るろうに剣心

るろうに剣心1巻と映画版最終章/amazonより引用

この歴史漫画が熱い!

『るろうに剣心』緋村剣心が背負った「人斬りの業」にモヤモヤ

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義士か、それともテロリストか?

強い力に暴力で対抗することは“義”である――太平の江戸時代を生きてきた日本人が幕末を迎えた時、義と称した攘夷事件が多発しました。

幕臣の江間政発(えま せいはつ)は、こう言い残しております。

「攘夷とは、反対派を叩き潰すための看板である」

もはや“義”でもなんでもない。要は、単なる名目。

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それだけではありません。

異人を斬ったら10点!

異人の学問を学んだ奴を殺したら5点な!

そういうポイント制のゲーム感覚で、殺人が繰り返されていきました。

思想や立場なんて微塵も存在せず、薩長はじめ幕府側も、血気盛んな連中が集まれば「攘夷で人を斬ってやる!」と盛り上がる風潮すらありました。

バカバカしい……と、ため息ついていたのは、勝海舟福沢諭吉のような知性派だけで、むしろ例外です。

ただし、明治新政府がいざ立ち上がったとき「ゲーム感覚で殺人を楽しんできた事実」を認めるわけにはいきません。

政府内にも攘夷でヒャッハーしていた人が数多くいて、その黒歴史を「義士という伝統的価値観」と「ハードボイルド的なカッコよさ」などで、どうにかごまかしたのです。

少し気をつけねばならないのが、以下の点でしょう。

◆攘夷はしたけど教養もあるし、明治政府で重鎮となったような人物

◆攘夷で暴力行為が多く、かつ明治政府でも中途半端だった、あるいは出仕していない人物

両者は、その後の取り扱いに違いがあります。

例えば【幕末四大人斬り】にしても散々に批判されてきました。

明治を迎えられなかった田中新兵衛、岡田以蔵は汚い諸事情を押し付けられ、口封じをされて死んだような悲惨さがあります。

明治時代にそれなりの地位についた中村半次郎(桐野利秋)ですら、西南戦争の責任を押し付けられ「あれは桐野の戦争である」とまで言われたのですから本当に気の毒です。

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剣心のモデルとされる河上彦斎

では、緋村剣心のモデルとされる河上彦斎はどうか。

河上の標的には、あの佐久間象山がおりました。

佐久間象山という傑物を殺害した時点で、もう河上については、まったく擁護する気にならないところが辛い。

象山は殺害されるほどの悪事は特に行っておらず、要するに西洋のことに詳しかったから、攘夷ポイント稼ぎに殺された典型例。ここを重視すれば、よくぞ少年漫画主人公のモデルになれたと思います。

河上は象山以外の殺傷事件記録があまりなく、明治以降に処刑されました。

象山は吉田松陰の師匠でもあります。

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長州藩が勝者となった明治時代ならば、何らかの怨恨や口封じから殺害された可能性も否定できなそうです。

そして考えてみたいのが『るろ剣』でも重要な「怨恨」です。

連載期間が2010年代以降かつ、明治時代を舞台とした漫画作品ということで『ゴールデンカムイ』を比較対象として取り上げますと……。

『ゴールデンカムイ』16巻に、岡田以蔵がモデルと推察できる「人斬り用一郎」という人物が出てきます。

明治以降は逃げてアイヌのコタンに住みついていたものの、彼に家族を殺害された遺族が追跡してくるという設定です。

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史実により近い「人斬り」像はこちら。

剣心も幕末の怨恨で様々な敵と戦う羽目になりますが、それも自身の過去を考えれば当たり前なのです。

剣心に対する怨恨が原因で、薫は何度も危険な目に遭いますが、悪役だけが悪いと思えないところが辛い。

雪代縁が怒る気持ちがわからないでもない。

まぁ、昭和の少年漫画では、ヒロインなんて誘拐されるためのような存在ですので、そこは指摘しても野暮なんですけどね。

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