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本草学から蘭学へ
当時の学問を考える上で、重要であるのが「本草学」です。
現代の植物学よりも範囲が広く、鉱物採取や科学の知識も含まれ、その成果として吉宗の時代に、朝鮮人参はじめ薬草の国内生産が推し進められました。
『大奥』では赤面疱瘡撲滅の一環に思えますが、それだけではなく経済政策でもあるのです。
朝鮮人参のように輸入でしか得られない薬草は、貨幣(金銀)の海外流出へ繋がります。
中国大陸では早々と採掘され尽くした金銀を、日本との貿易で補充していました。
平清盛や鎌倉幕府が手がけた【日宋貿易】のころは、奥州の金がその役目を担い、戦国時代になると銀に代わります。
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とはいえ、江戸時代半ばともなると、日本の金銀にも底が見え始める。ゆえに鉱山開発や、輸出に頼っていた品物の国産化が急務となってきたのです。
平賀源内のような人物は、現代人からみると守備範囲があまりに広いように思えます。
鉱山開発に携わり、焼き物を作り、『解体新書』にも協力する……しかし、その目的を見ていくと、当時の幕府が直面していた課題とその解決策が見えてきます。
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後の近代化にも貢献した進取の精神
家光の時代は、泰平の世を築くことに力を注いだ。
綱吉の時代には、文化も爛熟してくる。
しかし、吉宗の時代には頭打ちで、停滞の気配が忍び寄ってくる。
そうして迎えた18世紀は、歴史の転換点であり、それまで経済的に優っていたアジアを押しのけ、西洋諸国が科学技術と植民地を手にして、伸び始めました。
そんな変わりゆく時代だからこそ、西洋知識の吸収も求められたのです。
江戸時代は【鎖国】していたと語られてきました。この言葉そのものに疑念が呈されていることは、前述の通りです。
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明和6年(1769年)――阿蘭陀宿の長崎屋に来訪者一行がやってきます。そこには平賀源内が加わっていました。
カピタン・カランスは、仕掛けのある袋を取り出し、一行に見せます。
「さあみなさん、この仕掛けを解いて袋を開けることができたら、中身をさしあげますよ」
一行が試してみるも、どうしてもその袋の仕掛けが解けません。最後に回ってきた源内は、ジッと考え込み、そして開けてみせたのです。
仕掛けのある袋を開くように、持ち前の頭脳で困難に立ち向かってゆく人々。
19世紀後半、日本はなぜ、急速な近代化を成し遂げられたのか?
様々な理由が考えられ、例えば地理や国土面積といった人智の範囲外の要素もあり、さらには「長崎や阿蘭陀宿が閉ざされていなかった」ということも含まれるでしょう。
田沼意次が中心となって進められた改革は頓挫し、関係者たちも失意のうちに一生を終えます。
けれどもその奮闘は無駄ではありませんでした。
幕末を迎えたとき、彼らの努力が報われていたのです。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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【参考文献】
新戸雅章『平賀源内「非常の人」の生涯』(→amazon)
城福勇『人物叢書 平賀源内』(→amazon)
土井康弘『本草学者 平賀源内』(→amazon)
片桐一男『それでも江戸は鎖国だったのか』(→amazon)
片桐一男『京のオランダ人』(→amazon)
岡本隆司 『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』(→amazon)
稲垣 栄洋『世界史を大きく動かした植物 単行本』(→amazon)
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