仙石騒動

仙石騒動の舞台となった出石藩居城の出石城(いずしじょう)

江戸時代

江戸三大お家騒動の一つ「仙石騒動」は相続とカネが絡んで最悪の結末

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「小太郎を連れてきたのは乗っ取るためだ!」

しかしこれを好機と見て、造酒が動きます。

「左京が小太郎を連れてきたのは、お家を乗っ取るためです!」と言上し、久道の後ろ盾を得て左京を藩政から締め出しにかかったのです。

その後、他のトラブルが原因で造酒は罷免されてしまうのですが……よほどショックだったのか、間もなく病没しました。

そして今度は、造酒の死をきっかけに左京が再び藩政の中心となり、造酒派のほとんどを処罰します。

この動きからすると、やはり自分の息子を藩主にゴリ押しするつもりだったんですかね。

造酒の息子である主計(かずえ)は財政担当になっていたため藩に残れたものの、自分のやり方では改善が見込めないことに責任を感じていました。

そこをついて、左京は主計を罷免。

出石藩は左京派一色になるかに見えました。

相変わらず左京の政策は強引すぎて、百姓一揆の頻発を招きます。

それでも左京はやり方を変えません。

勢いに乗った(つもりでいた)左京は、息子・小太郎の嫁に幕府の老中・松平康任(やすとう)の姪をもらいます。

多額の賄賂をしたともいわれていて、藩財政がヤバイのにいいご身分。だから人望が得られないんでは……。

そして反左京派は「アイツ、まだ懲りずに息子を藩主にしようとしてやがる。でなきゃずっと格上の家から嫁を取ったりするもんか!」と思い、後見役の久道に訴えました。

 

左京は獄門さらし首、小太郎は八丈島へ流罪

ご隠居様の久道は、これを「戯言」として信じませんでした。

逆に、訴えた人々が処罰されてしまいます。いやいや、それはアカンて……。

その中でリーダー格だった河野瀬兵衛という男は追放となりましたが、諦めず江戸に向かって好機を待ちます。

そして、かつて出石から追放されていた神谷転(うたた)という男と意気投合し、もう一度久道に訴えるべく、訴状を書きました。

これが出石藩にバレ、瀬兵衛は処刑されてしまうのですが……転(うたた)は虚無僧に身をやつしてしばらく逃げました。

結局は捕まってしまうのですけれども、虚無僧は幕府の役人である寺社奉行の管轄のため、転も寺社奉行に取り調べを受けます。

そして、生前に瀬兵衛が作った訴状を発見されてしまうのです。

寺社奉行も老中・松平康任が関係している一件だと知り、幕閣にこれを届け出ます。

江戸城でもこの騒ぎをどうしたものか困り果て、とりあえず当事者側の康任をはずして取り調べを行うことにしました。

老中の中から水野忠邦、寺社奉行からは脇坂安董(やすただ)が担当官に選ばれます。

安董と忠邦は出世で行き詰まっていたところだったので、康任を追い落とすために仙石騒動を利用しようと考えました。真っ黒ですね。

こうして瀬兵衛の訴状を元に裁判が行われ「左京とその縁者が悪い!」という判決に。

関係者は厳しい処分を受けることになります。

・左京は獄門さらし首

・小太郎は八丈島へ流罪

・松平康任は隠居へ

一方で「お家騒動を見事裁いた」という実績から、忠邦は老中首座、安董も老中格(老中と同等とする職)へと昇進しています。

まぁ、この後の水野忠邦は天保の改革に失敗から失脚へ追い込まれ、安董はさらに昇進して老中になったと思ったら急死してしまうんですが。

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出石藩主・久利も、家中の監督不行き届きで減封などに処され、財政も再びどん底になってしまいました。

どの騒動もそうですが、結局、誰も得しないんですよね。

まぁ、それでも揉めてしまうのが人間なのかもしれません。

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長月 七紀・記

【参考】
榎本秋『身につまされる江戸のお家騒動 (朝日新書)』(→amazon
仙石騒動/wikipedia

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