような身分制度に空いた穴でもあったのかもしれません。
ライバルの松平定信がエリートだったことと比較すると興味深いものがある。その姿がここでも浮かんできますね。
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