ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第16回

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ドラマ大奥幕末編 感想レビュー第16回 家定を守るための奥作り

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忠義こそ、阿部家の誇り

阿部家には、ご先祖様と徳川家康に関わる逸話が伝えられています。

かつて松平竹千代が今川家に行くとき、阿部正勝は主君と同じ駕籠に乗り同道しました。何かあったら身代わりになるという決意を込めてのことでした。

原作では今川義元に能楽を所望された際、主人に代わって舞った話も紹介されています。

ドラマでは、君臣が同じ駕籠に乗り、道を行くという点を重視しているのでしょう。

先の展開を予見させる逸話です。

その忠義の逸話を思い出し、兜の緒を締め直す阿部は、あらためて己の道を邁進すると決めるのでした。

あの穏やかな顔とは違う、キリッとした目つき。なんて素晴らしい忠臣ぶりでしょうか。

阿部正弘はかくして老中にまで上り詰めるのです。

阿部正弘
阿部正弘が有能すぎたから死後に幕府崩壊が始まった?勝を抜擢した老中の実力

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活躍の噂は瀧山の耳にも入りますが、「色街でまことの名前を言うマヌケもいないか」と思い直しています。

遠山景元も本名を名乗っていますけどね。

阿部正弘は祥子改め、将軍世子・家定となった相手に挨拶へゆきます。

すると家定が、正勝の逸話を持ち出す。聡明で気遣いができる、愛希れいかさんの可憐な美しさよ。

阿部が感激すると、家定は当たり前のことだとサラリ。ますます感激してしまう阿部は、危難の時は身代わりになるとまで言います。

しかし冷笑する家定。

身代わりとは大変だ。ならば、呼べばすぐに参じよと釘を刺しています。

そして本当に何度も呼ばれることになります。

あわてて廊下を歩く阿部の姿。家定がささっと歩いてくる脚の運び。

和装ともなればかなり大変ですが、楽にこなしています。所作が実に美しいなぁ~!

そして用事とは、饅頭作りでした。

お菓子作りが趣味というのは史実の家定に基づいた設定ですが、将軍になるような人物がなぜお菓子など作れるのか?という疑問もありましょう。

父・家慶からの逃亡でした。

そのため阿部は以降も呼ばれに呼ばれ、家定とお菓子作りに励みます。

善哉に、きんつばに、煮豆に、ふかし芋。

芋を食べたあとはくさい仲にもなったそうですよ。

 


家定を苦しめる、翼を折る家慶

幕閣の同僚たちは不思議がっています。

なぜ阿部正弘ばかりが家定に呼ばれるのか?

そんなぼやきを老中首座の堀田正睦が受け止めつつ「失脚された水野忠邦のような野心家ではない」と庇います。

高木渉さんが、つくづくいいキャスティングですね。

明治以降に悪く言われたバイアスがかかっていて、幕閣は無能揃いと思われがちですが、老中になるくらいの人物は藩主時代に実績をあげています。

善政を敷いていて、領民のためになることはしている。ある程度、品行方正でもありました。

あまりに悪辣で奔放だと、その時点で老中にはなれません。

堀田もその一人で、優秀で人柄もよろしい。しかも開明的です。だからこそ、阿部を「小娘め」などと思わず受け止めているんですね。

さて、阿部は「遠い、遠い!」と慌てて呼び出されてゆきます。

と、歌橋がしばし待たれるようにと言います。

室内から漏れ聞こえてくるのは、房事の音。「お楽しみか……」と驚く阿部。

歌橋が、別室に控えていた阿部を家定の元へと連れてゆきます。その途中に見えたのは、部屋を出て何処かへ去っていく家慶の後ろ姿でした。

ようやく家定と顔を合わせると、彼女は阿部を罵り、叫びます。

「今日はもうよい! ノロマッ、帰れ!」

ちょっと鈍感なようにも見える阿部ですが、家定の異変に気づき、探りを入れます。

と、おぞましい真相を知ってしまいました。

身代わりはできぬ、あまりにおぞましい災難――父の毒牙にかかる主君を救うにはどうすべきか?

阿部は決意を固めます。

 


鳥籠から上様を解き放つには

阿部は西の丸に、家定用の奥を作ると言い出します。

治済退治の言い訳でも出てきた奥作りが、今度は正面から切り出されました。

正室の任親が亡くなって以来、側室もいないから――阿部はそう切り出しますが、幕閣としては奥のことは領分ではないと消極的。

阿部はこのままでよいのか、このおかしさを放置するのかと声を上げます。

これは男女逆転したSF幕末の話だけとも思えません。

被害者である家定が混乱し、被害を言い出せないこと。

役所に持ち込んでも、「これは我々の仕事ではない」と尻込みされること。

そこを変えるには、勇気ある人物が声をあげること。

現代の若年困窮女性支援事業にも通じるものがあります。

背後にある性的搾取や虐待から目を逸らさず、これでよいのかと訴えかける阿部正弘は素晴らしい。瀧内公美さんの演技力と誠意が説得力を持たせています。

虐待親の家慶はこの動きを知り、当然のことながら激怒。

子ができぬなら一橋から養子を取ればいいし、家定は虚弱で子ができぬとまで言い出します。治済に負けず劣らずの外道ですね。

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阿部はできる老中です。

家慶が邪魔をするならば、さらにその上を持ち出せばよろしい。というわけで、家斉未亡人であり、家慶の義母にあたる広大院に相談。

呪われた親子関係をよく知る彼女は、即座に顔をこわばらせます。

阿部は、家定正室・任親にも、家慶が毒を盛っていた噂があると告げます。

かつての宿敵と同じ手段を思い出したのか、広大院は怒り、困惑しつつも、立ち上がる気力が入り混じった動揺を見せています。

「なんということじゃ……治済公の呪われた血がかように受け継がれておったとは……」

化物退治出陣に決意を固める広大院です。

一方で阿部は、兄・正寧に奥にあがる武家はいないか?と尋ねていました。

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