抜刀術

るろうに剣心―剣客浪漫譚― カラー版 18・19/amazonより引用

この歴史漫画が熱い!

『るろうに剣心』倭刀術とは一体何なのか ルーツは倭寇の日本刀だった?

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
倭刀術
をクリックお願いします。

 


明軍、日本刀の威力に度肝を抜かれる

そんな宋から時代が下り、明の時代も半ばを過ぎた頃――。

明では厳しい海禁政策をとっており、大っぴらに海外貿易ができない状態でした。

これは他国から見ると非常にもどかしい状況。当時の明は世界史的に見ても豊かでよいものが揃っており、どうしても交易を持ちたい相手だったのです。すると……。

「明と貿易できたらいいよな〜でも禁止されているんだよな〜」

「じゃあ非合法で!」

そんな思惑を持つ多国籍アウトロー集団が生まれます。

ご存知【倭寇】です。

勘合貿易(日明貿易)
勘合貿易(日明貿易)は利益20倍で爆儲け!日本刀を輸出して生糸や銅銭をゲット

続きを見る

構成員の中に日本ルーツ以外のメンバーも含まれることから、捏造だのなんだの指摘されたりもする倭寇ですが、実は、この倭寇こそが

「日本刀の恐ろしさを明に知らしめた」

と言えます。

なぜか?

馬に乗ったり、屋外で戦うとき、有利となるのはリーチの長い武器であり、前述のように中国ではそうした武具が好まれてきました。

一方の日本刀はどうか。

間合いのある馬上や地上戦では確かに不利です。

しかし、船上のような狭い空間での戦闘となると状況は一変、日本刀は圧倒的に強くなります。

そんな倭寇の近接戦闘に脅威を感じた明の名将・戚継光(せきけいこう)は悩み、こう語り残しました。

「長柄武器はスピードで負けるし、かといって近接戦闘したら勝負にならん! そもそもあいつら、なぜ剣で人体を両断なんてコトができるんだ!」

片手武器である刀も剣も、型として残っている程度だった中国。なにも彼らが油断したわけではなく、携帯できる刃物を実践に使うことそのものが珍しいのです。

帯剣は、あくまでステータスシンボルでしかない。本人が抜いて戦うようなことは極力避けるのが現実的な対処法でした。

この規格外に強い日本刀の威力は、剣心が活躍した幕末期にも発揮されております。世界史的に見て、かなり異色の武器だったのです。

幕末の外国人は侍にガクブル~銃でも勝てない日本刀がヤバけりゃ切腹も恐ろしや

続きを見る

日本刀を打ち倒すに開発された剣術キラー! 鎖鎌術・十手術・杖術・隠し武器術

続きを見る

日本刀による戦闘というのは、明の将兵にとっては想定外を通り越して、もはやわけがわかならいものでした。

こうなると、もう中国の戦闘術で抵抗できない――それを悟った戚継光は、こう考えました。

敵を知り己を知れば百戦殆うからず。

倭寇の戦闘術を学ぶしかない!

明軍は「影流」目録の入手に成功し、倭刀(=倭刀)の製造を始めました。こうして実践的にまとめられた戦闘術は、後に『武備志』の項目にもまとめられます。

※『ゴッド・オブ・ウォー』は戚継光が主人公です

戦神ゴッド・オブ・ウォー
渋カッコいい日本の武士が倭寇で大活躍!映画『戦神ゴッド・オブ・ウォー』が熱い

続きを見る

雪代縁を想定していると、

「ああ、大陸由来の柔軟性を取り入れたんだな……」

というような想像をします。

けれども、目の前に敵の迫る戚継光に時間的な余裕はありませんでした。

そこで編み出された技術の一例として、こんな技があります。

「刀を抜けない? 確かに抜きにくいな。ならばペアで行動するのだ。互いに刀を抜きあえばいい!」

あくまで軍隊での運用ですので、チームでの連携を目指し、運用されていたのです。

なお、戚継光が研究開発した武器や戦闘術は

「戚家刀」および「戚家刀法」

と呼ばれています。

清代になると、倭寇は消え去り、徳川幕府と合法貿易をするようになりました。

しかし、日本刀を想定した剣術=倭刀術は武術として残ります。

清代のベストセラーに『児女英雄伝』があります。

美少女戦士=女侠が暴れる、日本人でもよくわかる世界観のお話。このヒロイン・十三妹は倭刀術使い設定です。

 

ちなみに、両手で扱う中国の刀術としては、民国時代からの「苗刀」があります。

いくつか起源がある中で「倭刀」ルーツという説も。確かに、実際の演舞を見ると、納得ができるところではあります。

※『修羅:黒衣の反逆』には倭刀術を使う剣客が出てきます

映画『ブレイド・マスター』&『修羅:黒衣の反逆』レビュー 地獄の公務員よ!

続きを見る

倭刀術にせよ。戚家刀法にせよ。苗刀にせよ。

ルーツが日本であろうと、中国で工夫が凝らされた武器およびその運用となります。

 


雪代縁の倭刀術を武侠観点から見る

そういうルーツを踏まえ、では縁の「倭刀術」はどうなのか?という話ですが。

これがよくわからない……。

そこは実際の武術ではないし、そもそもが独学です。

少年漫画や当時流行していた格闘ゲーム的な何か――ということで理解する他ないように思われます。

剣心側の剣術だって、実際の武術と関係がどこまであるのかわかりませんし、斎藤一の「牙突」は実際の武術よりもむしろSNK由来ではありませんか。

牙突るろうに剣心
『るろうに剣心』に登場する斎藤一の「牙突」を真面目に考察~元ネタは真サムか

続きを見る

斎藤一
謎多き新選組の凄腕剣士・斎藤一72年の生涯 その魂は会津に眠る

続きを見る

武術としてどうなのかを追求することはあまり意味がないにせよ、ここは中国の人気ジャンル・武侠用語に目を向けたい。

倭刀による攻撃!
→「外功(がいこう)」
後述する内功と対比する。身のこなし、武器攻撃。

大陸由来のしなやかな体術!
→「軽功(けいこう)」
ワイヤーアクションの動きは、これを再現するもの。

そして狂経脈!
→「内功(ないこう)」
精神状態、健康状態、呼吸法の鍛錬等によって、人間の内側から力を引き出す!

和月先生本人がどこまで意識していたか不明ながら、武侠用語で説明がつきそうなのです。それよりも何よりも、姉を奪った剣心の憎悪が大きいことはいうまでもない話でしょう。

剣心への怨恨に、大陸というミステリアスさを加えたキャラクターが、雪代縁です。

※続きは【次のページへ】をclick!


次のページへ >



-この歴史漫画が熱い!
-

×