戦前は、維新の志士を迫害する悪役であり、斬られる側でした。
一番目立つのは局長・近藤勇であり、その隣では、イケメンとして知られる土方歳三が陰険そうな存在感を見せていました。
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戦後、この構図に変化が生じます。
無骨で鈍い近藤勇に対し、スマートで知性あふれる土方歳三
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新選組を実際に取り仕切っていたのは土方
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土方の弟分には純粋で真っ直ぐな美剣士沖田総司
要は、土方と沖田が人気の隊士となっていったのですね。
その理由は意外と単純。
司馬遼太郎の『燃えよ剣』(→amazon)をはじめとする時代小説およびその映像化作品が、大人気となったのです。
作家により好きな隊士やテーマは異なり、池波正太郎は永倉新八が推しメン。
浅田次郎は吉村貫一郎をメインに据えた作品があります。
そんな中“斎藤一”の人気を上げ、今なお不動の位置を保っている作品があります。
他ならぬ『るろうに剣心(以下、るろ剣)』です。
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必殺技「牙突」
『るろ剣』における斎藤一と言えば?
やはりあの技でしょう。
「牙突」
いったい「牙突」とは何なのか?
斎藤一の流派に関係しているのだろうか?
いえいえ、完全にフィクションです、以上――と終わらせるのも味気ないので、少々ツッコミしつつ考察させていただきます。
まず新選組の実在隊士で突きが得意だったのは沖田総司とされています。
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ただ、新選組の強さの秘密は、集団戦法にこそあるのでしょう。
斎藤一の史実からはかけ離れた技であります。
というか「牙突」には別の元ネタがあるのです。
それがSNK 『真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変』(以下・真サム)から登場する牙神幻十郎(きばがみ げんじゅうろう)です。
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るろ剣著者の和月先生はSNKゲームが大好きで、例えば火傷する前の志々雄真実(ししお まこと)は、まんま牙神。
厄介なことに、この牙神モチーフは斎藤一にもあると思えます。
『真サム』のキャラクターセレクト場面では、牙神は刀の切っ先を観る側に向けるようなポーズを取りますが、あれは実際の剣道ではあまりない、デフォルメされた魅力的な構図です。
この構図が『るろ剣』斎藤一の必殺技に似ている……と思えなくもありません。
「いやいや考えすぎじゃね?」
そんなツッコミもされそうですが、似通っているのはそこだけじゃありません。斎藤一の「もう殺す」は、牙神の決め台詞として有名なのです。ただし……。
SNKも、のちに牙神の技として「牙神突」というものを実装しました。
要するにSNKとるろ剣は【持ちつ持たれつ】なんですね。
川路利良の作った警察
必殺技の次は、斎藤周辺の人間関係でも考えましょう。
まずは、彼の職場である警視庁です。
明治維新のあと、佐幕派の士族は扶持(収入)を失い、苦境にありました。
斗南藩の苦労を経て、東京府までたどり着いた会津藩士も、極貧の中苦労を重ねます。
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そんな彼らに目をつけたのが、薩摩藩出身の川路利良でした。
「さむらいの武道、生かしたらよか」
そう考え、自ら設立した警視庁に士族たちを採用します。
刀剣の時代が終わり、時代遅れとなりつつあった、剣術や柔術。そうした武道のできる士族を採用し、巡査としたのです。
その先見の明は、西南戦争の「警視庁抜刀隊」で花開きました。
現在に至るまで、警察官は武道を習得している方が多いものですが、すべては川路の功績と言えるでしょう。
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