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【明治時代の衣食住】
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「住」について
現代でも「一生に一度の買い物」といわれるように、住宅については衣服や食ほどの変化はありませんでした。
が、建築関係にまで視界を広げてみると、やはり西洋の影響がみられます。
明治二十年代ごろまでは「擬洋風建築」という形式がよく用いられました。
「ニセモノ」を意味する「疑」や「偽」ではなく、「似せて作る」という意味の「擬」です。
ぶっちゃけた言い方をすると「なんちゃって洋風建築」という感じでしょうか。学校や郵便局などの公共機関によく使われた建築様式です。
木造・漆喰・屋根瓦といった日本建築の特徴を色濃く残しつつ、西洋風の尖塔などがついています。
明治中期には西洋の建築技術がより多く入ってきたため、この手の建築物は徐々に少なくなっていきました。
鹿鳴館外交と同様、西洋の人からすると擬洋風建築はあまり出来がいいとはいえないそうですが、この時代特有のロマンやノスタルジーがありますよね。
擬洋風建築の多くは戦災や災害で失われてしまっていますけれども、現代も残っているものや再建されたものもあるので、密かにファンが多いかもしれません。
耐火性を期待されたレンガは大地震に対して脆すぎて
もう一つ、明治時代の建築の特徴として、レンガが多く用いられていた点が挙げられます。
主に耐火性を期待して、銀座煉瓦街など一定の範囲に使われました。
が、関東大震災で東京周辺にあったレンガ造りの建物が軒並み壊滅してしまったため、その後は鉄筋コンクリート造へ移り変わっていきます。
例外は横浜赤レンガ倉庫などです。
関東大震災における住宅全壊数が一番大きかったのは神奈川県なのですが、横浜赤レンガ倉庫は1号倉庫が30%損壊した程度だったとか。
また、東京以外の場所で戦火・天災を免れたものについては、現代になってから再利用されているレンガ造りの建物も多く存在します。
神戸の煉瓦倉庫レストラン街などが代表例ですね。
明治に限らず、衣食住の話題はドラマ・小説などの風景や「テスト前だけ暗記して終わり」でさらっと流してしまいますけれども、ちょっとのぞいてみると、さまざまな背景が隠れているものです。
日常生活や旅先で見かけたら、ちょっと足を止めてみるのも面白いかもしれません。
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長月 七紀・記
【参考】
高田倭男『服装の歴史』(→amazon)
岡田哲『明治洋食事始め――とんかつの誕生 (講談社学術文庫)』(→amazon)
黒澤はゆま『戦国、まずい飯! (集英社インターナショナル)』(→amazon)
国史大辞典「文明開化」
文明開化/wikipedia
擬洋風建築/wikipedia