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【藤原道綱母と『蜻蛉日記』】
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平安のダメ男も女が妊娠出産すると足が遠のく
天暦8年(954年)、藤原道綱母は兼家の妻の一人となりました。
翌天暦9年(955年)には、男子を産みます。
そしてここからが、兼家のクズ男ぶりがわかる展開です。現代でも通じるクズ男の特徴を兼家は発揮します。
「妻が妊娠、出産すると、別の女に向かう」
永遠不変のあるある現象ですね。
出産で疲弊しきった妻の怒りは炸裂し、もう一生リカバリできない傷がつくパターンです。
しかも道綱母の場合、父の藤原倫寧が陸奥守として任地に赴任するタイミングとも重なっています。
砂金が取れる陸奥守は資産を増やせるよい任地です。とはいえあまりに遠い。現代ならば、海外赴任のようなものでした。
そんな不安の中で出産したというのに、兼家の反応はそこまでしっかりと書き留められていない。何か不穏なものを感じさせます。
そして出産後、最初の事件が起こります。
訪れた兼家が文箱を置いていました。それをチェックする道綱母。現代人ならば、男のスマホを確認する女のようです。
案の定といいますか、文箱の中には別の女にあてた恋文が……。嗚呼、なんということでしょう。
怒りのあまり、文に「どういうことなの」と書きつける道綱母。
兼家はその一月ほど後に、三日来訪しないことがありました。
当時は三日通うと婚姻成立です。
つまり兼家は別の女と関係を持ったということであり、いかにもクズ男らしい言い訳をするのです。
「いやぁ、きみの心を試してみたくてね( ◠‿◠ )」
しかし、道綱母はそのままでは終わりませんでした。
夫の浮気を、夫の嫡妻に報告する
「宮中から呼び出されてさぁ〜」
藤原道綱母に向かってそう言いながら、夕方に出ていく兼家。
彼女が夫の牛車を尾行させると、別の女の家に泊まるではないですか。
そんな衝撃的事実が発覚し、今夜も来ないであろうと思っていたときのこと。
兼家が門を叩く音がします。
しかしそのまま反応しないでいると、車は別の場所へ向かっていく。
そのとき詠んだ歌が、百人一首のこの歌です。
嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
【意訳】あなたが来ないと嘆きながら、一人で寝ているとき、夜明けまで待つことがどれだけ長いかあなたにはわかる?
そう記し、菊を添えて兼家へ贈りました。
さて兼家からの返事は?
「夜明けまで門で待とうカナって思ったんだけど、急ぎの使いが来てさぁ( ^ω^ )
でもあなたの言う通りだね^ - ^
明けない冬の夜も辛いけど、門を開けて守られないのも辛いんダゾ♪」
むろん、そんな言い訳、道綱母には通じません。
いけしゃあしゃあと仕事だとぬかし、別の女のところに行くとか、ありえない……と苛立つばかり。
そして彼女は驚きの行動に出ます。
兼家の嫡妻である藤原時姫も、夫の浮気に悩んでいる聞き、こんな文のやりとりがされるのです。
道綱母「あなたのところも彼は来ないって本当ですか? 何を考えているんですかね。どの女のところに行っているんだか」
時姫「あの……あの人が全然来ないのって私のところですよね。あなたのところにいるんじゃないですか?」
なんでしょう、この恐ろしいやりとりは……。
不倫コミックの妻と不倫相手だと想像すると、全く洒落になっていませんし、時姫からすれば「ハァ!?」となりますよね。
道長の母・藤原時姫が勝ち取った兼家嫡妻の座~光る君へ三石琴乃
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道綱母は、時姫にあえて歌を送るようなことをしばしばしています。
時姫はそっけない対応をするのですが、それを聞いた兼家は面白がっているとか。
いや、もう、ドロドロ過ぎて正直わけがわかりません。
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