大河ドラマ『どうする家康』で「ファンタジー」というキーワードが話題となりました。
徳川家康の妻である瀬名(築山殿)が、真剣な眼差しで、突如こんな構想を語りだしたのが事の始まり。
奪い合うのではなく与え合いましょう!
徳川と武田が手を組み、上杉や北条、伊達などと東国で同盟を組み、織田に対抗するのです!
大国と大国ならば戦にはなりません!
揺るぎない目線で夫の家康や、武田の穴山信君などを説得していく瀬名。
そんな彼女の姿を見て『突然どうした……』と困惑した視聴者もいて、それゆえ「ファンタジー」と指摘されたのです。
◆【どうする家康】「ファンタジーすぎて興醒め」ヤマ場の築山事件 “新解釈” 脚本に違和感の嵐「歴史に敬意がない」(→link)
むろん、争いが常の戦国時代で、平和を願う人がいても不思議はないでしょう。
史実の彼女も、心の内ではそうだったのかもしれない。
しかし問題は、ドラマでの描き方です。
瀬名の口から、突然、上杉や北条、伊達の名前が出てきたかと思ったら、徳川家康も穴山信君も「素晴らしい!」と賛同して、武田勝頼まで同意して計画が進められてしまった。
最終的に勝頼が離脱して、彼女の構想は崩壊しますが、それまで名だたる戦国武将たちが入念な手回しもなく、揃いも揃って「瀬名の案は最高だ」なんて調子なのですから、その様子を「ファンタジー」と指摘されても仕方ないでしょう。
あまりにも安易。
こうなるともはやスピリチュアルに傾倒しすぎた、危うい瀬名教の集団。
彼らを見ていると、ここ数年、BBCや日経で話題にされた、こんなニュースが頭に浮かんできます。
いわゆる「陰謀論」というやつです。
世の中には「トンデモ話」を鵜呑みにしてしまう人たちが一定数いて、大手報道機関も懸念するほどの勢いになっている。
背景にあるのはTwitterやFacebookなどSNSの拡大だったりで、簡単には止めようがなく、日本でも同様の現象が拡大。
調べてみるとこれが結構な数がありまして……人は心が弱くなるとオカルトや怪しい宗教などに、傾倒してしまうのがよくわかります。
そこで本稿では、歴史とからめ「日本史と陰謀論」について注目してみました。
古くからよく語られてきたことや、最近話題になったものなど、併せてピックアップしてみましょう。
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日本人は無宗教説
「日本人は無宗教なんだよね。神社にお参りするし、お経を詠むし、クリスマスだって祝っちゃう」
誰でも一度は耳にしたことがおありではないでしょうか。
いかにも正しいように見えて、実は不正確。
複数の同時信仰に罪悪感を覚えないだけです。
伝統的に日本には儒仏神(儒教・仏教・神道)があり、さらに時代が降えるとキリスト教由来の行事も生活の中に加わりました。
それ以外の宗教や信仰への取組は、これからの対応次第となりましょう。
儒教と仏教は、それぞれ中国とインド由来のもので、神道は日本由来。
儒教の本格的な普及は江戸時代初期で、問題は仏教です。
その伝来は細かい年号に諸説ありながら、6世紀が有力とされています。
神道の神話を収録している最古の歴史書『古事記』が8世紀ですので、日本の歴史が始まった当初から仏教は存在していたんですね。
しかし、そのことを気に入らない人がいる。
彼らは、もっともっと時代を遡った信仰心の探究を求めていく。
それが一概に悪いとは言いません。
東洋には「悪霊退散を担い、自然と通じあう」信仰があります。
中国の場合「儒教・仏教・道教」とされていて、神道にあたる「道教」はシャーマニズム信仰に分類される。
韓国には「巫俗」(ふぞく)があります。
日本のシャーマニズムとしての神道は、海外の方には「スタジオジブリの世界観だよ」と説明すると通じやすい。
トトロが森に住んでいて、狸が人を化かす。そんな素朴な世界観です。
そんな世界観でおさまっていればよいのですが……ここで要注意キーワードをあげましょう。
「アカシックレコード」Wikipediaより
アカシックレコード(英: akashic records)は、元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念で、アーカーシャあるいはアストラル光[注釈 1]に過去のあらゆる出来事の痕跡が永久に刻まれているという考えに基づいている。
江戸時代に平田篤胤や本居宣長が“アカシックレコード”を“リーディング”して導き出した宗教、それが“古神道”――。
そんなことを謳い文句に人々を誘導する組織があれば、歴史や思想の話ではなく、オカルトなスピリチュアルとなります。
彼らの特徴として一例を挙げると、唐突に“神代文字”を用いてくることでしょう。
“神代文字”とは、漢字が伝わる前から日本にあったとされ、実は江戸時代から「捏造するんじゃねぇ!」と論争が繰り広げられるような存在でした。
要は昔からデタラメだったわけです。
にもかかわらず、現代になってまで、そんな神代文字をわざわざSNSで使うような方がいたら、クセの強いこだわりがありますのでご注意を。
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GHQの食文化政策で日本は弱体化
米だけを食べていた日本人を弱体化させるため、GHQが小麦を食べさせようとした――。
一瞬「そうなのか?」となりそうな、これも有名な陰謀論ですね。
少し冷静になり、この言葉を思い出してください。
「五穀豊穣」
米、麦、粟、豆、黍(きび)あるいは稗(ひえ)という五穀物の豊作を願った言葉。
別にGHQから進められずとも、我々は複数種類の穀物を食してきました。
まったく、うどん県に喧嘩売っていんのか?と一蹴したくなる場面ですが、嘘というのは何割かの真実を混ぜ込むことで、途端に信じやすくなるから厄介です。
第二次世界大戦後、アメリカでは化学肥料により農作物の収穫量が増えました。
その輸出先として目をつけられたのが日本であり、学者を巻き込んで
「米を食べるとバカになる」
なんて世論誘導までなされたほどでした。
実際に日本人が米を食べる量は減少しました。かつてはどんぶり飯で何杯も食べていたのが、今は小さな茶碗になっています。
ちなみに第二次世界大戦前は、日本人は米を食べるから強いんだ!と盛んに喧伝されていました。当たり前ですが、米にせよ麦にせよ、どちらを食べても劇的に体質が改善するようなことはありません。
米と日本が特別な関係にあるような論調にも冷静に対応しておきましょう。
米は世界中で食されています。
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GHQが◯◯を禁止したor植え付けた
敗戦のショックが凄まじく大きいものだったのでしょう。
GHQに関連した陰謀論は他にも複数あり、主なところをピックアップしてみますと、こんなものがありますね。
・神道で使う大事な大麻を禁止した
・「私」は本来「和多志」だったのに禁止した
・「氣」を禁止して「気」にした。「気」だと「〆」だからパワーが止まってしまう!
厄介なのは、少しだけ真実が含まれているケースもあること。
例えばGHQは、武士道を礼賛するコンテンツを一時期禁止としました。
戦争に突き進んだ日本人の精神性に影響を与えたと考えられたからで、実際に剣道や薙刀などが禁止されていた時期もある。
実際はどこまで影響を与えたのか、ハッキリとはしておらず、どちらも後に復帰しています。
大麻はむしろ推奨したほうが、日本人の弱体化に結びつくのでは?
忍者は「あほう薬」と呼んでいたそうです。
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