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【花山天皇】
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そして「寛和の変」と呼ばれることに
花山天皇一行は無事元慶寺にたどり着き、出家も滞りなく果たせました。
道兼は「父(兼家)に報告してきます」と言って出ていってしまい、花山天皇は「謀られた」と思ったものの、とき既に遅し。
天皇の外戚として権力を握っていた藤原義懐らは、慌てて花山天皇を探したものの、既に出家した後と知り、共に仏門へ入ったといいます。
この事件は【寛和の変(かんなのへん)】と言われます。
誰かが死ぬようなドンパチが起きたわけではありませんが、異変といえば確かに異変ですよね。
花山天皇は在位中から「色々と大丈夫なのか……?」(超訳)という評判でしたが、絵画や和歌などの芸術的才能には恵まれていたそうですし、当時の評価通りとは言えない気がします。
『拾遺和歌集』を自ら編纂した説もありますので、周囲からも文化的な人物と思われていたのでしょう。
とすれば「政治的センスに欠ける」くらいの評価が適切のような……。
まぁ、こうした評価が今回の大河ドラマ『光る君へ』の描き方に繋がっているのでしょう。ドラマならではの誇張があるにせよ、非常に面白い描写かとは思います。
出家後は摂津の中山寺(現・兵庫県宝塚市)で紛失したと思われていた“観音霊場三十三ヶ所の宝印”を見つけ出し、自らこの法印の霊場を巡礼して、強い法力を身につけたといいます。
「お宝を見つけてパワーアップした」って書くと、なんだかRPGの主人公みたいですね。
道長の権力が絶大なものとなり歴史は進んだ
現在でも花山天皇の巡った場所が「西国三十三所巡礼」として伝わっており、各地に花山天皇の御製が書かれているとか。
花山天皇はこの巡礼の中で、摂津国の東光山(現・兵庫県三田市)を特に気に入り、巡礼が終わって京に帰るまでの十数年間を過ごしたといいます。
そのため、東光山には御廟所も作られ、西国三十三所巡礼の番外霊場ともなりました。
が、おそらく巡礼から帰京した後に少々良からぬ事件が起きてしまいます。
花山天皇がこっそり通っていた女性の屋敷で、とある貴族に恋敵と勘違いされて矢を射かけられてしまったのです。
伊周のほうが花山天皇のお相手の姉に通っていたため、勘違いされたといわれています。
藤原隆家は“貴公子”というイメージからかけ離れた武闘派の貴族であり、後年、九州で外敵を打ち払う【刀伊の入寇】で大活躍するほどです。
おまけに、花山天皇とも過去に因縁があったとされ、それはもうイケイケで乗り込んだのでしょう(二人の因縁については藤原隆家の記事をご覧ください)。
しかし、こんなトラブルを起こして無事に済むわけもなく……ここで登場するのが藤原道長でした。
伊周と隆家の流罪で道長がさらに台頭
藤原伊周はタイミング悪いことに、叔父の藤原道長と大政争を繰り広げていたときでした。
花山天皇は、出家の身で煩悩を捨てきれていないことへの後ろめたさや、単純に命を落としかけたという恐怖から、自らこの件を表沙汰にすることはありませんでした。
しかし、人の口に戸は立てられません。
どこからか噂が立ち、下手人は誰それだという話も広まり、伊周・隆家は流罪となります。
そしてこの二人の姉・妹である、ときの皇后・藤原定子は目の前で兄弟が引き立てられていくのを見て、自らその場で髪を切って仏門に入るほどの衝撃を受けています。
これにより道長の立場は絶大なものとなり、また歴史が進んでいくことになるわけです。
花山天皇自身にはあまり責任はないですが、なんとも後味の悪い話ですよね。
その後、花山天皇は再び修行にでも励んだのか、12年後に亡くなるまで特に逸話はないようです。
40歳で亡くなったことになりますから、当時の寿命としてもおかしくはないですし。そのせいで、襲撃された事件のことが余計に目立つのかもしれません。
『光る君へ』ではSNSのトレンドになるほど話題になっている人物ですので、ドラマでは別の創作エピソードが挿入されたりしたら面白そうですね。
なお、藤原道兼や藤原道長の生涯については、以下の記事にまとめておりますので、よろしければ併せてご覧ください。
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◆視聴率はこちらから→光る君へ全視聴率
◆ドラマレビューはこちらから→光る君へ感想
長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
歴史読本編集部『歴代天皇125代総覧 (新人物文庫)』(→amazon)
花山天皇/wikipedia