狂犬病の歴史

狂犬病にかかった犬/wikipediaより引用

食・暮らし

致死率100%「狂犬病」恐怖の歴史~古くは養老律令(718年)でも警告されていた

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
狂犬病の歴史
をクリックお願いします。

 


江戸から昭和にかけ断続的に発生していた

1732年、長崎から狂犬病が伝播。

4年後に江戸へ到達し、約30年かけて本州最北端の下北半島に到達しました。

おそらく出島の外国船から入りこんで来たのでしょう。

シーボルト著『NIPPON』に掲載された出島/Wikipediaより引用

その頃、狂犬病は治療法が確立しておらず、

「傷口の血を絞り出し、傷を尿で洗い、その後に灸を施す。噛み付いてきた犬を殺し、その脳みそを傷に塗れればなお良い」

などという、非常に乱暴なものでした。

前半はウイルスが除去できそうな感もありますが、後半は絶対にアカンやつや……。

その後も日本で断続的に発生し、明治になって「獣疫予防法」が制定されると、法定伝染病に指定されました。

政府としても本気で撲滅対策を講じたのです。

が、その期待は見事に裏切られます。

1923年(大正12年)に関東大震災が発生、それを機に大流行したのでした。

関東大震災後に設置された靖国神社の仮設住宅/wikipediaより引用

ただし、このあたりから再度、野犬の駆除などを徹底し、昭和3年、狂犬病は激減しました。

 


インドでは今も毎年3万人が亡くなっている

これで一安心か――そう思いきや、昭和19年から戦後にかけてまたもや大流行しました。

なにせ敗戦後のことですから、犬にまで手を回す余裕などなかったのでしょう。

このときは犬だけでなく、牛、馬、羊、豚にも及び危険な状況に陥ったため、GHQが日本政府に「狂犬病単独の法律」を作るように指示したほど。

これを受け、獣医師で衆議院議員だった原田雪松が中心となり『狂犬病予防法』が制定されました。

以降、飼い犬登録、狂犬病ワクチンの義務化、野犬の徹底駆除が行われ、昭和31年を最後に国内での狂犬病発生はなくなりました……が、おとなり台湾では2013年に、日本でも2020年に海外渡航者による感染が確認されました(→link)。

狂犬病清浄国(緑色の地域、2010年)/wikipediaより引用

世界的規模で見ると、狂犬病はまだまだ猛威をふるっております。

例えばインドでは年間3万人がその犠牲となり、もしも流行地へ旅行に行く際は、あらかじめワクチンで基礎免疫をつけておくことをお勧めします。

また海外では、日本にいる感覚で気軽に動物に近づかないことも大切です。

可愛いシロクマが居てもナデナデしに行ってはいけませんよ! あ、それは違う意味で危ないですね。

まり先生狂犬病


あわせて読みたい関連記事

生類憐れみの令
生類憐れみの令は日本人に必要だった?倫理観を正した“悪法”に新たな評価で考察

続きを見る

ペスト
欧州を恐怖のドン底に叩き落としたペスト 北里柴三郎はどうやって日本上陸を防いだ?

続きを見る

アヘンの歴史にみる薬物乱用と英国の恐ろしさ! ケシを吸ったらサヨウナラ

続きを見る

スペインかぜ
スペインかぜは米国発のインフルエンザ~なぜそんな名称になった?

続きを見る

麻疹の歴史
幕末の江戸では最大40万人が苦しんだ麻疹の歴史~甘く見てたら本当に危険です

続きを見る

武田二十四将・小幡昌盛も犠牲者か?田んぼに入った人を殺す恐怖の日本住血吸虫症

続きを見る

日本人を苦しめてきた虫歯の歴史~縄文時代に始まり家康や馬琴は入れ歯を使うほど

続きを見る

イラスト・文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
本人のamebloはコチラ♪

戦国診察室表紙

『戦国診察室 お館様も忍びの衆も歴女医が診てあげる♪』(→amazon

TOPページへ


 



  • この記事を書いた人
  • 最新記事

馬渕まり

糖尿病などの生活習慣病を専門とする現役の医師にして生粋の歴女。 武将ジャパンでは2014年から執筆している。 連載『まり先生の歴史診察室』は2冊の書籍となって全国の書店へ流通。 現在はWEBメディアから各方面へ活動の幅を広げ、講演などの依頼も。エックス(旧Twitter)では歴史大喜利に熱を入れている。 ◆主な著書 『まり先生の歴史診察室』GH・2015年 『戦国診察室2』ゼネラルヘルスケア・2022年

-食・暮らし
-,